軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:毛色の違う森と幻獣

【ツーパンベアの双剛爪】…品質★★★★

ツーパンベアのとても丈夫で鋭い剛爪。

先端が二股になっているその爪は一撃で二重の衝撃を与える。

ドロップを確認。

この爪は星4か。俺が死の狼精霊の本体に貰った牙のひとつ下。

この爪は……たぶん武器にしたら2ヒットする武器になるんだろう。

攻撃を受けたジャックもデューも、戦闘続行に問題は無いのでこのまま狩りを続ける事にする。

「ドロップ率どのくらいだろうな……」

「楽に落ちるといいねぇ」

* * *

ドロップが確定じゃない爪を求めて、俺達はツーパンベアをしばき倒しながら山を下った。

体感5匹に1個って所か。

まぁレアってほどじゃない。

この島は、山の周りに森が広がっている、俺達の拠点がある島と似たような景色の島だ。

相変わらずおかしな形の山を下りて、麓に広がる森へと到達する。

「わぁー、かわいい!」

森の木々を見たキーナが歓声を上げた。

俺達の拠点周りの木は 微睡(まどろみ) の森の木。

青白い幹に青緑色の葉をつけた、グルグルと渦を巻いたような形をしている木だ。

ここの木は、色合いこそ同じだが、明らかに意図を持った形をしている。

根のすぐ上に大きなウロ……というか、幹が丸い器のような形になっている。

アーモンドのような輪郭で中身をくり抜いたような。

そしてその内側は、とても柔らかそうな木の繊維が詰まっていて、ふかふかとしていた。

そして、器の脇からぐねっと太めの幹が空に伸び上がり、器部分の上に屋根のように広がって、柳のような枝葉を器の上に垂らしていた。

「ベビーカーみたい」

「それだ」

試しに枝を1本、ナイフで切り取ってみる。

【揺り籠の木の枝】…品質★★★

揺り籠の木の垂れ枝。

ゆらゆら揺れると深く穏やかな眠りを誘う。

「揺り籠の木っていうのかー」

「まぁそのまんまだな」

この森の木は、全部この揺り籠の木らしい。

バラバラな方向を向いた、様々な形の揺り籠の木が大量に生えている。

柳のような枝をもつ木が森になっているから、風が吹く度に海の波のような音が森を包み込む。

木漏れ日が差し込む森の天井は、常に垂れた枝がゆらゆらと波打って、神秘的な光景を作り出していた。

「スクショ撮っとこ」

「うん」

山から降りると熊の姿を見かけなくなったから、俺達は森をゆっくりと散歩する事にした。

「あ」

「どしたの?」

「……この木、ヤギが入ってる」

「え?」

覗き込んだ木の揺り籠部分には、半透明のヤギが横たわり、スヤスヤと寝息を立てていた。

「……オバケ?」

「モモーン」

相棒の疑問に答えるように鳴いたのは……揺り籠の木の枝の間からスルリと降りてきた、半透明のモモンガだった。

「……モモンガってモモーンって鳴かないだろ」

「たぶん幻獣ちゃんだよね?」

全員、トマトアクセサリーを装備すると、モモンガの言葉が聞こえてくる。

「まったくヒトの子は深い眠りと死霊の区別もつかないんだモン。モモン達みたいな幻獣の言葉も分からないんだモン。しょーがない種族だモン」

「……じゃあなんで僕らの所に来たのさ」

「モモーン!? 言葉わかるモン!?」

ぶら下がっていた枝からピョンと跳び上がったモモンガ幻獣は、ネビュラの頭の上に着地した。

「……おい、降りぬか」

「ケチ臭い事言うなモン。初めましてヒトの子とその仲間達。モモンは夢のモモンガ幻獣だモン」

何故かネビュラに対して態度のデカいモモンガ幻獣は、ドヤ顔をしながらフンスと胸を張った。

「ここは『揺り籠の森』だモン。眠りの夢の中で、さらに深く深く眠る場所。ここで眠る子は、起きればすぐに 現(うつつ) へ帰るだけだモン」

そう言うと、モモンガ幻獣は木の中で眠る半透明のヤギへ向けて、ドングリをひとつ取り出して投げつけた。

ヤギは目覚めるような身じろぎをして……すぐにスウッと消えていく。

「ほらね。今頃は寝床で飛び起きてるモン」

「なんてこった」

安眠妨害してなんかごめんな……見知らぬヤギに心の中で謝罪する。

だがまぁ、それはそれとして。

「ここの木でベッド作ったら、睡眠の質が上がりそうだな」

「だよね、思った」

俺達がそう言うと、モモンガ幻獣は驚いた顔でピョンと跳ねた。

踏み直された形になったネビュラは『解せぬ』って顔になった。

「ここの島の木はあんまり切らないでほしいモン……他の島でも種を植えれば育つから、木が欲しいなら自分で育てて欲しいモン」

モモンガ幻獣は、「ちょっと待つモン」と言うと、タッタカタッタカと柳の木の間を走って行き……少ししてから頬袋を膨らませて戻って来た。

スイーッと空中を滑空して、慌てて差し出したキーナの手の上に乗る。

「はい、これが種だモン」

「おおー、ありがとう」

頬袋から、綿毛に包まれた種をいくつか取り出して渡してくれた。

……言葉が通じてよかった。

通じないまま切っていたら、好感度とかダダ下がりしていたかもしれない。

種は拠点に植えてみる事にしてインベントリへ。

そしてついでに、気になった事を聞いてみた。

「ねぇモモンガちゃん……夢の幻獣って、もしかしてひとつの島にひとりいたりする?」

「その通りだモン」

「じゃあ、僕らが住んでる島にもいるのかな?」

「どこに住んでるモン?」

「『 微睡(まどろみ) の森』……で、わかる?」

「……隣の隣の島だモン?」

「そうそう」

「じゃあ山に井戸がある島だモン。そこならイモリ幻獣がいたと思ったモン」

ああ、牢獄坑道か。

あそこに幻獣いたのか……

「でもイモリ幻獣は誰かと会うのが苦手だから、無理に探さない方が良いと思うモン」

「そうなの?」

「モン。会うつもりが無いのに会うと、慌てて毒のある事言っちゃって後で落ち込むヤツなんだモン」

「コミュ障かな?」

しばらく坑道に通ってたジャックも見たこと無いらしいしな……本格的にイベントでも起きない限り会えない幻獣なのかもしれない。

「モモンはそんな事無いからいつでも遊びに来るといいモン」

「わー、ありがとう」

「モモンも暇な時に遊びに行くモン」

「いいよー、好きに遊びにおいでー」

ゆるいなぁ……

最後まで実にゆるゆるとしたやりとりをして、モモンガと別れた俺達は、今度は山を登って熊狩りに戻った。