軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:ハロウィンパレード

ログインしました。

色々あった秋イベントもついに終盤。

街路樹の葉がすっかり黄色に染まったピリオノートはハロウィンな装飾で飾られていった。

定番のカボチャランタンがゴロゴロと街中に配置され、黒とオレンジと紫の布があちこちに吊り下げられた。黒いコウモリや猫の置物が増えて、テンプレなシーツオバケが簡単に消せる塗料であちこちに落書きされている。

住民NPCもハロウィンの仮装っぽい恰好をしているのが増えている。

そして今日はオバケ達のパレードの日だ。

俺達がログインすると、既に拠点のオバケ達は誰もいなかった。

キーナのシステムには『事前に承諾をいただいたので、オバケはパレードに向かいました』と通知があり、ベロニカが受け取っていた城からの書簡にも『オバケはパレード参加のため招集済み』と書かれていた。

パレードはリアルの昼部門と夜部門があり、リアル数日かけて行われる。この期間中、オバケ達は帰ってこない。

俺達は偶然にも初日が休日と重なったから、最初のパレードを見物しに行くことが出来る。

今日はジャック達を遠目に眺めるだけだから、変装はしないで行く予定だ。

「ふふふ、楽しみだなー」

ゲーム内朝食をとりながら、キーナがウキウキと微笑む。

楽しそうでなによりだ。

ただ……ヒトは多いだろうな。どこか密集しすぎずにパレードが見える都合の良い所があればいいが……

* * *

そんな都合の良い場所無いよな、知ってた。

転移したピリオノートは秋イベント開始挨拶の時と負けず劣らずの混み具合だった。

ハロウィンのメインイベントだもんな……こうもなるか。

パレードが通る道にはロープの柵が出来ていて、その手前はヒトがギュウギュウに詰まっていた。パレード当日って事で出店が無いのが救いだ。

「また防壁上がる?」

「いや、あんまり遠いと見えなくなるし……」

なんとなく見えて声が聞こえればよかった開会式とは違って、ジャック達の晴れ姿みたいな目的があるからな。

「じゃあ屋根の上は?」

「屋根かー……」

ちらりと見上げてみると、同じ事を考えたっぽいプレイヤーらしき人々が何人も屋根に乗っていた。

「……そうだな、屋根の上行くか」

あれだけいるなら悪目立ちもしないだろ。

「オッケー、じゃあよろしくお願いします」

「ん?」

……ああ、そうか。キーナは自分じゃ屋根に上がれないのか。

「仕方ないなぁー」

「ドヤ顔ー」

軽口を叩いて笑い合いながらキーナを抱き上げて、人が少な目の屋根に裏側から跳び乗る。

パレードはそれなりに長い距離を移動するから、全部の屋根が埋まるような事は無い。

場所を決めてしばらく待つ。

やがて開始時間になると、パレードのスタート地点の方から歓声が上がった。

声に負けじとかき鳴らされるハロウィンらしい音楽。

身を乗り出そうとする相棒が落ちないように、繋いだ手を強めに握る。

徐々に近付いて来るパレードが、曲がり角から姿を現した。

先頭は大きな馬車。乗せられているのは、巨大なカボチャランタン。

そして……何人かのカボチャ頭のオバケ達が着飾って笑顔で手を振っていた。

うちのジャックもそこにいる。

……というか、ジャック以外にも結構カボチャ頭がいるんだな。

まぁキーナみたいに好きなプレイヤーは作るか。

今日のジャックはマリーが作った豪華な黒マントを羽織り、金の刺繍の入ったスカーフとシルクハットを身に着けている。スーツを着替えられないなりのパレード仕様だ。

2台目の馬車には華やかな布の飾りと、大量の籠。

中に入ったオバケ達がケラケラと笑いながら出たり入ったりして観客を喜ばせている。

うちの籠入りオバケ達はマリーの手によって、籠に刺繍入りの豪華な布が結びつけてある。バンだけは金魚鉢だが。

3台目の馬車はお菓子を模した大きな飾りが乗せられて、何かしらの体に入ったオバケ達が載っていた。

マリーとデューはここにいる。

デューはジャックとお揃いのマントを羽織っていた。

マリーもいつもと違う黒いハロウィンっぽいドレスに着替えている。

うちのオバケ達が参加しているパレードに、相棒は大喜びでスクショを撮っていた。

公式イベントに自分の仲間NPCが参加するのは珍しいから余計にテンションが上がるんだろう。

でも今は変装してないから、うっかり名前を叫んだりしないようにな。

そうしてパレードがゆっくりと目の前に差し掛かると……不意に霧に覆われたように、周囲が白いモヤに包まれた。

……なんだ?

街に飾られたカボチャランタンの明かりが、ぼんやりとモヤの中で光っている。

黒い大きな影絵のようになったパレードが、ゆっくりと移動していくのがモヤの合間に垣間見える。

そして……握っていたキーナの手が消えた。

「相棒?」

返事は無い。

姿も無く、念話を飛ばしても反応が無い。

同じ屋根にいたはずの他プレイヤーもいない。

……特殊なイベントにでも入ったか?

そう予測した時、スルリと真横に大きな黒い半透明の狼が現れた。

「む? ……余の分け身を託したヒトの子か」

現れたのはネビュラの大元、死の狼精霊。

「……死の海から、出張か?」

「うむ、なにやら死霊に関わる催しのようであったからな。……ちょうど良い、これは何をしておるのだ?」

俺は狼精霊に、死者が魔女に導かれて会いに戻って来るのをお菓子で歓迎する話をした。

狼精霊は興味深そうに話を聞くと、目を細めてパレードが通っているはずの方向を見る。

「ふむ……早々に生まれ変わりへと向かうこの世界で、その願いは難しいであろうが……死霊として留まって居れば、この催しで呼び寄せられる事はあるやもしれぬな」

なるほど、じゃあプレイヤーによっては、今まさに何かのオバケに会っているのかもしれないな。

狼精霊は満足気に頷くと、何処からか鋭い牙のような物を1つ取り出して、俺に渡してきた。

【死の精霊牙】…品質★★★★★

良き契約者と精霊に認められた証。

「良い機会だから渡しておこう。ヒトの子が扱いやすい形にして使うと良い。分け身と同化すると鋭さが増す」

へぇ……同化中に攻撃力が上がる武器になる素材って事か。短剣にでもしよう。

死の狼精霊は「ではな」と言い残して消えていき、白いモヤはゆっくりと薄くなる。

……たぶん、死霊関係の何かに会うイベントってところか?

それもパーティを組んでて手まで繋いでた相棒と分断されたから、個別で内容が違うんだろう。

あっちは今頃何と会っているのやら……ホラー展開じゃないといいけどな。