軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:歓喜と観戦と観察と

只今ボス戦真っ最中、愛しの旦那様の首筋に抱き着いていますキーナです。

なんだコレ最高かよ。

聞いて下さい、ここ特等席。

画面の前でコントローラー使うゲームを横で見てるどころじゃない。それどころじゃない。文字通りほぼ一体化してるレベルの近距離よ。

その上で、やってるゲームはリアルと遜色ないフルダイブVRのアクション要素満載なボス戦なのよ。

力強く弓を引いて、構えて狙って、撃つ。

邪魔にならないように後ろから抱きついてるから顔は見えないけど、その動きとか息づかいとか真剣な雰囲気とかがゼロ距離で伝わってくる。

カァッッッコイィイイー!!

煩いと集中出来ないだろうから黙ってるけど、僕の脳内は大変なお祭り騒ぎなう。

信じられますか、このカッコいい人、僕の旦那なんですよ。

アー! 心がキュンキュンするぅー!

俊敏100超えの速度で動く相棒。

それにくっついて同じ速度で移動している僕。

こんな速さで戦ってるの? 戦えてるの? すごいね? 僕は無理だよ。つまり相棒はすごい、カッコいい。

自分の全部をバフにして相手に渡すこのスタイル。人によっては暇で暇で仕方ないと思う。一時的にステータス全部渡してるから、渡した側はステータスがスッカラカンで何も出来ないのだ。

でも僕は、相棒のカッコいい戦闘をゼロ距離で堪能出来るので楽しくて仕方ない。

最高です。

ありがとうございます。

……もしかしてネビュラって、いつもこんなカッコいい相棒を堪能してたの? なにそれずるくない? これは後で問い詰めねばなるまい。

そんな感じで内心大はしゃぎしながら相棒にくっついていたわけだけど、しばらく経って、僕もようやく速さに慣れてきた。

どうも相棒、フランゴ君の視界に入らないように動いているみたいなのだ。出来るだけ背中側にいるようにしている。

そしてフランゴ君は、時々ガルガンチュアさんとか戦隊のレッドさんを見失っていた。

(……もしかして魔眼使ってる?)

(時々)

(でもフランゴ君、相棒を狙ってこないね?)

(視界が隠れる中に俺が浮かび上がって見えるなら、そもそも魔眼を使ってる間だけ俺が視界に入らなければいい)

わぁお。

高い俊敏でそれをやってる、と。

なにそれカッコいい。

(カッコいい、好き)

(うん)

集中しててちょっと上の空の返事が返ってきたけど、それはそれで真剣なのがカッコいいからよし。

ハー、この戦いが終わったらいっぱい抱きしめてもらお。

さて、そろそろ戦況にも目を向けよっか……

結晶の方は魔法で出した死の海が良い感じに飛ばない虫を削ってるから大丈夫。

ネビュラに安全対策してもらったようなイメージだったらしいから、一時的な物で環境にも影響は出ないはず。山火事起こしたらお城からお叱りが来るゲームだからね、その辺は相棒も考慮しましたとも。

ガキン! ガキン! とムカデ系フランゴ君の硬い身体と近接プレイヤー達の武器がぶつかり合う。

面子にタンク役はいない。

タンク役盾持ちの人は結晶の虫との戦いに行っている。

なんでかというと、フランゴ君、僕の次にガルガンチュアさんが気に食わないらしいのだ。

なんだかんだ今まで率先して立ち塞がってたからね。

そしてガルガンチュアさんはフランゴの攻撃をきっちりいなせるから、だったら虫の殲滅に行ったほうがマシって事。

「ハッハァ! 今度は逃げんなよデカブツ!!」

「ほざけ! 脆弱なヒト風情なぞ喰い殺してくれる!!」

うん、ノリノリ。

……その時、フランゴが聞いたことのない咆哮を上げた。

低くも高くもない声は、怒りも恨みもなく、ただ殺意だけがあるような力強さの響き。

それが響くのと同時に、結晶がリリリッと甲高く震える。

(何何何?)

(……まずいか?)

「……【ロッククリエイト】」

フランゴ君と結晶が両方見えなくなる位置へ、魔法で置いた岩の防壁。

そこへ下がる相棒……と、素早く便乗してきた数名のアカデミックな人達。

「失礼しまーす!」

「……どうぞ」

承諾した次の瞬間。

結晶から、全方位へと爆発する衝撃波。

「うおぁっ!?」

「ぐあっ!!」

防御しなかった人達が軒並み吹っ飛ぶそれなりの威力。実力上位の近接職達も、姿勢を低くして地面を滑っていた。

壁作って正解だよ相棒。

そして避難してきたアカデミックな人達は冷静にそれを観察している。

「物理?」

「魔法かな」

「魔法使いの方が被害少ないからたぶん魔法」

ずっと物理で攻撃してきていたフランゴ君の、ここへ来て最初の魔法攻撃。

そして結晶から湧き出す虫系のモンスターの群れの中に……どう見てもドラゴンっぽい形態のモノが混ざり始めた。

遠くで麗嬢騎士団の人の盾に庇って貰ったらしい実況妖精ちゃんがその様子を実況している。

「……フェイズ3?」

「っぽいなー!」

緊張感を増す僕らの視線の先で、フランゴ君の姿がさらに変化していった。