軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:鏡騒動ひと段落

『封魔の監獄鏡』に端を発した騒動はどうにか収束を迎えた。

使徒が関わってたっぽい結晶は破壊したし、シェイプシフターも討伐。

シェイプシフターに関しては、プレイヤーに変身するタイプのモンスターの戦い方が見られたって検証勢は大喜び。さっそく有志wikiに情報が載ったんだって。

救援要請に応じてくれた人たちが探索しながら床に描いた矢印に従って出口まで来たサーカスの人達は、無事にお猿と再会。

団長さんがテイムをして、お猿はめでたくサーカス団の一員となった。

『封魔の監獄鏡』は、仲良しの猿を外に出せればサーカス団にとっては割と無用の長物になっちゃったみたい。

アトラクションにするにしても、モンスターが出るからNPCのお客さんが危ないし。

で、最終的に検証勢が買い取っていた。

【鏡魔法】は猫の取り換えっこ屋さんでスキル交換した話をしておいたから、気長にチャンスを待つみたい。

知らないだけで、僕以外にも【鏡魔法】を取り換えっこで習得してる人がもういるかもしれないしね。

そして騒動のトリガーを引いた『鏡の大口』は、戦闘のドタバタで割れてしまっていたらしい。

暗い所で戦闘になっちゃったから、気付かなかったんだって。

一部の検証勢は『ヤバいアイテムだから自ら割れたのでは?』って疑ったりもしてたけど、真相は闇の中。

『鏡の大口』を持ち込んだ黒ローブは、『暫定使徒』って扱いになって、有志wikiで『使徒』の項目に要注意対象として追加された。

……そんなその後の流れを、僕らはピエロさんが立てたスレの報告で確認した。

現場? 全員が外に出てきて猿のテイムで盛り上がってるあたりで、『お疲れ様でした』のメモだけ残して、僕らはそっと撤収したよ。

霊蝶ちゃんの召喚契約はとっくに終わってたし、舞台裏の見学って意味では充分楽しんだし、サーカスの人達も死に戻らず外に出て来たしね。

「サーカス面白かったね」

「うん」

その内、霊蝶ちゃんとかお猿ちゃんもショーに出るようになるのかな。

そうしたら、今度はジャック達も連れて見に行こうね。

* * *

そんなわけで、拠点に戻った僕達。

なんだかんだサーカス見て舞台裏見学してダンジョンだのレイド戦だのやって~って盛沢山な一日を過ごしたからちょっとお疲れ。

あとちょっとしたらログアウトしようねって思ってダラダラと休憩中。

……なんだけど、僕はちょっと気になる事があった。

「ここに、パピルスさんから買った普通の手鏡があります」

「はい」

変身する術を看破する仕様になっちゃった鏡をパピルスさんが買い戻した時。それとは別に僕も使うかもしれないからって普通の手鏡をもうひとつ買わせてもらったのだ。

インベントリに入れておけば、まぁ……怖くないし。

「魔法の鏡といえば、もうひとつあるじゃん? 有名なのがさ」

「あー、『鏡よ鏡~』ってやつ?」

「そうそれ!」

変身を見破る鏡が出来るならさ、そっちの鏡も【鏡魔法】で出来るのかなーって思うじゃん?

……ただ、そう思って色々考えると、気になる事が出てきたのだ。

「鏡関係だと王道中の王道だけどさ……『この世で一番美しいのは誰?』の『この世』って エフォ(EFO) の中になる? よね?」

「……じゃないか? そしてたぶん本国は含まれない気がする」

「だよね」

うんうん。その辺の認識はたぶんあってると思う。

「じゃあ……『一番美しい』の基準って何だろう?」

「……さぁ?」

『美しさの基準は人によって違う』なんて、もう使い古されたフレーズなのよ。

ミス○○コンテスト~とかだって、顔の造形だけじゃなく所作や教養も含んだりする事もあるし、審査基準は結局その状況によって違う。

「そう考えるとさ……Vアイドルが配信とかやってる エフォ(EFO) で『一番美しい』を選んだりしたら、戦争が始まると思うんです」

「それはそう。間違いない」

なんなら今日も芸術の秋会場でVアイドルのライブやってるし。

NPCが選ばれても、プレイヤーの誰かが選ばれても、間違いなくスレだのネットだのが炎上するよ。

そしてこれは、質問を何に変えてもたぶん同じ。

『一番強いのは誰?』にした所で、誰が出て来てもたぶん荒れる。

それに、勝手に『この人がスゴイ!』って感じにババーンと誰かに晒される事になっちゃうから、そういうのは匿名性を尊重してくれる エフォ(EFO) ではやらないと思うんだよね。

「だから……『鏡よ鏡〜』は、たぶんできないんじゃないかなーって」

「ほう」

「でも、もしも出来たら面白そうなので、ちょっと実験してみたいと思います」

「はい」

「でも怖いので! 僕にぴったりくっついててください!」

「はいはい」

苦笑いした相棒と一緒にソファへ並んで座って肩を抱いてもらう。

うん、圧倒的安心感。

これなら大丈夫。

ではやってみましょう。

「……【ミラークリエイト】」

頭の中で『鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?』なんて問いかけながら魔法を使う。

……すると、『ポヒッ』って気の抜ける音と煙が出て。

そして鏡に、半透明の大きな巻貝が映った。

「……巻貝だねぇ?」

「法螺貝っぽいな……」

「半透明だし、幻獣かなぁ?」

なんだろうと思って見ていると、巻貝がピロピロと舌を覗かせながら喋った。

「……どうして」

「? 何が?」

「……どうして鏡に向かってこの世の1番を問うたんだ?」

「えーっと……?」

「鏡にそんな事がわかると思っているのか!? 鏡がこの世の全てを知っているとでも思っているのか!?」

「えっと……ごめんなさい?」

「……わかってくれればいい。ではな……」

巻貝は消えていった。

「……誰?」

「……さぁ?」

誰なのかさっぱりわからないけど……言葉通じるタイプの幻獣さんがわざわざ鏡の気持ちを代弁しに来たの? お疲れ様です。

「……とりあえず、失敗演出出たし。無理って事はわかった」

「うん」