軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:新ダンジョンの洗礼

無事に儀式は完了。

塔から謎の人物が現れたと思ったら消えた事でしばらく沈黙が下りたが、クエストクリア通知が出た事で一転、沸き立った。

「おつかれさまー!」

「お疲れ様でした」

「いやぁ、毛色の違う面白いクエストだったなぁ」

「儀式の開始宣言で防御みたいな事してたっぽいから、そのうち鏡ぶち破って敵が来る召喚クエストとかもありそうだな」

「ありそうですねー」

ワイワイと和やかなイベントのアフターの空気になる面々。

その様子を見て『終わった』と分かったんだろう。

防壁から見学していたプレイヤー達も、恐る恐る近付いてくる。

……そこで吼えたのは、ガルガンチュアさんだった。

「おいおい、何全部終わったみたいな空気してんだよ! ダンジョン出たんだろ? じゃあここからが本番だろーがよ!」

「なあ?」と自分のクランの面子へと問いかけるガルガンチュアさん。

脳筋のクランはたぶん脳筋が多いんだろう。グリードジャンキーのクランメンバー達は、誰も彼もが獰猛な笑顔を浮かべて「おう!」と返事をする。

会議では、ダンジョンを召喚した後は、それぞれ好きに突入していいって話はしてあった。

皆、『情報を持ち込んだ俺達が一番乗りすべきじゃないか?』とは言ってくれたが……俺は先人の情報をじっくり集めてから挑みたい派だし、相棒も召喚儀式の方に興味が向いていてダンジョン踏破には大して意欲は無い。

『好きにしていい』という事を伝えて、一番歓喜に湧いたのはガルガンチュアさんだ。

「一番乗りいただくぜ!!」

うおおー! と、グリードジャンキー達が塔の入り口に、

突進していく。

若干呆れ顔でそれを見送るお嬢様とグランド爺さん。

「まぁ、ガルガンチュアですからね……」

「うむ、ガルガンじゃからな」

他はのんびりと儀式完遂の挨拶を続けていた。

検証勢はあれそれと意見や議論を交わしている。

近付いて来た他プレイヤーへの説明はグランド爺さんとお嬢様にお任せだ。

アラジンさんは程よいサイズで収まったダンジョン塔の一階部分に目を輝かせている。

地上に露出しているダンジョン塔の一階部分は、古めかしい石造りの建物で、それなりの大きさがある。魔法使いが住んでいただけありファンタジーな装飾も彫り込まれていて、遺跡としては完璧だ。

さっそく道や周辺の整備を計画しているらしい。

(ん~~、面白かったね!)

(うん、見応えがあった)

俺達も、いい感じの達成感というか、満足感を味わっていた。

フリーマーケットと猫の店でそれぞれした取引の結果がコレなら、元を取って有り余る結果って言えるんじゃないだろうか。

(中二病にギュンギュンきた!)

(ソッカー)

(ファンタジーなんて中二病極めてなんぼよ)

(まぁそれはそう)

(イイ買い物をしました!)

(だな、大当たりだった)

ムービーじゃなく、現地で見るのはやっぱり迫力が違う。VRならではだ。

そこへカステラさんがやって来る。

「よう、お疲れさん」

「お疲れ様ー」

「……お疲れ様です」

「面白いクエストだったわ。またそれっぽいのあったら誘ってくれ」

「もちろん!」

「次回があったら、またよろしくお願いします」

……そうやって、それぞれが余韻を堪能していると……

「「「どわぁああああっ!!」」」

塔のダンジョンから、ガルガンチュアさん達が奇声を上げながら転がり出てきた。

ガルガンチュアさんがダンジョンを睨みながら声を上げる。

「タンクが即死かよ! ボルシチは!?」

「死に戻った!」

「パーティ半数が即死。魔法耐性無しは蒸発してたな……」

「クソが!」

……は?

ガルガンチュアさんの『グリードジャンキー』は、プレイヤー中トップレベルのクランだったはず……

その様子に驚いて、お嬢様がガルガンチュアさんに駆け寄った。

「どうしましたの!?」

「このダンジョン……適性レベルがクッソ高ぇ!」

「……モンスターのレベルはどのくらいでして?」

「全部100超えだ」

「……えっ」

「バンバン高威力魔法乱射してくるぞ。今までの野生動物感のあるモンスターとはジャンルが違ぇ。専用の対策がいる」

……マジか。

なんか色々有用な情報が入りそうなダンジョンだろうとは思ってたが、その情報をレベルで絞り込んでるのか。

一階でそれなら……深く潜ればもっと敵のレベルは上がるはずだ。

……召喚の最後に出てきて消えた謎の人物は、さては俺達だとまだレベル不足な事を悟って嗤ったな?

(……もしかして、見つけるの早すぎた?)

(……かもしれない)

少なくとも、今すぐ踏破されるようなダンジョンじゃない事は確かだ。

報告を聞いた面々は……反応が2つに分かれた。

ドン引きしたような顔でダンジョンを見る者と。

楽しそうに嗤ってダンジョンを見る者。

……なお、敗走してきたグリードジャンキーの当人達は後者である。

「……いいぜぇ、そうでないとな。久しぶりに噛み応えのありそうなダンジョンが来やがったぜ」

「ふむ……難易度に見合った実入りはあるじゃろうからな。戦闘ガチ勢には朗報か」

……これで、儀式に参加していなかった野次馬達にも、状況は知れ渡っただろう。

大規模な召喚によって砂漠に出現した、推奨レベル100超えの現状最難関ダンジョン。

ザワザワとどよめくプレイヤー達は……その後何人かの命知らずが突撃して、呆気なく返り討ちにあい、真横の『砂の都・サラサオアシス』に打ち捨てられていた。

「いやぁ……これはうちの街が長く恩恵に与れそうだ。最高の遺跡ダンジョンが来てくれたなぁ」

街の主のアラジンさんだけが、明後日の喜び方をしていたのだった。