軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:危険地帯の街

キルゾーン!

すっかり忘れてたね……っていうか、あんまりMMOでキルゾーンって単語聞かないから『やらないもの』って無意識に思い込んでたのかもしれない。

とりあえず エフォ(EFO) でキルゾーンを作ったらどんな感じになるのか、参考にさせてもらうために、僕と相棒はド根性ブラザーさんが転移オーブで拠点へ帰るのについて行った。

転移先は、『ガイアの大動脈』にある『生存可能区域』。

そこにある街……『ラフグリット』

「前にオーブ登録に来た時も思ったけど……すごい景色だよね」

「それな」

「ハッハッハ! 自慢の街である!!」

石造りの立派で頑丈な家が立ち並ぶ大きな街は、背景に岩壁がそびえ立っているから一見すると断崖の間にある街並みかと思うんだけど……この明るい街には、荒々しい岩盤の天井がある。

光の魔道具を使って街全体を照らしているんだって。

そして所々には、高い高い天井を支えるみたいに、すごく太い岩の柱がある。

本当は気温もすごく高いらしいけど、そのへんも魔道具で涼しくしているらしい。すごいコストかかってる。

この街が実際にあるのは、たぶん深い深い地の底なんじゃないかってド根性さんは言っている。

「なにせ【住居登録】をしてやってくる住民は、ヒトのNPCではあるがことごとく『とんでもなく深い谷に落ちて、気がついたらここにいた』と言うものでな!」

なにそれ怖い。

ド根性さんはそういう経緯のNPCを最初はお城に報告したりもしてたんだけど、なんだかんだ恩義を感じて街に住むことになるし、お城の方でそういう入植地があるって周知したりみたいな流れを経て、今はいちいちお城に報告する必要は無くなったらしい。

「おかげで城にはそれなりに顔が売れたな! 騎士団長殿とは実に気が合うのである!」

「へぇー」

なるほど、僕らが魔術師団長さんと関わりが多いみたいに、ド根性さんは騎士団長さんと関わってたんだねぇ。

「さて、我が街のキルゾーンだが! まずここは『ガイアの大動脈』という溶岩が流れる洞窟が延々と続くフィールドなのである!」

大きなアリの巣みたいに、広い部屋とそれを繋ぐ通路が交互に続く、巨大な迷路のような地下フィールド。

そのほとんどが灼熱の溶岩の流れる危険地帯。

それがド根性さんの入植した『ガイアの大動脈』。

そんな所には珍しい、溶岩が無い空洞。

そこが『生存可能区域』。

「安全な横穴という意味では、奈落で夾竹桃殿が転移オーブを置いた場所に近いやもしれんな!」

「……確かに」

そんな穴に街を作ったから……必然、敵の襲撃は、その穴の出入口からやってくる事になる。

「いいなー、防衛楽そう」

「うむ! やはり攻め込まれる方向を絞るというのは有効である!」

「……ですよね」

僕ら、防壁の上走り回ってたもんね。

オバケが増えてからはだいぶ楽になったから、そこまで気にしなかったんだけど。

そんなわけで、ド根性さんに案内されて街の出入口へと向かった。

「そういえば……夾竹桃さんってピリオに帰ったんだっけ?」

「うむ! 『青空が恋しい!』と発狂したように吠えながらシイタケ殿に家の新築資金を提供して自分の部屋と岩殿が過ごす庭を作って貰っていたぞ!」

「……また間借りするんですね」

頭の中で『キョエエエーッ!』って声が再生された。

まぁ……この街と奈落を往復したら青空なんて縁遠いよね。

そんな世間話をしながら、フィールドへ出る門に到着。

洞窟の壁から伸びた大きく分厚い防壁。

立派で頑丈そうな巨大な門。

その門をくぐると何もない広場があって、その先に洞窟の壁と、その壁に埋まるように巨大な扉があった。

「ここは最終防衛線である! 今のところここまで攻め込まれた事は無いが、万が一あの扉を破られた場合はここが決戦の地となるであろう!」

「おおー」

「……広いですね」

「ゴーレムで暴れる事を前提としておるからな!」

うん、街もだけど、防壁も門も扉もスケールがデカい。

ド根性さんがギガスって大きな種族だって事もあるんだろうけど……なんかこう、危険と隣り合わせ!って雰囲気がひしひしとする。

(……僕らの拠点って、だいぶゆるいね!)

(それな)

比べて初めて気付くゆるさ。

まぁいきなりガチガチにする気は無いんだけどさ。

広場を横切って、大きな大きな扉の前へ。

……デカいなぁ。

身長の何倍だろ?

ド根性さんが使ってるゴーレムが余裕で通れる大きさの扉だ。金属製に見えるけど……何で出来ているのか僕にはちょっとわからない。

住民が住民達だけで扉を潜る事は無いから、大きな扉はそもそもゴーレムじゃないと開けられない重量になっているらしい。

「いちいち開け閉めするのが面倒なのでな! 普段はこっちを使っておる!」

そう言ってド根性さんが向かったのは、扉から外れた洞窟の岩壁。

デコボコの岩に埋まるようにして、ド根性さんが身を屈めてギリギリ通れるくらいの扉があった。

「……気配無し! では開けるぞ!」

今気配無くても、そんな大きな声だと敵に聞こえて飛んで来ちゃったりしないのかな?

そんな心配を他所に、ド根性さんが扉を開ける。

……その扉の向こうは、岩で塞がっていた。

「……もしかして、カムフラージュですか?」

「いかにも! 毎回通る時には【石魔法】で塞いでいるのである!」

あ、さっき言ってたやつかー。

こっちをしっかり隠しておけば、横のデカすぎて頑丈すぎる扉にモンスターは向かうわけだね。

小さいのがこっそりここから侵入するような事は無いってことかぁ。

(……ド根性さん、めっちゃ意識高い!)

(うん。これは玄人だ)

感心しながらカムフラージュの岩が撤去されるのを待っていた僕達は……その先の光景にさらに驚く事になるのだった。