軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:秘密の肉調達

映画とかで、正義のヒーローが裏社会の人間に協力を要請しに来た時みたいな。

そんな空気に、僕は首を傾げていた。

なんだろう、ガイモカマイムッシュってそんな知る人ぞ知るみたいな裏メニューだったのかな?

『一見さんに食わせられるような代物じゃねぇんだよ!』みたいな? バトル系グルメ漫画かな?

値踏みされるような視線が居心地悪くて、とりあえず誤解が無いかどうかの確認をしようと考える。

「えっと……『ガイモカマイムッシュのスパイシーロニオンソースがけのテイクアウト』って、ここであってます?」

「おう、あってるあってる」

あってるんだ?

まぁ、裏社会です〜みたいな空気かもしてるけど、ここにいる全員やってる事って食事だもんね。

こういう雰囲気にありがちなカードとかビリヤードとかじゃないのだ。お酒は飲んでるけど。

「じゃあ小手調べに……こいつを使ってブツを調達してきて貰おうか」

そう言いながら、悪い顔をした若いウサギの獣人が、僕らにお香のような物を渡してくる。

「南の森でそれを焚けば、地面の下からデケェ芋虫が出てくるからよ。そいつを張り倒して肉を獲ってきてくれや」

「……そのお肉って何に使うんです?」

「へっへっへ、そいつぁ獲ってきてからのお楽しみよぉ」

「街道からは離れて使えよ」

「人のいねぇところで焚くんだぞ」

んんんん、絵に描いたような怪しさ……ヤバイ薬の材料とかじゃないといいけど。

なんて思っていたところへシステムメッセージ。

──クエスト『秘密の芋虫肉調達』を受注しますか?

あれ? 別クエストなんだ?

特に警告の類も無し……それなら大丈夫かな?

(警告も無いし、受けていいよね?)

(まぁ大丈夫じゃない?)

相棒も異論無し、と。はい受注。

これをクリアしたら料理が貰えるのかな?

地下室直通の裏口を教えてもらって、僕らは狩りへと出発した。

* * *

「さすがにベルン君は日付またいで連れまわせないだろうから、急いだ方がいいよね」

「だね」

僕等は大急ぎで南の大森林へと向かう。

言われた通りに街道から離れて、近くに初心者の姿も見当たらない森の浅い部分でお香を用意した。

「デカイ芋虫ってどのくらいの大きさかなぁ?」

「さぁ……?」

さすがにレイド規模ではないと思うけどね。

火を点ける前に、どうやって戦うかの打合せをする。

なんたって今回はゲストのベルン君が一緒だから無茶ができない。

相棒は僕と周囲を交互に見て、少し悩んでから言った。

「一応、ベルンを抱っこしてあっちの木の陰にいてくれる? 俺は反対側から芋虫を撃つから。指示したら魔法で攻撃。それ以外は防御と周囲の警戒よろしく」

「はーい」

……抱っこできるかな?

僕は動物飼ったことないから、まず持ち上げ方がわからない。

犬ってどこを持ったら痛くないんだろう……脇? あ、肩関節大丈夫かなこれ? あっ、あっ、わかんない、犬の体の強度わかんない、この肩関節外れない? 痛くない? 大丈夫?

見かねた相棒が抱っこさせてくれた。

重くて無理だった。

ごめんよ筋力ステが未だに初期のままの4なんだ! 貧弱エルフです! そして今後も上げる予定は無い!

仕方ないからリードを持って木の陰に立ってる事にした。

相棒が言い含めたベルン君は僕の足元で静かにしてくれている。イイ子。

「じゃあ点けるよ」

「オッケー」

お香に点火して、すぐに距離を取る。

そのまましばらく待つと、わかりやすい土の盛り上がりがズモモモッと近づいてきた。

モゴッと白い芋虫の頭が土の中から顔を出す。

マイルドバターモイモイ Lv5

わぁ、弱ーい。

抱き枕くらいの大きさかな?

芋虫は、一瞬で相棒の撃った矢に頭を射抜かれて、消えていった。

「……あっさりだったね」

「うん」

「思ったより小さかった」

「いや、芋虫としてはかなりデカイが?」

それはそう。

ポリゴンになって消えていった芋虫のドロップはコレ。

【バターモイモイの柔肉】…品質★★

バターのような風味が香る、脂ののったモイモイの肉。

「……めっちゃ食材だねぇ」

「うん」

ヤバイお薬とかになりそうな雰囲気は微塵も無いや。

どっしりとした、大き目の枕みたいなサイズの真っ白な芋虫肉。

……なんてのんびり観察していたら、焚きっぱなしだったお香に誘われたのか、次のモイモイがやってきた。

ハーブバターモイモイ Lv7

ナッツバターモイモイ Lv6

えっ、種類違う!?

相棒の弓でさくっと終了。

そして残される戦利品。

【ハーブバターモイモイの柔肉】…品質★★

爽やかなハーブとバターのような風味が香る、脂ののったモイモイの肉。

【ナッツバターモイモイの柔肉】…品質★★

香ばしいナッツとバターのような風味が香る、脂ののったモイモイの肉。

「待って? 種類が豊富」

「……どれが正解だ?」

困った所へさらにもう一匹。

スペシャルチーズモイモイ Lv10

「スペシャル!?」

「チーズ!?」

【チーズモイモイの柔肉】…品質★★★

高級チーズのような風味が香る、脂ののったモイモイの肉。

どうしよう?

持って帰って『これじゃない』って言われて再出発しないといけないタイムロスは避けたい。

「相棒! キノコ生えてる! キノコ!」

「マッシュバターモイモイ……」

「次は霜降りバターモイモイだって」

「全部白いのに霜降りも何もあるか」

「そもそも土の中にいるのにどうやってお香に反応してるの??」

「さぁ……?」

結局僕らは、貰ったお香の効果時間いっぱいまでモイモイを狩り続けたのだった。