作品タイトル不明
キ:新聞読んで出発
夜のログイン、ゲーム内は早朝。
リアルで20時くらいにインすると、 エフォ(EFO) の中では朝の5時頃になる。夏だから日の出直後だよ、早いねぇ。
ゲーム内朝食と変装やお出かけ準備はのんびりと済ませたけど、いくらなんでも城に行くには早すぎる気がする。脳内イメージが役所なんだよね、お城って。
だから僕らは港予定地……もうほとんど出来上がってるから港でいいかな。港へ行って、新聞を買う事にした。
前に創刊号を配ってた『ピリオニュース』
これがイベント期間中だからか結構な頻度で新刊が出てて、自分が参加しなかった催しの事とか、誰かが遭遇したちょっと変わったクエストの顛末とかが書いてあって面白いんだ。
新聞屋さんは記事を書いてるのは記者名的にプレイヤーっぽいんだけど、売り子はNPCを雇ってるみたいで24時間いつでも買える。
はい、一部購入。
僕等の後にNPCの兵士っぽい人も買っていったのがちょっと面白かった。
端っこの人が少ない木陰に移動して、一枚の新聞紙を相棒と二人で覗き込む。
ふむふむ……トップニュースは昨日のエンペラースイカ大会の事だね。
スイカ品評会の優勝者と、その後の優勝スイカを見事に切ったチャレンジ成功者。
それぞれの会の様子と、優勝者へのインタビュー。
グリーンさんは畑への情熱を語り倒し、武芸之翁さんは孫バカを炸裂させていた。
スイカは出場者と観客で楽しく食べて、残った皮は良質の武具素材として競りに……エンペラースイカの皮って素材になるんだ? 天然で草属性付与状態になる? へぇ~
さらに優勝スイカの王冠部分は、なんと本国の王家に献上されたらしい。……というのも、歴代国王達は何故かみんなエンペラースイカクラウンのコレクターなんだとか。
他の王冠部分もコレクター向けにオークションにかけられるんだってさ。
(思ったより用途多くて人気なんだね、エンペラースイカって)
(それな)
そして次のニュースは……なんとタイムリー、ウサウサ島の事だった。
一緒に島に行った人魚さん達がスレに書き込んで、それを見た新聞社が取材に行ったみたい。
あの島の情報は、僕らは場所を教えてもらった側だから、一切合切を人魚さん達にお任せしていた。
出来れば僕らの事は伏せてもらえると助かるって話はしていたんだけど……『協力者の力により上陸』ってあるから、その辺は汲んでくれたみたい。
記事にはウサボールだらけの島である事。
おそらくリンゴチップスに出てきた『ウサウサ島』であると思われる事。
ただし、おかしな海流の流れがあるのと、危険なLv100のイソギンチャクモンスターがいるので、うかつに近づくのは得策ではない。
冒険者ギルドに地図が届いたので、近くを通る時は要注意、上陸を試みるなら自己責任で。と書いてあった。
うん、注意喚起の一面が強いかな。
(港が出来た後で、うっかり出港した船が近付いたら危ないもんね)
(それな)
あとは広告が少々。
店の宣伝とか、新商品のお知らせとか、NPCのお店の宣伝をしてるのもあるし……へぇ、クランメンバー募集の広告なんてのもある。
ゲームならではだなーって感じな広告は『泡銭が入ったので広告やってみたwww』って書かれた個人名のやつ。大車輪野郎さんだってさ。
(この新聞の広告掲載っていくらくらいなんだろうね?)
(さぁ……?)
リアルの広告費もピンとこないから、ゲーム内の広告費なんてもっとピンとこないや。
のんびり新聞を読み終えると、ジャラランと楽器の音が聞こえてきた。
音の出所はアリーナのステージの方。
(……そういえば、あそこってイベントに使われない日は申請出せばステージ使えるらしいよ)
(へぇ、そうなんだ)
今日は特にアリーナが会場の催し物は無かった気がするから、今のは申請した誰かのゲリラライブって事かな?
(よさげな時間までまだあるし、聞いてく?)
(うん)
お城に早すぎないくらいの時間まで、僕らはアリーナで歌を聞いて過ごした。
歌は『海を漂うクラゲがウッカリ釣られて陸をあちこちたらい回しにされたあげくにゴミと間違えて海に放り込まれる』って内容の、ちょっぴりカナシミ漂う歌だった。
* * *
歌を楽しんで、いい時間になったからネビュラとベロニカを連れてお城へ移動。
お城の前には、大きなカバンを2つ積み上げたルビィルさんが、のんびりカバンに座って本を読んでいた。
うっそん、待たせちゃった?
「「おはようございます」」
「ああ、おはよう」
「すみません、待ちましたか?」
「いいや、サフィーラがあれもこれもと持たせようとするから外にいただけだ」
うう~ん、弟の心兄知らずって感じ。
「いくらなんでもポーションと食料を木箱で持たせるのは過剰だと思わんか? 私は身一つでそれなりに暮らせると言うのに」
んんんんん〜……長く定住するって考えると何もおかしくない荷物のような気はするんだけどねぇ〜……この人相手だと過剰に思えちゃう不思議!
「カバン2つで足ります?」
「問題ない、1つは本でもう1つは服だ。足りなければ調達依頼でも出す」
そう言うと、バサバサッとルビィルさんの肩にホライゾンクロウが一羽とまって「カァ!」と鳴いた。
「この通り、お目付け役もついたのでな」
うん、それなら安心かな。