軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:入れない島に入るには

人魚に先導されて、俺達は遭難先の可能性が高い島にやって来た。

……正確には、島が見える所までやって来た。

「ここから先が変な海流ね」

「え、こんなに遠いのに?」

「そーなんすわ。自分で泳げる人魚はともかく、船だとどうなるかわからないですね」

島はかなり遠くに見える。

たぶん、地図の魔道具が届かない距離なんだろうな。

変な海流っていうのは、具体的には強い流れにグルグルと翻弄されて、最終的には今くらいの距離に戻されるらしい。

「色々やってはみたんだけどなー」

「遠くから思いっきり加速して、変な流れの所跳び越そうとしたりね」

「【氷魔法】とか【土魔法】で通り道作れないかなーとか。維持出来なくてダメだったけど」

「【風魔法】で飛ぶにはレベルもMPも足りなかったんよ」

なるほど。

まぁ結構な距離あるからな。

「行けそうな所を塞いでるイソギンチャクは倒せない感じ?」

「レベル100あった」

「ひゃっ……!?」

「弱点突こうにも触手の隙が無くて」

しかも水中戦だもんな……

(さてどうする?)

(んー、たぶんだけど……僕らはものすごくイージーに突破できるよ?)

(どうやって?)

(ネモを足場にして空中走って行く)

(……ああ)

そうだったな。ネモはそれが出来るんだな。

補助としては弱いし想像力が必要だけど、ネモは使いこなせれば優秀だ。

(でもまぁ、そこまで率先して手の内大公開するのも微妙だし。まずはベロニカちゃんに、あの島に遭難者がいるかどうか見てきてもらおうよ)

(なるほど)

居なければこの島はスルーでいい。

「ベロニカ、頼む」

「人がいるか見てくればいいのね」

ベロニカを飛ばして、俺達は海の上でしばし待機。

「待ってる間、お昼にしよっか」

「うん」

「俺らも昼メシ食うかー」

「だなー」

「座る所作ります?」

「あ、いいんですか?」

「お願いしまーす」

相棒がネモを変形させて、半分水中の座れる所を作った。

人魚の人達はお礼を言ってそこに腰掛けて、それぞれ持参している食事を取り出して食べ始める。

俺達も、持ってきた食事を取り出した。

……しばらくのんびりと食べていると、自分が座っているネモが気になる感じの人魚が、ボソッと言う。

「……コレで島まで行けたりしません?」

「…………お気付きになられましたか」

まぁ、気付く人は気付くか。

そこまで徹底して秘匿する程の事でもないしな。

* * *

戻って来たベロニカに、好みの味に調整したペレット団子をやりつつ報告を聞く。

「いたわよ。肖像画のヒューマン」

「了解、お疲れ」

「気が利くじゃない。……んん、美味しい」

ここで当たりか。

しかし遭難者はどうやって上陸したんだか……

「じゃあ水面から上陸してみようか」

「ヤッター!」

「これが森夫婦の特殊プレイ!」

「い、いいのかな。俺ら初心者なのに特殊プレイして……」

「上手に特殊プレイできるかな……」

「ちゃんとプレイ内容は内緒にしときますんで!」

「掲示板にも特殊プレイ公開したりしないんで!」

わかったから特殊プレイって言うのをやめろ。

あらぬ誤解を招く。

船の形をしていたネモが、キャラキャラと笑いながら足場に形を変える。

人魚達は「おおー!」と歓声を上げながら、尾ビレを脚に変えてよじ登って来た。

「座った時も思いましたけど、ふわふわしますね」

「泳いでるのとも違うな」

人魚達はなんだかんだ俊敏がそれなりにあったから、ダントツで俊敏が死んでいるキーナをネビュラに乗せた。

そこそこの速度で走って島を目指す。

俺達の移動にあわせて、ネモの足場も随時後ろが消えて前に展開していく。

いきなり島に届くような長さの足場は無理だったらしい。

まぁいくら不定形とは言っても大きさには限度があるんだろう。じゃないとチートすぎるしな。

その限度が成長するのかどうかはわからない。

海面の少し上を走って、俺達は難なく難所を越えていく。

時々オレンジ色の凶悪な顔をした魚が跳び上がってくるが、全員驚きながらも避けて進んだ。

本当なら鳥獣人とか、もしくは空を飛べるモンスターを契約なりテイムなりしたプレイヤーが突破できる想定だったんだろうな。

自前の船で冒険するようになればすぐ来れただろうから、そんなに時期が早まったわけでもない。

……ただ、遭難者がもうしばらく放っておかれていたかもしれないってだけだ。

人魚パーティも含めて、俺達は島の浜辺に到着した。

「よっしゃー! 着いた!」

「すげぇやマジで来れた!」

「これが森夫婦特殊プレイッ……!」

性癖が高じてファインプレーになったみたいに聞こえる……てか『ファインプレー』でいいだろ、『特殊プレイ』じゃなくて。

「……ベロニカ、遭難者はどっちだ?」

「ここからだと島の反対側よ」

反対側か……浜辺を回るか森を突っ切るか。

何にせよ、探検したくてウズウズしている人魚パーティとはここで別れた。

俺達はさっさと遭難者を連れ帰らないといけないし、ベロニカが場所を覚えたから何時でも来られる。

「帰りは大丈夫?」

「たぶん出るのは普通に出られると思うんで、ダメだったら死に戻ります!」

まぁゲームだからな。

礼を言う人魚パーティに礼を返して、俺達は浜辺をぐるりと迂回し始めた。