軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:ドナドナと従魔屋

ドナドナされていく牛乳屋さん……改め、詐欺師の女性NPCを、僕は通報して来てもらったお城の兵士と一緒に見送った。

「御協力ありがとうございました」

「いえいえ……」

牛乳として売られていた瓶詰のモーモースライムは犯人が引き取りの拒否をしたから、そのまま兵士がモーモースライムとして問題が無いかの検品みたいな事をした後に希望者への配布が始まる。

瓶の底にね、こっそり刻印入ってたんですってよ!

そうだね、フリマで瓶詰めスライム売ってた人がそんな事言ってたよね! くそぅ!

そんな感じの説明をしてくれたNPC兵士さんは、一通り話した後に溜息を吐きながら言葉を続けた。

「たぶんあの女性は、『デビルウィード』を食べちゃったんでしょう」

「デビルウィード?」

「本国で近年問題になっている、食用の野草にそっくりなモンスターの一種です」

兵士さん曰く、モンスターとは言っても野草に擬態しているだけで一切身動きせず危険は無いらしい。

しかし、それを食用の野草と間違えて食べてしまうとさぁ大変。

『雑草こそ我が神である!!』みたいな強火思想が植え付けられて、雑草……つまりはデビルウィードに都合の良い環境を整えようと、過激な言動に走ってしまうらしい。

「庭の花壇を潰して雑草まみれにする程度で発覚すればいいんですけどね……極端なのになると、家屋を破壊したり、森を伐採したり……草や花の神を騙った新興宗教を興したりする場合もあります」

「うわぁ……」

なにそれこわい。

「モーモースライムは割となんでも食べてミルクを生産するので……『雑草様を食べる牛は全部駆逐してこのスライムを使うべきだ!』とか喚いてましたから、たぶんそうでしょう」

「そんな無茶な」

「無茶ですよ。スライムじゃあ肉も皮も骨もとれませんし、農耕の手伝いも難しいです」

しかも、結局モーモースライムも雑草は食べるっていうオチ付き。

デビルウィード中毒は、ちゃんと特効薬を飲めば治るんだって。

被害者として国から生活を立て直すための支援もあるらしいから、無事に元の生活に戻れるといいね。

で、僕が買っちゃったモーモースライムは……1匹で一般家庭で消費するくらいのミルクはとれるらしいから、そのまま飼う事にした。

小さいし、なんでも食べるらしいし……そんなに手間はかからなそうだしね。

配布会場はにわかに活気付いて、色んな人がモーモースライムを引き取って行く。

色んなスライムを大量に荷車に乗せたスライムコレクターみたいな人が駆け込んできて、嬉々としてそこにモーモースライムを加えていたのはちょっと面白かった。

* * *

気を取り直して買い物続行。

今回は被害で呆然自失になったりしてないから、特に保護されたりもしなかったよ。

マリーの欲しがった素材も見かけたら買い込んで、用事はほぼほぼ済んだかなー。

なので、僕は大きな卵や生き物をいっぱい並べている露店を見つけて、そっちへ足を向けた。

従魔を扱っている露店は意外と多い。

手に余ったとかそういうネガティブな理由じゃない、需要がちゃんとあるのだ。

野良を自分でテイムするロマンはもちろんあるけど、誰しもがロマン優先なわけじゃないからね。

初心者テイマーだったら、一番最初の入植案内で従魔をもらう事はできるけど、ポイント的にどうしても一匹が限度で。そしてソロでやって行こうとするなら、やっぱり最初が一匹だけだとバランスが悪い。そういう人に、難易度の低い色んな種類の従魔を紹介している、って感じ。

ソロでやっている戦闘勢には、足の速い騎乗できる従魔が人気らしい。ソロだとどうしても行動範囲がなかなか広がらなくて移動がダルいし、ピリオ周辺には足の速い騎乗可能モンスターがいないから。

早めに露店で手に入れて一緒に強くなるのが良いって攻略サイトなんかでもお勧めされているみたい。

他にも、生産メインでやっている人はベースレベルを上げてなくて自力テイムが難しい場合が多いから、こういう露店のお世話になる場合が多い。

そしてどの場合でも、睡眠バフを大事にする人は多い。

そこで休憩を取ったりログアウトしたりするだけでバフがかかるわけだから、お手軽な強化要素。

なのでペット用従魔もかなり需要はある……

……そんな説明を、僕はヘルメットみたいな大きな卵の殻を深く被って目が隠れてるドワーフ女性さんから聞いていた。

「そもそも睡眠バフなんて『なんもせんでもバフ欲しい』っていう怠惰な願望の塊だからさー、ペット用従魔はとにかく手間のかからないのが理想的なわけ」

「なるほど」

その気持ちはわかる。

割と僕も『手間がかからなくてカワイイ子いないかなー』って思って説明を聞きに来た口だし。

「普通に戦える従魔に睡眠バフ増加が付いてるのがモアベターなんだけどねー、やっぱバランスってもんがあるから、戦闘特化にするとその辺はついてこないわけよ」

「あー、それはそうですよね」

「わかるっしょー? なんでもできたら『全部そいつだけでいいじゃん』ってなっちゃうもんさー」

それはそう。

MMOだと新要素に強すぎるの出してプレイヤー全員それになっちゃったー、とかよくある話。

『ぜひ試してほしい』っていう思惑から見た数字的には大成功なんだろうけど、プレイヤーとしては皆一緒になっちゃうし、それが正義になって他がディスられたりして面白くないのだ。

「ってわけで、この辺が個性豊かなペット用従魔のコーナーになります」

紹介されたのは、どれもテーブルの上に乗るサイズの色んな従魔達。

「当店のペット用従魔、怠惰向けのオススメナンバーワンはこちら、『カウンセリングサボテン』」

「カウンセリングサボテン」

「成長すると、お話ができます」

「サボテンと?」

「そう、サボテンと」

「……そんな感じの、なんかのゲームにいなかったっけ?」

「大丈夫、日記は書かないし顔も無いし歩かないしウチワサボテンじゃないから」

そっかー。

カウンセリングサボテンは、見た目はどうみてもただの鉢植えの丸サボテンだった。

「孤独を持て余してるソロプレイヤーに人気。水が欲しくなったら自己申告してくれるから怠惰でも安心。花も咲くから女性受けもヨシ」

「サボテンは好きだけど、僕は夫婦でやってるからなー」

「あ、それは合わないかも。ご夫婦で会話してもろて」

ですよねー。

「こっちが怠惰向けオススメナンバーツーのペット従魔『フレグランスライム』」

「フレグランスライム」

「お花を食べさせるといい香りのするスライム。香りが薄くなったなーってタイミングでお花を上げればいいだけ。ただ放置しすぎると餓死する前に逃げちゃうから、そこは注意」

「スライムはいいですよ! スライムはぁ!!」

「わぁあっ!?」

ビックリした!

フレグランスライムの話を聞いていたところへ、横からニュッと出てきたのは、さっきモーモースライムを引き取っていたスライム荷車の人だった。

「今まさに時代はスライムなんですよスライム! シンプルで親しみやすい造形! 多様な種類による万能性! ボクはそれらをラノベで学びました! 必ずやスライムでテッペン獲って見せるんです!!」

「おー、がんばれー」

「ありがとうございます! ではっ!!」

暑苦しいスライム荷車の人は、来た時と同じくらい唐突に去って行った。

「……誰?」

「ただのスライム狂、気にしない気にしない」

店主さん曰く、スライムの話をしていると割とよく出没するらしい。

妖怪かな?

「さてさて、怠惰向けオススメペット従魔堂々のナンバースリーはこちら。『夢守の卵』」

「むもりのたまご」

テーブルには、エッグスタンドに乗せられた鶏の卵より少し大きいくらいの、謎模様が入った灰色の卵がひとつあった。

「卵です」

「卵ですねぇ」

「卵のままなのでお世話がいりません」

「あ、孵らないんだコレ?」

「検証勢が温めても何しても誰も孵せなかったんですねー。だからたぶん、卵のままの従魔なんじゃないかって。枕元に置いておくだけでオッケー」

「インテリアかな?」

「うん、インテリアと変わらない。色も地味だから人気はいまいち。本っっ当に水やり程度のお世話すらしたくない戦闘ガチ勢が、適当に部屋に置く系の子」

「わぁお」

ふむ?

僕はちょっと考えた。

夢守の卵。

……まんま夢関係の子なのでは?

「……この子って、どこでテイムできるんですか?」

「この子はテイムじゃないんですねー。というか、まだ卵だからテイム出来ないんですねー。一部のNPCの枕元にある日突然現れるって話。それを買い取ってこうやって売っている、と」

なるほど。

夢関係っぽいなぁ?

……ちょっと試してみようか。

駄目でもお世話がいらないなら、インテリアと変わらないし。

「この卵ちゃんください」

「はーい、大事にしてねー」