軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ︰ダンジョンデートの準備

ログインしてません。こんばんは。

今日はログインする前に、雄夜とwikiを見ながら休日に行くダンジョンを選ぶのだ。

「大変残念なお知らせです」

「はい」

「火属性をメインで鍛えようとすると、敵がほとんど虫系になります」

「ぐわー」

僕も雄夜も虫は得意じゃないんだよなぁー!

「草タイプとかいないんですか!?」

「いるけどフィールドも草だから。『お前を殺して私も世界も死ぬ!』って叫ぶような状態になってたよ」

「実際に誰かやってたの?」

「どうしても虫が嫌な配信者がやってた。デスペナで全然おいしくなかったみたい」

「ハッ、これが炎上商法っ!」

「物理なんだよなぁ」

エフォ(EFO) もMMOだから、ちゃんとデスペナルティはあるんだよね。

お金やアイテムは影響無いし、ステータスが下がったりはしないんだけど。その代わりなのか経験値がそこそこ減る上に、一定時間経験値取得量が半分になるバステが付くんだって。

だからゾンビアタックに旨味があんまり無いゲームなのだ。

「ちなみに候補のダンジョンってどんな感じ?」

「えーっと……これ」

有志wiki、『【火魔法】強化オススメダンジョン』。

エントリーナンバー①『ムカデの巣穴』

ピリオノート北西の森にある洞窟型ダンジョン。

狭い通路に人の腕くらいあるムカデがビッシリ!

焼き尽くせる火力があれば経験値はダントツで美味しいが視界が辛い。MPが切れた瞬間に地獄を見るぞ!

エントリーナンバー②『アリの巣穴』

ピリオノート南東の山にある洞窟型ダンジョン。

入ってすぐの広場は床も壁も天井も子供用三輪車サイズの蟻でいっぱい!

確かなエイムでヒットアンドアウェイができればかなり美味しいが、上から来るのを見逃した途端に地獄を見るぞ!

エントリーナンバー③『Gの渓谷』

ピリオノート東にそこそこ行った所にある渓谷型ダンジョン。

視界の暴力でお馴染みのGがひしめく最悪の谷だが、上から一方的に魔法を降らせればそこそこ美味しい。ネックになるのはダンジョンまでの距離の長さと、たまに数匹飛び上がってくる精神的トラウマ。ここがこの世の地獄か。どうしてテメェらは飛ぶんだよ!!

エントリーナンバー④『蝶の山』

最近発見されたピリオノート西にある山型ダンジョン。

経験値はそこそこ美味しく、蝶が平気なら視界の暴力も問題ない。

良い事ずくめに見えるので①~③でトラウマを植え付けられた奴らが流れ着くのだが、ここはシンプルに難易度が高い。先日ようやくフロアボス撃破パーティが出たばかり。

精神異常デバフ対策が無いと何もできずに死に戻るだろう。登山準備は計画的に!

「大体地獄じゃん」

「それな」

どうしてこうなった。

ちょっとデートの行き先選ぶみたいでワクワクしてたのになぁ!?

「で、さ」

「うん?」

雄夜がエントリーナンバー④の『蝶の山』を指す。

「グレッグさんがウサギの毛皮欲しがってたのって、ここの攻略用じゃね?」

「……ああ!」

確かに!

wikiの内容とグレッグさんが言ってた内容が大体一緒だ!

「じゃあ僕らもウサちゃんで襟巻とか作ってみる?」

「それがいいんじゃない? アリの巣とかムカデの巣とか突っ込みたくないっしょ?」

「うん」

Gの谷は遠いみたいだから行くだけで力尽きそうだし。

「じゃあ今日はお出かけ準備含めた作業の日かな?」

「そうだね。俺はウサギ狩ってくるわ」

襲撃ドロップのウサちゃんは全部売っちゃったもんね。

* * *

ログインしました。

相棒はさっそくネビュラと一緒にウサギ狩りのため森へ。

僕は拠点に残って生産作業。

自分用のアクセサリーをね、作ってみようと思って。

ダンジョンに行くなら装備枠は埋めておいた方がいいもんね。

用意するのは 微睡(まどろみ) の森の木。

これで腕輪を作ってみようと思う。

「【木工】」

スキルで平べったい円柱状の形に切り出す。厚さは3センチくらい。

そこにさらにスキルで内側に丸く穴を開ける。自分の手首と合わせて……うん、このくらいかな。

そうしたら、【木工】スキルの旋盤効果でギュイーンと回転させて、刃物を少しずつ当てながら形を整えていく。

肌にあたる内側は角をしっかり落として。

外側はそうだなぁ……角は落として、縁が気持ち丸く膨らんで見えるようにして……で、真ん中にぐるり一周する溝を入れよう。

まずは青白い木の腕輪の原型ができた。

うん、いいね。

旋盤使うと形が整うから、適当でもそれっぽく見える。

ヤスリ機能で表面を整えて……

せっかくファンタジーゲームなんだし、ここに少し飾りを増やそう。

……そうだなぁ、せっかくだから【刻印】を入れようか。

ふっふっふ。フッシーの籠用にも底板を作ったら【刻印】スキルのレベルが上がったのだ。

そうしたらスタンプみたいに【刻印】を書けるようになったんだよ。このスキルはたぶんここからが本領発揮なんじゃないかな。

直径2センチくらいの丸い板を用意。それに【刻印】を刻んで貼り付けるようにしよう。

【刻印】は何にしようかな……『精神異常耐性』は、この後ウサギで襟巻作るから、そこにチャームで付けようと思ってるんだよね。

この腕輪はダンジョン以外でも普段使いしたいから、もっと汎用性の高い物がいいな。

散々悩んで、『MP増幅』を入れる事にした。

相棒よりレベルが低いのをMPで補おう作戦。

丸い板に彫って、樹液でしっかりと貼り付ける。

さて、ここからは実験のお時間。

このゲーム、魔法で出した物には残る物と残らない物がある。

水は水樽に補充できるから残る物。

火は残らない。ただ薪なんかの燃える物に着火すればそれは当然燃える。

風は残らない。まぁそもそも風には形が無い。

土は……残るって言うのかな? 地面を削ったり盛ったりしたらそのままだけど。

そして【草魔法】

これは残る物なのだ。

前に熊と戦った時の蔓草なんかは、枯れても残ってはいた。

この【草魔法】の草をね、腕輪に生やしたらどうなるのかなって実験だよ。

「【リーフクリエイト】」

腕輪に固定した刻印の下の樹液あたりから、細い蔓草がしゅるんと伸びて、溝にそってぐるりと腕輪を一周した。そして根っこみたいな物が、刻印の板の縁をがっちりと掴む。

見た目は刻印の板が蔦のバンドで留まってるみたいになった。

「う~ん、ファンタジー!」

かわいいじゃんすか。これは上出来ですよ。

板の下から小さい葉っぱがぴょこぴょこ生えてるのもポイント高いね。

「あとはこれが枯れるのかどうか、かな」

このゲーム、装飾用の鉢植えなんかはめっちゃ寿命が長いらしい。代わりに素材は採れなくなるらしいけど。少なくともβ勢は、テスト終了まで鉢植えのチューリップは枯れなかったってSNSで見た。

僕もアクセサリー用って事で、『枯れない装飾~飾り飾り~』って念じながら魔法使ったけど……どうだろうね? こればっかりは、時が経つのを待たないとわからない。

「ま、とにかくこれで完成!」

アイテム名は例によってAIにお任せ。

【 微睡(まどろみ) の木の魔殖腕輪】…MP最大値+15

微睡(まどろみ) の森の木の腕輪に、刻印を加えた腕輪。

製作者:キーナ

今の僕のMP最大値が15だから……おお、倍になった。助かるー。

最初の内はね、こういうちょっとした増加分が馬鹿にできないからね。

装備してフッシーとジャックに自慢していると、相棒とネビュラが帰ってきた。

「見て見てー!」

「おー、いいじゃん。かわいい」

「ふへへ、やったぜ」

狩ってきたうたた寝ウサギの毛皮を受け取る。

「尻尾も二個出たわ」

「おー、じゃあ一緒につけちゃおうか」

うたた寝ウサギの毛皮はふわっふわで肌触りが最高。

これを襟巻にだなんて、いいんですか!? とんだ高級品では!? そんなリアルの心の声が聞こえてきそう。いや、リアルで毛皮着るかって言ったら趣味じゃないから着ないんだけどさ。

毛皮の襟巻は【裁縫】にテンプレートがあるから、そのままポンと作成。

森の木の板に『精神異常耐性』の【刻印】をしてチャームを作る。

そのチャームとウサギの尻尾を一緒に革紐に通して、襟巻にも小さな穴を開けて通して結ぶ。……本当はね、細いチェーンの方が合いそうなんだけど、まだ【鍛冶】には手を出してないから。

【ふわふわ護りのウサギ襟巻】…精神+3

うたた寝ウサギの毛皮と尻尾で作った刻印付きの襟巻。

精神異常耐性が上昇する。

製作者:キーナ

「バッチリだぜ!」

「バッチリだな」

ここまでの作業で【アクセサリー製作】と【刻印】のレベルも上がったよ。

生産系スキルは便利になるものあるけど、出来上がりの品質と性能にも関わるからね。どんどん上がっておくれ。

作った襟巻二つの内、一つを相棒に渡して、一つは自分で身に着けてみる。

「あ……ヤバ……ふわっふわです。体温の無いウサギをそのまま首に巻いてる感じ……」

「いやまさにその通りだけど?」

相棒が苦笑いしながら向かいに座って、迷彩マントを外してから襟巻を身に着けた。

「……うん、わからん」

「そりゃフードと口布の上から襟巻してもねぇ?」

黒い暗殺者系装備に白いふわふわが巻かれている。すごい浮いてる。

「後は何か準備するものある?」

「あー、矢を補充しときたいかな」

「矢ね」

【武器製作】スキルにテンプレートがあったはず……あったあった。

……うん、材料が足りないね。

「木材はともかく鳥の羽が無いや」

「そういえばそうだった……」

「コラ、そこで我を見るでない」

「冗談冗談。……でもこの辺で鳥って見てないんだよな。いるの?」

「余の縄張りは海だからな……山のあたりを飛んでいるのなら遠目に見た気がしなくもないが」

山かぁ……

みんな揃って、壁の向こうにそびえる変な形の山を見た。

かなり距離がありそうな岩山。

「……山登りの準備で行く感じの場所じゃないよね」

「別の山登りの準備が必要になりそうだな」

「鹿とか熊とかって、あっちの方にいるのかな」

「かもね」

いるかもわからない鳥を探しにいく場所じゃないね。

「矢は買ってくるよ」

「頼んだ」

今日は拠点でのんびりしたい気分だから、明日かな。

この後は、やってみたい事の試作未満というか、材料をこねくり回して終了。ログアウトした。