軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ︰仮拠点とクラフトスキル

相棒を見送って、僕はさっそく建築に取り掛かる。

このゲームの建築はどんな感じかな?

フルダイブVRのゲームは、レンガをひとつひとつ積み上げるようなタイプの建築もたまにあるから油断できない。

「【建築】」

とりあえずスキルを使ってみると、目の前にパレットウィンドウが出た。

タブに『柱』とか『屋根』とか『床』とか書いてあるそれ。

試しに壁のタブを押してみると、雑な感じの壁が表示される。

その壁を選ぶと、実寸大の壁がホログラムで目の前に現れた。

「おー」

……なーるほど。

このホログラムを設置したい場所に動かして、決定を押したら実物になるタイプの建築ね。

割とよくある様式で良かった。

ガチのリアル志向だったら何時間かかるかわからないもんね。

さらに建築タブをじっくり見ていくと、一番最後の方に『登録』ってタブがあった。

そこを開くと、一件だけ何か登録されている。

『初期建材用お試し建築』

選んでみれば、コンテナハウスくらいの家のホログラムが出てきた。

「おおー!」

ブループリント機能だ!

そうだね、最初の仮拠点に何時間もかけてられないよね。

手間暇かけるのは本拠点。

仮の寝床はこういうので十分。使わなくなったら解体するなり納屋にするなりすればいい。

位置を決めて、ポチッ。

なんということでしょう!

一瞬で家が建ったではありませんか!

わー、便利。

そして建てたら【建築】スキルのレベルが2に上がった。

最初に確認した壁が雑に見えたのは気のせいじゃない。

レベルが上がると立派な建築ができるシステムだね。

それならなおさら本拠点はしばらく後の方が良さげ。

さ、お家の内覧でーす。

……うん、土間。

まぁ最初のブループリントだもんね。

家具も特に無し。

とりあえず調理場は欲しい。

竈と流し台は据付の建築扱いみたい。石も鉄もあるから、そのまま建築で作っちゃおう。

ただ、テーブルとかベッドは家具だから、【木工】の扱いになるみたい。

取ってるから少しやってみよう。

「【木工】」

建築と同じようなパレットウィンドウが出る。

レベル1だから、角材貼り合わせたような家具しか無いね。

でも、無いよりマシ。

試しに調理台を兼ねてテーブルをひとつ作ってみよう。

『家具』のタブからテーブルを選ぶ。

現れる角ばったテーブルのホログラム。

この段階なら、大きさの調整ができるみたい。一部だけ伸ばしたり厚くしたりも大丈夫。

端に作った調理場に合わせて、大きさを調整。

決定を押せば、簡単なテーブルの出来上がり!

うーん……ダボだのホゾだの作らなくていいのは、ものすごく楽でいいんだけどさ……ちょっと角張り過ぎだよね。

調整できないかな。工具の中に何か……ああ、 鉋(カンナ) あるじゃん。世界観西洋ファンタジーの癖に和鉋だけど。まぁ洋鉋は使ったことないからむしろ助かる。

クラフト系の学校に通っていたからね。 鉋(カンナ) は使った経験があるのだよ。いつどこで、何が役に立つかわからないものだね。

金槌で刃を調整して、当てて、引く。

シュッと音がして角が削れた。

……すごいねこのゲーム。手に伝わる感覚がリアルのそれ。

繰り返して、テーブルの天板の面取りをした。

うん。少しはマシになったんじゃないかな。

こういうテンプレートからの調整は可能って事も確認できて、一石二鳥。

ベッドも作って、幅を広げてダブルベッドにして、同じように軽く面取りをした。

ただ、敷布団が無いのだ!

だから箱みたいな藁ベッド。それだって藁が無いから現状ただの箱。家畜はまだだから油断してたよ。藁か布団か、近々買えたらいいんだけど。

ここで【木工】もレベルアップ。

引き出し付きの家具がパレットに増えた。

椅子と床も作りたかったけど、建材用の木材が無くなったからとりあえずここまで。

……うん、この成果に対してかかった時間って考えれば、ものすごく早く終わったんじゃないかな。

触ってみた感じ、やろうと思えば本当にリアルみたいな家の建て方も出来ると思う。本当に全部にオリジナリティを出したいならそれも可能。

でも皆が皆そこまでしたいわけじゃないからね。こういう便利機能でも十分ステキな建築は出来る。

もしかしたら、そのうちブループリントの設計図を売り買いしたりも出来るんじゃない?

自由度が高くて大変良き。

さーて、相棒は今どのへんだろ。

結婚指輪の【居場所検知】を使ってみる。

ん-、これは……海っぽい方かな。そこそこ遠いから、まだ帰ってこなさそう。

それなら、僕も周りをぐるっと見てみますかね。

畑を作る前に、敷地の囲いを作りたいなって。

美味しい野菜でモンスターが釣られて来ても困るしね。

拾った枝の杖を持って、お散歩開始。

ゴメンね【簡素な杖】……一度も使わない内にお払い箱という悲しみよ。

心の中で杖を追悼しながら少し歩くと……

「わー、でっかい骨」

少し分け入ったすぐそこに、大きな鳥の骨が転がっていた。

えーっと、鑑定結果は……何々、『大鳥の骨』?

【大鳥の骨】

謎の大きな鳥の骨。

そのまんまだねぇ。

素材だのなんだのも書いてないし……いわゆる雰囲気作りのアイテムかな?

大きさはそれなりで、動画で見たコンドルよりは大きそうだけど、人が乗ったりするのは難しそう。

……ふむ、せっかくだから、この骨で試したいこと試してみようか。

さっき【木工】スキルの外で工具を使って調整してて思ったんだよね。

このゲーム、どこまで好きに出来るのかなって。

テーブルだのベッドだのは、やろうと思えば彫刻とかできたと思う。本気でやるならゼロから作る事もできそう。

パレットウィンドウに無くても、木のお皿とか削り出したりできるかもしれない。

そういうのを、どこまでアイテム扱いしてもらえるのかなって。

この『大鳥の骨』、さっきから肋骨が鳥籠みたいに見えてしかたないんだ。

だから、この骨で鳥籠を創ったらゲーム的にはどんな判定になるのか試してみたい。

鳥の骨を鳥籠にするとか、なかなか酷い発想をしている自覚はあるけど。でも気になったからにはやってみたい。骨から道具を作るなんてね、よくある事だし。

骨をインベントリに入れて、仮拠点に持ち帰る。

とりあえず土汚れを綺麗にしよう。

【水魔法】で布を濡らして……すまんな、初めての水魔法もまさかの掃除だよ。これが終わったら魔法の練習でもしようかなぁ。

濡らした布で、骨を拭く。

真っ直ぐ気味な骨を集めて、肋骨を籠に見立てた時、底になるように並べて、筏みたいに麻紐で編んで結ぶ。

近くの木に松脂っぽいのがあったから、それを【採取】して……

【微睡みの木の樹液】…品質★★

夢に根を張る木の樹液。魂への干渉力が強い。

接着剤や塗料になる。

うん、なんか色々書いてあるけど、接着剤に使えそうだからオッケーオッケー。

樹液で編んだ部分を補強。

あとは小さな骨を貼り合わせて扉を作る。

本当に動物をこれで飼うわけじゃないからね。蝶番は無くても、麻紐で縛ればいいでしょう。

肋骨の前方、カーブして空いてる所に扉をつける。

あとは細長い骨で籠として致命的な隙間に格子を足せば……

「よーし、できた!」

──『オリジナルアイテムを作成しました』

──『名前を入力して、完成登録してください』

おお、こんな風になるのかぁ。

家具とか独特なのを作った時もこんな風に登録できるのかもしれないね。

じゃあ、これはそのまんま……『大鳥骨の鳥籠』っと。

【大鳥骨の鳥籠】…品質★★★

謎の大きな鳥の骨で作られた鳥籠。

製作者︰キーナ

意外と品質が高いな???

そんな馬鹿な。ありあわせの材料で作った代物なのに。

……ってことは、そもそも骨の品質が良かったって事かもしれない。

うん、ありえる。

さて、無事に鳥籠ができた。

アイテムの説明にも鳥籠って登録されたから、ゲームのAIにも鳥籠って認識してもらえたって事でいいんじゃないかと思う。

そうなると、もう一つ試したい事がある。

このゲーム、開拓プレイヤーは街づくりができるわけだけど。

家を作った時に、『NPC用』として登録すると、居住希望のNPCが現れるらしいのだ。

逆に言えば、登録しないとNPCは来ない。じゃないと自宅に勝手に住みつかれちゃうから。

……で、この鳥籠ですよ。

鳥籠って事は、『家』だと思うわけです。

鳥が住むための物だから。

って事は、これにも鳥のNPCが来たりするのかなって。

小さい家を作って、小人のNPCが来たってβテストの話はSNSなんかでチラ見した。

だから是非とも、この鳥籠で何が来るのか試してみたい。

この見た目なら、まさかヒトが来ることは無いだろうし。

試して気に入らなかったら、バイバイすればいいだけの話。

とりあえず家から出して……あの立ち枯れしてる木の下にでも置いてみよう。

うわぁ……立ち枯れと骨の鳥籠って雰囲気あるなぁ。

で、拠点メニューを開いて……鳥籠を

「【住居登録】!」

ヒュォォォオオ……と、風が渦を巻いた。

木の葉が舞って、ぐるぐると回って、その中心は目の前の鳥籠。

籠の中に灰色の光が収束して……と、思ったら次の瞬間、籠の中には半透明の鳥がいた。

「どう見てもオバケだ!」

オバケも住人になるんだね?

うわーどうしよう、ホラー苦手なんだけどなぁ。

でも普通にカッコイイ鳥だし、ビックリ要素無ければ大丈夫かな。オバケなら餌代もかからないだろうし。

そんなことを考えていたら

「お主が我が魂を保護した術者であるか」

「ギョアアアアアアアアア!シャベッタアアアアアアア!!」

目の前の鳥から、やけにダンディーな声がした!