軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:何故お前がその地を信じたのか

波を割って、飛ぶように走る魔道具付きのボート。

俺達の船が通り過ぎた所へ、魚型モンスターが喰らいつき損ねて荒ぶる様が海面を激しく掻き乱す。

そこへ放たれる息の合った魔法の波状攻撃。

相当量のモンスターがこれで片付けられているはずなのに、湧きポイントの周辺だからかまったく減る気配がない。

ついさっき、実況妖精が港の陸側に襲撃が追加された事を通達したばかりだ。

さっさとこっちの結晶を片付けたいが、船に乗っている魔法使いはどうしても魚退治に手を取られる。

(相棒、足場維持しながら他の魔法は無理だよね?)

(ちょーっとMP厳しいかなー)

だよな、知ってた。

「ベロニカ、港に飛んでジャック達に陸側の防衛に回るように伝えてくれ」

「わかったわ!」

ジャック達は海辺よりも森の方が戦闘慣れしているはずだ、だからせめてそっちにまわす。

あとは俺だな。

結晶に矢が通っていない以上、効果が不明な射撃を続けるのは不毛だ。

だったらせめて、周りの殲滅の手伝いでもした方がまだマシだろう。

思い出すのは、周囲のHPに継続ダメージを与えていたダークスライムの【闇魔法】。

「【ダークネスクリエイト】」

薄く広く、海に広げて、結晶から湧き出す魚型モンスター達に範囲ダメージを入れ続ける。こういう時、プレイヤーにはダメージが行かないPvP無しの仕様は助かるな。

──と、そんな感じに手探りで戦闘を続けていた所に、同盟チャットの通知が入った。

カステラソムリエ:いまログインした。結晶どうなってる?

……俺達が結晶の方にいるって確信してるって事は、ログイン可能になるまでの間にある程度スレでも見てた感じか。

同盟メンバーは時間が合わなかったのか、今は俺達とカステラさんしかログインしていない。

俺は手早く返信を打つ。

ユーレイ:結晶自体に障壁でもあるのか、攻撃が通っていない感じです。

ユーレイ:壁を壊すにも、湧き出るモブの対処で手が回ってません。

カステラソムリエ:わかった、そっち行く。

ド根性ブラザー:よいタイミングでログインしたようだ!

ド根性ブラザー:自分は港の防衛へ行くとしよう!

おっと、ちょうどいいタイミングでド根性ブラザーさんもインしたのか。

……ド根性ブラザーさんはあんまりこういうの参加しないイメージだったけどな。

もしかして、俺達と同じで変装してればオッケータイプなんだろうか? 同盟皆の衣装作るって話だったもんな。

ただ、あの体格だと変装も何もって感じだが……まぁ本人が良いなら良いか。

チャットを打っている間に減ったMPをポーションで回復する。

……このくらいの【闇魔法】でこの減りか。

そりゃ足場なんて展開してるキーナのMPはゴリゴリ減るわけだ。

そこへ、実況妖精から報告が入った。

「港の防衛に朗報ー!! 森側の迎撃にクラン『もっふる動物園』が合流したよー! 従魔マシマシ数の暴力でアニマル大戦争始めたから、あっちは大丈夫だって!」

朗報にプレイヤー達の歓声が上がる。

心なしか、士気が上がって動きが良くなった気がするな。

(『もっふる動物園』って精鋭コケッコちゃん達が行った所だったよね?)

(確かそう)

(戦闘来てるのかな? 元気かな? 見たかったなー)

(ワンチャン公式動画に映るかもしれない)

(なるほど!)

……しかし相棒、人の名前は覚えられないのに精鋭コケッコ関係は覚えてたな。人じゃないからか。

拮抗していた戦況が、士気の向上で若干盛り返す。

そうすると、次のフェーズに突入したのか、使徒のフランゴが足場を踏み抜く勢いで踏み込み強く吼えた。

「おのれぇ!! ヒト風情が小癪なぁあ!!」

使徒を中心に弾ける衝撃波。

後退するプレイヤー達。

『咀嚼のフランゴ』は、さらにその形態を変えていく。

ゴボゴボと粘度の高い液体が沸き立つような音と動きをして、体の輪郭が作り変わっていく。

黒くドロリとした組成は大柄な四つ足の獣のような胴と四肢を構築し、そこから体毛代わりに大量に生える牙を持った口付きの触手。

そして口の大きな深海魚のような顔を持つ、ズルリと長く伸び上がった首は、全部で7本。

「滅びをもたらす我が名は『咀嚼のフランゴ』! 貴様ら軟弱な生物など、我が顎の前には餌に過ぎぬ!」

ズズンと響く重量の音。

ヒト一人、丸ごと噛み砕けそうな口を持つ首が、グルリと周囲のプレイヤー達を捕らえた。

「大人しく、我が血肉となるがいい!!」

「ネモ、使徒の下だけ足場無くして」

あ。

実に容赦なく、あえて空気を読まないキーナの無情な指示。

パカンと口を開けたネモの足場。

ケラケラと響くネモの笑い声。

完全に地に足着けていた巨体は当然バランスを崩し、ズベッと海に滑り落ちた。

「ちょっ、えーっ!? マジでぇええ!? 巨大変形したフランゴの真下だけ足場消して落としたぁあ!! 森女さん容赦無さすぎぃ!?」

「「それな」」

思わず同意がボルシチさんとシンクロした。

「だって巨大化しやがるから重かったんだもん。MPもたなさそうなのにわざわざ敵を乗せてやる必要なくない?」

確かに? わざわざ相手にまで有利なフィールドを提供する理由は無いな?

完全に陸上形態だったらしいフランゴは、首で足場に引っかかり、身体が水没したため思うように動けていない。

ジタバタするフランゴ。

唖然とする周囲のプレイヤー。

そしてガルガンチュアさんの派手な哄笑が響き渡った。

「これだよ! 森夫婦はこうでなくっちゃなぁ!?」

俺をそこに含めるのか……俺、何もしてないんだけどな……

「無様晒して死にさらせぇ!!」

「うむ、今が好機!!」

「あっははは! サイッコー!」

「少々不憫な気もしますが……仕方ありませんね」

これ幸いとタコ殴りにし始める前線チーム。

……まぁ、ずっとあのままってわけもないだろう、今の内だ。

そして俺達の方にはその間に、連絡を受けていたカステラソムリエさんが俺達とよく似た変装姿で駆けつけた。

「よっし、到着!」

まさかの民族スタイル3人目の登場に、実況妖精が滅茶苦茶驚いた顔をする。

「えっ、まさか、お子さん!?」

「「「違います」」」

どういう勘違いだ。