軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:オバケの活動真っ最中

早々に上がったキーナの悲鳴で慌てて戻って来てしまった初心者パーティに問題無いと説明して、生暖かい微笑みを浮かべた一行を一階の探索に戻した。

俺は一応壁にかかった絵を確かめるが、鑑定結果にも特に問題は無し。一時的な物だったんだろう。

「じゃあ行こうか」

「うん……」

テンションダダ下がりした相棒と手を繋ぎ、同化を解除したネビュラに先導してもらいながら、俺達はようやく2階へ到達した。

「端から順番でいいよな?」

「うん、いいと思う」

どこが何の部屋かなんて分からないから、2階の右手すぐの部屋の前に立つ。

「こういうのは、開ける前に中の音を確かめるのが定石ですが……」

「ですが?」

「ドアに触って、ドアから手とか生えて襲いかかってきたらどうしようって思うととても怖い……」

「無いだろ」

想像力が豊かなのも考えものだな。

中の音を確認したが当然何事もなく、俺はドアを開けた。

──と、同時に部屋の中の椅子が飛んで来たから咄嗟にドアを閉めた。

ドアに椅子がぶつかる凄い音がする。

「ピィッ!? な、何?」

「椅子飛んで来た」

「ヒェッ」

「うむ、咄嗟に閉めたのはよき判断よ」

もう一度開ける。今度は飛んで来なかった。

足元に転がる椅子を起こして脇に寄せ、部屋に入る。

「ビリヤード台……遊戯室かな?」

「遊戯室」

「うん。ゲストとお酒飲みながら優雅な遊びする部屋」

優雅な遊び、とは。

とりあえず俺は家探しみたいに一通りの家具を見て回ったが、特に分かりやすく呪われてそうな物は見つからない。

対して相棒の方は、オバケの事はオバケに訊く事にしたらしく、首飾りのネモと杖のフッシーに声をかけていた。

「ここってオバケいる?」

「ふむ……おるぞ」

「いっぱい」

「たくさん」

「いるいる」

「いっぱいいるのかぁ〜……」

某人気ネズミキャラみたいにシワシワの顔になる相棒。

ネビュラも死の精霊だから分かるは分かるらしいが、そこは同じ幽霊同士の方が感知しやすいようだった。

「どんなのがいる?」

「痩せ細った少女の霊が一人おるな。後は……なんか小さいのが散らばっておる」

「小さいの?」

「イタズラっこ」

「子供だったモノ」

「まだまだイタズラしたいモノ」

「モノを投げるのが好き」

「驚かすのが大好き」

「ちょっとわかる」

共感するんじゃない。

それにしても……

「……人間の霊がいるのか」

「取り憑いてるアイテムごと持ち込んじゃったんじゃない?」

「ああ……」

そうだな、猫だの家畜だのだって、持ち込めば存在するもんな。

「話をするのなら少女の方がよいと思うぞ。小さい方は、追えば追うほど逃げるであろう」

「鬼ごっこ」

「楽しいよね」

「なるほど……」

「女の子は憑いてるお家があるよ」

「お家探して」

「綺麗な石」

綺麗な石……宝石か?

とりあえず指針が見つかったのは助かった。

ひと通り遊戯室を調べても特に何も出てこなかったから、そのまま次の部屋の探索へ向かう。

扉を開けると、今度は部屋中を枕投げ大会みたいに色んな物が飛び交っている真っ最中だった。

……そっとドアを閉じる。

「ハッスルしすぎだろ」

「ずいぶんとはしゃいでおるな……」

「悪戯っこだってわかったらあんまり怖くなくなった」

「そりゃよかった」

ガシャーン!と何かが壊れる音がする。ビクッとする相棒。呆れた顔をするネビュラ。

……これ、後から弁償させられたりしないだろうな?

* * *

「あった、建物の図面だ」

「おおー」

いくつかの部屋で書斎らしき場所を見つけて、飛んでくる本を押さえつけながら書類を漁り、ようやく見つけたこの館の見取り図。

「こっちはヤバそうな書類見つけたー」

「何がヤバい?」

「たぶんここの貴族が欲しいもの盗んでこさせてるんだろうなぁ〜って感じの書類」

「うわぁ……」

そんな書類を残すな。

しかも書類がある所を冒険者に調査させるな。

「関係ありそうなのはこの辺かなぁ……『病気で死んだ女の子の持ち物だった宝石』と『ポルターガイストが封印されてるっていわく付きの壺』」

「あー、それっぽいな」

「他にも色々あるけど……オバケが憑いてるかどうかはわかんないや」

分かりやすい悪徳貴族だ。

初心者が指名されたクエストだけあって、貴族のやらかしも分かりやすく暴きやすいんだろう。

「よし、とりあえずコレ持ってあっちと合流しよっか」

「だな」

必要そうな書類を確保して、書斎の外へ……

──出ようとしたところで、【感知】スキルでナニかの気配を感じ取る。

「……相棒?」

「シッ」

不安げな顔をする相棒を書斎の奥に下がらせる。

【隠密】スキルで気配を消しながら、扉の向こうに意識を集中した。

音もなく廊下を通る……ナニかの気配。

廊下をゆっくりと通過していくソレが……書斎の前を通り過ぎて少しした辺りで、そっとドアを開ける。

隙間から覗く、薄暗い廊下。

そこに……黒い不定形のテラテラとしたナニかが……ゆっくりと蠢いて移動しているのが見えた。

……ダメだ、暗くてよく見えないからか名前もレベルも見えない。

「……ネビュラ、アレ何かわかる?」

小声で問いかけると、一緒に扉の隙間から覗いたネビュラが息を呑んだ。

「……ダークスライム? レベルも高い個体ぞ。何故このような所に……?」

確認出来た所で、再度ドアを閉める。

「ダークスライムって何?」

「闇属性のスライムよ。基本は沼地の底に生息している。【闇魔法】で周囲の生命を衰弱させ、取り込んで捕食するのだ」

「……かなりヤバイやつ?」

「ヤバいやつだ。若いドラゴンくらいなら平気で喰らう」

おい、それ相当ヤバいヤツだろ。

「神話生物枠までいるの……?」

「シンワセイブツとはなんぞ?」

「すごく強くてすごく怖い、出会ったら逃げた方がいいモンスター、かな」

「ああ、ダークスライムなら大体それで合っておる」

なんでそんなのがピリオの屋敷にいるんだよ……

とりあえずやり過ごした俺達は、ダークスライムに気付かれないよう、静かに移動して合流のため一階へ向かった。