軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:のんびりアウトドア道中

思いがけずご馳走になって、俺達はゴマ油さんに見送られながらエゴマ亭を後にした。

「シュークリーム美味しかったね」

「だね」

「じゃあ出発しよっか!」

エゴマ亭から出ると、舗装こそされていないがある程度整えられた馬車道が南北に伸びていた。

食料の買い足しついでに冒険者ギルドで見てきた地図によれば、この道を行けば『湖畔のミストタウン』につくはずだ。

「湖の街は小麦畑があるみたいだから、エゴマ亭はそこから小麦を仕入れてたりするのかな?」

「かもね」

なんにしても、道があるのは助かる。

手を繋いで、のんびりと歩き始めた。

ミストタウンは徒歩で約2日程。

……大街道の時に歩き回った事を考えると、そこまで遠くないような錯覚を覚える。

「あ、固いレタスだ」

「イノシシな」

久しぶりに見たな、いつぞや俺達を轢き殺したリーフボア。

丘陵地帯だから高い山以外にも時々いるらしい。

遠くだったから、俺達には気付かず森に消えていった。

「特に討伐クエストは受けて来なかったし、襲われたら倒す感じでいいよね?」

「いいよ」

今日は旅がメインだ。

「採取はしてもいい?」

「いいけど、あんまり寄り道すると休日終わっても着かないよ?」

「まぁ、それはそれで」

俺達の緩いやりとりを聞いていたベロニカが、バサリと肩から飛び上がる。

「道沿いに厄介なのがいないか確認しておくわ」

「ああ、助かる」

「べ、別に、無駄に日数増えたら面倒だと思っただけなんだからね!」

はいツンデレ。

* * *

特に急ぐ事も足止めを食う事もなく、初日は日が沈んだらログアウト。

休日はまた昼からログインしてしばらく進むと、巨大な渓谷が目の前に横たわっていた。

「うわー、すっごい! 四角いクラフトゲームの渓谷みたい」

相棒が感嘆の声を上げる。

「……あ、ここってまさか、前に言ってた『Gの渓谷』ダンジョンがある所?」

「いや違う。あれはこっちの方角じゃなかったはず」

「なんだ。じゃあこの下は何があるんだろ?」

「さぁ? 橋があるから通れるって事しか見なかった」

正面には、有志が作ったらしい立派な石のアーチ橋。

橋好きな建築メインのプレイヤーが、大きなアーチ橋を作りたくてちょうど良さそうなここに勝手に建てたとかなんとか。

馬車が余裕ですれ違える幅の石橋は、欄干に彫刻まで入っていて、遺跡だって言われたら普通に信じる見た目をしている。

「趣味でこれはヤバい」

「だね」

テンプレートを拡大して設置すればほとんど終わるって事はわかっていても、使う材料は自動で集まらない。買うか採掘かするものだ。

石材なんて高い物、自拠点でもないのによくこんな量使ったな。

ひとしきり感心したり呆れたりしてから、俺達は橋を渡った。

「うひぃ~高ぁ~い! ボス戦とかありそうな雰囲気」

「あー、ドラゴンとか巨大ゴーレムとかな」

「そうそう」

まぁプレイヤーメイドのただの橋だからそんなものは無い。

橋の真ん中あたりで立ち止まって、巨大な渓谷をのんびりと眺めた。

「西はあの辺が崖の終わりで……東は端っこ見えないや。地図だとピリオ北東の方まで続いてたよね?」

「そうだったはず」

確か東端は、アングラな街の入口があるとかなんとか、有志wikiにあった気がしたな。

まぁ、行くとしたら何かのクエスト関係になるだろう。

少なくとも今は用事は無い。

「橋の真ん中にバンジージャンプできる所とかあったら流行りそうじゃない?」

「……ゲームだから、飛びたいプレイヤーは紐無しでも飛んでそうな気がする」

「……確かに? あまりにも命が軽いけど」

「ゲームだからなぁ」

ゆるい会話を続けながら、俺達は橋を渡り切った。

* * *

荷物を載せた馬車とすれ違ったり、兵士の乗っていた馬が怪我をして困っていたのを相棒の光魔法で助けたり。

NPCの行き来を実感する道程は、休息を挟みつつ穏やかに過ぎていく。

今は襲い掛かってきた『ローリングターキー』を仕留めて、ドロップした肉を煮て食べようとしているところだ。

丸々としている七面鳥が、ゴロゴロと転がりながら体当たりしてきたのはあまりにもシュールで、二人揃ってしばらく笑いの発作が収まらなかった。

「家畜でもないのに丸ごとの肉が出るとは思わなかった」

「『ターキーは丸ごと』っていうこだわりが運営にあったんじゃない?」

現地調達のキャンプ飯だと、そのこだわりはちょっと面倒だ。

日が暮れた馬車道の脇で焚火をして、鍋に切り分けた野菜と肉を入れて煮る。

量が多いが、余ったらインベントリに入れておいて明日の朝にも食べればいい。

……なんて思っていたが、出来上がって食べていた所に兵士が数人通りがかって、残ってる分を全部お買い上げして食べていった。

少しばかり急いでいて、作る手間が惜しかったらしい。

休憩がてら俺達の焚火に当たりながら飲み物と一緒にかきこんで、笑顔で礼を言って去っていった。

「やっぱり道があると、NPCが通るものなんだねぇ」

「だね」

静かに楽しみたい気分だったが、この程度のやりとりなら悪くない。