軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:ピリオノート危機一髪中の一幕

イベント遅刻しました。

俺達は襲撃予定時間を過ぎてのログインです。

ひとつひとつは大した事ない細々した面倒事も、運悪く重なるとそれなりに時間が取られるもんだな。

とはいえ、死者の出ない襲撃だし、俺も相棒もそこまで気合いいれてたわけでもないから……まぁ残党狩りみたいな手伝いでも出来ればいいだろう。

……そんな風に考えていた時が俺達にもありました。

ログインして、拠点でのんびりゲーム内朝食と支度を済ませる。俺達の拠点は別次元にあるから、当然マッスラゴラはいない。

そして一応ジャック達三兄弟を戦力に連れて、転移オーブでピリオノートに飛んだ……

──その途端、両手に葉っぱを持ったマッスラゴラに飛びかかられた。

「うおっ!?」

「うわぁあっ!?」

「フンッ!!」

完全に油断していた俺達の前へ、咄嗟に飛び出したデューが盾でマッスラゴラを殴り飛ばす。その着地地点を狙って【闇魔法】を当てれば、マッスラゴラはマンドラゴラに戻ってワタワタと近くの花壇に潜り込んだ。

「えっ、ここピリオの中だよね?」

「……そのはずだけど?」

周囲では……装備を着た大根と全裸の大根が何体か戦っている。

そして、南西の方角からさらに追加でやって来るマッスラゴラの群れ。

「「突破されてるー!?」」

おいおい、城門落ちたのか!?

……いや、違う。防壁の上から降りてくる真っ白な姿が見えた。

あの大根、壁をよじ登って入り込んで来てやがる!

「ウォールクライミングも出来るのか……」

「え、防壁2つも乗り越えて来てるの? ガッツ強すぎない??」

状況を確認している間に、3体のマッスラゴラに囲まれる。

「【ダークネスクリエイト】」

俺は薬効無効の闇魔法を自分を中心に範囲展開した。

近付こうとして、闇に絡め取られてマンドラゴラに戻っていく筋肉大根達。

「手すきの者は城へ! 城が最終防衛地点です!!」

必死の兵士の声に応じて、俺達は城へ向かって走った。

あちこちで行われる戦闘。

倒れた樽と転がる芋。

時折聞こえてくる悲壮感はあんまり無い悲鳴。

「なんでこんなおふざけイベントで最終防衛地点まで攻め込まれてるんだ??」

展開は完全に絶望的なゾンビ物のそれだが、押し寄せているのは殺傷能力の無いマッチョな大根だ。

「……逆におふざけイベントで『突破されたらどうなるのか』経験しておけて良かったんじゃない?」

まぁそれはそう。

これでNPCがどんどん殺られていたらトラウマ待ったなしだ。

城へ到着。

兵士達は、なんとか避難出来た住民と聖女を守りながらここで籠城戦をしているらしい。

「【ツリークリエイト】!」

ラウラさんの拠点でバッタと戦った時のように、相棒が城を鳥籠のように木で囲み、そこにマリーが蜘蛛の巣を張った。

これで壁を乗り越えて中庭に入られる事は無いだろう。

他数人のプレイヤー達と一緒に迎え撃つ城の籠城戦。

とはいえ、【闇魔法】で接近を防いでしまえばマッスラゴラは何も出来ない。俺とマッスラゴラはかなり相性がいい。

……城にゾロゾロとやって来る筋肉大根も、蜘蛛の巣を破れる程の力は無い。回避がすごいだけだからな。

(相棒、俺は街中周ってくるわ)

(はーい、いってらー)

ネビュラに乗って、【闇魔法】を範囲展開したまま街を駆け抜ける。

筋肉大根に魔法耐性はほぼ無いらしい事が検証勢によって確認されていた。

だから、俺のMP量で広げた魔法でも、一発当たればマンドラゴラにすぐ戻る。

NPCが戦っているマッスラゴラに【闇魔法】を引っ掛けながら駆け抜ければ、ピリオノートにはどんどん土に植わるマンドラゴラが増えていく。

……外の防衛は、たぶん撃ち方を間違えたか、そもそも【闇魔法】の使い手が足りなかったんじゃないか。

お礼を言ってくる鎧を着たマッスラゴラに片手を上げて応えて走り続けていると……不意に、笑い声が聞こえてきた。

「あ~ウケる! なんだこんな楽しい事態を引き起こすなら、ココも捨てたもんじゃないじゃないか!」

どこか嘲笑を含んだような声は……独り言か?

声のした方を振り仰ぐと、そこは教会の尖塔の上。

──黒いマントでスッポリと全身を覆った誰かが立っている。

……誰だ?

マッスラゴラ化はしていないみたいだが……というか、マッスラゴラがあの黒マントに気付いていない?

「……主、油断するでないぞ」

「ん?」

「あのマントの者……余にも特徴がとらえられぬ」

……何?

精霊のネビュラが?

小声の忠告に頷いて、ネビュラから降りて同化。相手の情報を見ようとしてみた……が。

??? Lv??

……なんかこんな表記は覚えがあるな?

確か、図書館裏の──

「うん、キミもイイ混ざり具合だ。実にイイ」

「っ!!」

一瞬で、目の前に出現した黒マント。

その隙間からニタリと嗤う口元が覗く。

咄嗟に吹いた犬笛。

闇の猟犬が飛びかかるが、黒マントは楽しげに嗤いながら、また尖塔の上にいる。

「もっともっと混ざればイイ、予測がつかないほうが楽しいだろう? 元の形を失おうが、そんなのは大した事じゃない! 心が変質しようが、もっと大事な事があるんだろう? ──ヒトの子には」

なるほど、つまりコイツはヒトではない。

「整いきったら楽しくない。──また会えるとイイね?」

そして黒マントはパチンと指を鳴らして消えた。

……直後にマッスラゴラに襲われて危なかったから、俺はとりあえずアイツを許さない。