軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:土産と羊と新入りの住居

観光と精霊郷での幻獣ガチャを終えて、俺達は拠点に戻って来た。

「ただいまー、新入りだよー」

「よう新しい同胞!」

「おお、あの時のサメか」

「ワー、なんかカッコイイお魚がキター!」

特に反発が起きる事もなく、バンはあっさりとオバケ仲間の一員になった。

俺も相棒もギスギスするのは好きじゃないから、これも主ナイズの結果なのかもしれない。

* * *

持ち帰ったお土産をジャック達に渡す。

今回は食べ物ばっかりだったな。

特に追加で狩ってきたローリングターキーの攻撃は皆面白そうに聞いていた。

「そうだ、ついでに襲ってきたリーフボアの固いレタスがたくさんあるから、これは羊にあげようか」

「ああ、そうだね」

インベントリから出したワイルドハードレタスを持って、放牧地に移動する。

ヤーンボールシープは、来たばかりの頃の毛糸玉サイズから、かなり成長して大きくなりつつあった。

レタスを見せると、嬉しそうに寄ってきてモヒモヒと葉を齧る。

「可愛い」

「毛以外は普通の羊だな」

毛はもう生えてる時点で毛糸になってるっていうファンタジー加減だけどな。

「そろそろ最初の毛刈りをした方がいいかもしれない」

「そうなの?」

「……『神の傑作たるヤーンボールシープ』の本にはそう書いてあったよ」

「狂信者か?」

あの本、役に立つのが複雑だ。

あんまり小さい内は毛をそのままにした方が良いが、ある程度成長したら定期的に毛刈りが必要。……まぁ、たぶん普通の羊と大して変わらないだろう。

「毛刈りハサミとか、いるよな?」

「ヤーンボールシープはいらない」

「……なんで?」

「首の後ろあたりにある毛糸の根元を1カ所切ったら、スポッて毛糸玉が脱げるんだって」

「そんなことある?」

「だってそう書いてあったもん」

半信半疑でヤーンボールシープの毛をまさぐる。

首の後ろ……ああ、これか?

確かにここの毛糸が1本だけ根付いてるな。

その1本を掴んで、生え際から切った。

そうしたら、セーターを脱がすように、羊から毛糸の束をズルリと抜き取る事が出来た。

「……マジで?」

「すごい楽」

普通の羊毛なら、これを毛糸にする手間があるはずだが。

ヤーンボールシープはこのまま毛糸として使えるというからとんでもない。

「『これこそ、人のために神が遣わした奇跡の羊。ヤーンボールシープなり!』……って本には書いてあった」

「……確かにファンタジーならではの存在だけど」

子羊の頃は片手で持てる毛糸玉そのもののサイズだったが、今は普通の羊より一回り小さいくらいまで大きくなっている。

当然毛糸の量もそれ相応だ。

「とりあえず毛糸玉にしちゃわないとね。マリー、手伝ってー」

「はい、マスター」

マリーの裁縫工房で、手分けして毛糸を玉に巻く相棒とマリー。

白い毛糸だから、好きな色に染めて使えるようだ。

……俺達くらいの規模の開拓地なら、1頭いるとものすごく便利だ。

「……なんで詐欺だったんだ」

「え? あー、ヤーンボールシープ愛好会過激派?」

「そう。普通に便利だから、子羊売ったら皆喜んで買ったと思う」

「それなー」

マリーは毛糸玉にも興味津々で、マフラーを編みたいとワクワクしていたからそのまま任せる事になった。

そして相棒は

「編み物と言えばロッキングチェア」

という謎のこだわりから、マリー専用サイズのロッキングチェアを作っていた。

* * *

「水槽って売ってると思う?」

毛糸を全部毛糸玉にしてから、相棒がふと零す。

「水槽?」

「そう。金魚とか飼う水槽」

「……さぁ? 魚飼いたいの?」

「というか……バンのお家が籠だと違和感がすごくて」

「ああ」

確かに。

メガロドンだったバンは、籠の中で宙に浮いてる謎の状態だ。

「せめて拠点にいる間の家は籠じゃなくて……金魚鉢でもいいから欲しい」

金魚鉢で飼われるサメ……?

……とりあえず、俺も動物の言葉がわかるか確認したかったから、水槽探しについて行った。

転移オーブで、港の建築現場へ飛ぶ。

観光に出発する前に見たピリオの露店広場は、スカスカでほとんど店が無かったからな。

夏イベント期間中は港予定地で買い物をするのが無難だ。

初日に生やした植物の屋根が立ち並ぶ出張露店広場。

空いた屋根に入った次の露店もありがたく日除けとして使うから、どこも撤去されずにそのままだ。

ここはこのままこういう広場になるのかもしれない。

相変わらず人は多いが……まぁ、二人旅でメンタルは少し持ち直したからどうにかなる。

「あ、風鈴だ!」

相棒が見つけた露店は、古い日本文化の雰囲気を全面に押し出したガラス工芸の露店だった。

店主が狐の獣人の女性で着物を着ているあたり、こだわりを感じる。

「どうぞごゆっくり」

キセルを片手に店主が言う。

テンプレみたいに妖艶な狐の女性だ。

花の形の、ハロウィン風の拠点にも違和感の無さそうな風鈴を見つけて、ひとつ購入。

「はい、まいど」

「あと……金魚鉢とかあります?」

「御座いますよぉ。大と中と小。中が金魚鉢って聞いて大体思い浮かべるサイズで、小は生体はお勧めしない卓上インテリア向け。大はロマン」

「ロマン」

「魔女の大釜みたいなサイズしとりまして」

……だいぶデカいな。

「中サイズください」

「はい、まいど」

あっさり見つかってよかった。

ガラス製品は屋根があるととても助かるっていう世間話をしながら品物を包んで貰っていると……俺の耳が、不思議に反響した声を拾った。

「誰かー! 誰か来てくださいワン!」

犬だ!