軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

幕間:その頃、有名クラン達は

先端に凶悪な二股の爪を持つ、革と金属に覆われた拳が繰り出される。

それを受け止めるのは、麗しき薔薇の装飾が施された金属の盾。

たった一度の衝突にも関わらず、ぶつかり合った鈍い音は二度響く。

「くっ……!」

受け止めた側、華やかな騎士服の女性は、クラン『麗嬢騎士団』のマリアンヌ。

不意打ちのような二段重ねの衝撃に歯を食いしばって耐え踏みとどまり、逆の手の刺突剣で胴を狙い反撃。

軽やかなステップでそれを避けたのは、真新しい手甲を装備した男。クラン『モロキュウ冒険団』のナムサン。

回避、からの回転。

手甲とよく似たブーツが盾を側面から狙う。

再度の激突。

盾の方向転換はかろうじて間に合ったものの、そのブーツからも二段重ねの衝撃が発せられて、今度こそ盾持ちはバランスを崩した。

* * *

「……マリアンヌを崩すとは、多段ヒット、侮れませんわ」

「一発受け流し即反撃が身体に染み付いておるとな、不意打ちで受け流し直後に同威力が来て焦るんじゃ」

ワシもそれで吹っ飛んだわ、とグランド爺が遠い目をした。

その様子に、カトリーヌお嬢様はクスクスと笑う。

観戦しているのはこの2人だけではない。

それぞれのクランメンバーはほとんどがこの闘技場の部屋にいるし、それに加えて、いわゆる『検証勢』と呼ばれる面々もかなりの数がここにいた。

別件でここに集合するまでの間の雑談で、話題に上った素材を用いた武器の性能を見てみたい。そんな流れで始まった手合わせである。

一緒にそれを眺めていた番犬ジョンが、リーダー席を振り仰いで口を開いた。

「いいなぁー俺も欲しい。じっさまぁ〜、余りとかねぇのー?」

「無いぞ。全部ナムサンの装備に使ったわい」

「ちぇー、結局どこにいんだよその熊は」

「知らん。グレッグのお得意様の持ち込みじゃ」

「どーせ森夫婦だろ、知ってる」

モロキュウ冒険団のメンバーは『顧客情報だから』と素材の出所は明かさないが、ここにいる面々は勝手に『出所は森夫婦だろうな』と思っていた。

麗嬢騎士団とモロキュウ冒険団は、今の所最も森夫婦との関わりの多いクランだというのが他のプレイヤーの認識である。……とはいえ、当のクランの者たちはまったくそんなつもりは無いのだが。

……と、そこへ、部屋に大勢のヒトが入って来て、入口付近がにわかに騒がしくなった。

「……来ましたわね」

「うむ」

やってきたのは実に分かりやすいクラン。

色違いのお揃いの装備を身にまとった、『カラフル戦隊フエルンジャー』

カラフルな面々は手合わせ中の2名に目をやり……ホワイトがソワソワするレッドの首根っこを掴みながら、観戦席へとやってきた。

代表のブラックが軽く手を上げ、挨拶を交わす。

「遅くなりました」

「大丈夫じゃ、まだ約束の時間前じゃからな」

「私達が早すぎただけですわ」

そう言いながら、トップ3人は手合わせ中の部屋の中央に目をやる。

ガッツンガッツンと激しくぶつかり合う2人。

それを真剣な目で見つめるクランメンバーと……検証勢。

全員揃ったらさっさと話し合いを始めようかと思っていたが……この様子では時間まで止まらないだろう。

面々を確認していた戦隊のブラックがふと問う。

「今日は、グリードジャンキーはいないんですか?」

「おらんぞ。あやつらは自由に好き勝手暴れるタイプじゃからな」

「……その方が強いというのが不可解なのですけれど……」

今回、この3クランが集まったのは、冬の対策を話し合うためである。

使徒『咀嚼のフランゴ』が宣言した冬の決戦。

夏のイベントであの規模だったのだから、冬はもっと規模が大きくなると予想が出来る。

それがピリオノートに来た場合の事を考えて、こうしてβから続く大手クランが集まり対策を練る事にしたのだ。

……ただ、グリードジャンキーはその場その場で対応する遊撃で最も強さを発揮するタイプだと自他共に認識しているので、『作戦会議するから』と声だけかけて、それで終わりだ。こっちは来ないだろうなと思っているし、あっちも来る気は無い。

なるほどと頷いたブラックはさらに視線を彷徨わせる。

「……森一味も不在ですか」

「あれは……そもそも一味として括っていいのかもわからんしのぅ……」

「連絡もつきませんし……」

「え、でも森フェアリーってその……あの人ですよね?」

小声でヒソヒソと言うブラックに、カトリーヌお嬢様とグランド爺は無言で苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。

そうですよね、わかりますわよね。

β勢で付き合いの多い面子はわかるわい。

3人が脳裏に思い浮かべるのは、虫の召喚をこよなく愛用する男フェアリー。

……いやだって、あのヒトあんまり隠す気無いですよね? 大霊廟の動画で堂々といつもの虫召喚してたじゃないですか。

まぁその……あの方個人に関しては……気付いた方には気付かれても構わないとは言われております……

口止めは一応してくれとは言われたがのぅ……服こそ森一味っぽくして顔出さんが……あやつこの前単体で来た時、ガルガンチュアがいるのに声変わりシロップ飲むの忘れとったからな?

ガルガンチュアも気付いていなかったのか気付かないふりをしていたのか……

あの人腹芸とか出来ないから気付いてなさそうなら気付かなかったのでは?

ですよね……

最終的に3人は、乾いた笑いを浮かべながら森フェアリーとしての彼は話題の彼方へと追いやった。

「……それはそれとして、カステラソムリエさんはいないんですね」

「あやつは今日は都合が合わんらしい。当日は妹連れて行くから作戦には組み込んでくれて構わんと言うとったわ」

「ああ……あの魔法少女さん……」

「高火力のお方に協力していただけるなら助かりますわ」

時間となり、集まった者たちは予定通りに作戦会議を開始する。

ピリオノートを守るため。

そして使徒という脅威を打ち倒すために。

……なお、作戦会議が終わった後。

ナムサン対レッドの高火力強プレイヤー同士での一騎打ちが行われたのは言うまでもない。