軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:契約霊魂

犬に浮かれる相棒が石材を使った外壁の建築を引き受けてくれたから、僕は【死霊魔法】を自分の物として扱えるようになるのが今日の目標。

僕の杖に霊魂を入れる籠を付けた時、フッシーが教えてくれた【刻印】用の紋は『保護』。

要するに、不安定なオバケが籠の内側に刻んだ『保護』の紋の効果で護られる。それで持ち歩いたりガチャガチャ振ったりしても大丈夫になる、って事だった。

「主は器用よな。あの時も我の指示を元に食器だの工具だのを使いながら曲線を丁寧に描いておった」

「図形ってズレると気になるんだよね。ポリゴンとか頂点ズレるとすぐエラー吐くし」

「ぽりごん?」

「彫刻みたいなもの」

「ほほう」

写本した【刻印】の本を見ながら、【製図】で丁寧に紋を書き写す。

【製図】スキルは【刻印】と相性が良い。

ブループリント機能があるゲームで製図なんて何処に出番あるのかと最初は思ったけど、あるもんだね。

「どう?」

「うむ、しっかり機能しておるぞ」

森の木の板に刻んだのは『保護』と『尊重』と『癒し』。

刻印は複数刻むと効果が重複するんだって。

だから、この3つを一枚の板に並べて描く事で、『望んでやって来るモノを保護し癒す』みたいな感じの効果が出るらしい。

『隷属』とか『捕縛』を使うと確実に霊魂を引っ張って使役する事ができるらしいけど、そんな数の増やし方したところで僕のコミュニケーション能力じゃ上手くやれる気がしないのだ。

どうせエンジョイ勢なんだから、効率度外視で楽しくやりたい。

森の木の枝で鳥籠を編んで、樹液で補強し、中に刻印を刻んだ板を敷く。

「後で我の籠にも同じ板を頼む」

「なんだ、言ってくれたらコレすぐあげたのに」

「なぁに、急いではおらぬ。それがあると居心地が良いのだ」

「絨毯かな?」

【死霊魔法】は出会った霊魂と契約するのが基本だってフッシーは言った。

戦闘勢だったらフィールドを歩き回るから手頃な霊魂と会えるんだろうけど、僕は生産大好き開拓勢。

だからフッシーと同じように、鳥籠を家に見立てて、オバケをNPCとしてお招きして契約を交渉する作戦を取ることにしたのだ。

「我の場合は我の骨であった故、入居は我で固定であったが。さて、そうでないならどうなるであろうな?」

「鳥籠だし、鳥ばっかり来ちゃったりするかな?」

「刻印を入れた事で、『鳥を飼う物』よりは『霊魂を保護する物』になっておるとは思う。あとは相性の問題よ」

つまり、何が来るかはやってみないと分からないってことだね。

──『オリジナルアイテムを作成しました』

──『名前を入力して、完成登録してください』

ブループリント機能を使わないか、あるいはアレンジを加えた場合に出るこの命名機能。

面倒だったら無視して決定を押す事も出来る。

その場合はゲームマスターAIがそれっぽい名前をつけてくれるらしい。ヘルプに書いてあった。

パレード準備のドタバタで作った僕の杖とかがそうだね。普通に格好いい名前で気に入ってる。

今回も、特に固有の名前はいらないかな。

AIにお任せ。

【 微睡(まどろみ) の木の 魂籠(たまかご) 】…品質★★★

微睡(まどろみ) の木の枝で編んだ 魂籠(たまかご) 。

刻印により、保護を望む霊魂だけを招く事が出来る。

うん、イイ感じ。

じゃあ、早速お招きしようか。

「【住居登録】!」

さぁおいで。

おいでおいで。

ヒュウウゥゥ……っと風が渦巻いて。

籠の中に、小さな小さな火が灯った。

「んんんん?」

ちっちゃい。

マッチの火くらい。

でもなんだろう、シクシク泣き声みたいなのが聞こえる。

ぐーっと籠に顔を近付けて覗いてみると、小さな火にはシンプルな顔があって、火なのに涙みたいな光を零して泣いていた。

「……おーい、大丈夫?」

声をかけると、小さな火はなんとかこっちを向いた。

鍛冶の精の成りそこない Lv1

わぁお、レベルもちっちゃい。

「どうしたの?」

「……ぅ、ウゥ〜〜……」

吹けば消えちゃいそうな鍛冶の精未満ちゃんに根気よく声をかけて、僕はなんとか事情を聞き出した。

* * *

途中で相棒が装備の受け取りに行ったりしつつ、ゆっくりゆっくり聞いた事によれば。

鍛冶の精未満ちゃんは、元はブリックブレッドって町の鍛冶場の炉で芽生えつつあった存在だったらしい。

このまま育てば、その炉は精霊付きの炉として、もっと役に立てる。

そんな夢を抱いて鍛冶仕事を見ていたある日……街は大規模な襲撃で滅びてしまったんだとか。

「みんな、他の成りそこないは、もう……生まれ変わりに逝ったんダ……でも、オレは……まだ終わりにしたくなくっテ……」

「そっかー」

フラフラと彷徨っていたら、同じブリックブレッドという名前の町が作られているのを見かけた。

でも、その町の炉には、もう別の精未満がいて、この子の居場所はなかったんだそう。

……はて、時系列どうなってるんだ?

僕らの拠点でかなり襲撃早い方って話だけど……もう襲撃されて滅びて作り直しに入ってる所があるのかな? でも作り直した所ももう町ってレベルになってるの??

駄目だな、わからん。

それとも、開拓地じゃなくて本国の話なのかな? もしくはこの子のバックグラウンドにしか語られない街とか?

……まぁ、何でもいいか。

「ねぇ、アンタ、オレを置いてくれないカ? オレ役に立つように、頑張るカラ!」

カワイイ。

そもそもお断りする気なんて欠片も無かったけど、こんな健気なこと言われたら撫で回したくなっちゃうよ。火傷しそうだからやらないけど。

でもそうか……鍛冶場に縁のある子かぁ……最高かな?

口元が、キュウッと笑みの形になるのがわかる。

「ねぇキミ……カボチャは好きかい?」

「エッ?」

「僕は今ね、僕の力になってくれる霊魂を探してたんだ。そしてゆくゆくは、カボチャランタンに入ったりしてくれたら嬉しいなって思ってるの」

鍛冶の精未満ちゃんは、サッパリわからんって雰囲気で目を瞬かせたけど……何か腹を括ったみたいにキリッと点みたいな目を吊り上げた。

「や、やってやるヨォ! カボチャでもなんでも、どんと来いダァ!」

言ったな?

「二言は聞かんぞ?」

「言わねーヨォ!」

「イイよイイよぉ! それならキミの名前は今日から『ジャック』だ!」

キミも愉快なハロウィンになろうね。