軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:またコケッコか

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ゲーム内朝食をさくっと済ませた俺達は、さっそく出かける用意をする。

今日は変装スタイルで、相棒はいつものリンゴと占いもついでに。里親探しが目的なら、人が多く来てもらった方が都合が良いからな。

俺はまた後ろで演奏でもしていよう。

そう思って外へ出ると……ジャックが慌てたように走って来た。

「マスター! 旦那サマー! また変なニワトリが育ッター!!」

またか。

* * *

精鋭コケッコ Lv4

知らん品種になってる!?

覚醒コケッコは目付きの悪いニワトリだったが、精鋭コケッコはそれにプラスしてなんか筋肉質な上に鶏冠が派手な兜飾りみたいな形になっていた。

「……どうしてこうなった?」

「タブン、ベロニカが原因カナ~?」

「ベロニカ?」

俺がベロニカを見ると、ベロニカは気まずそうにそっと目を逸らした。

「……何したの?」

「……変な事はしてないわ」

「変じゃない事はしたのか」

「ちょ、ちょっと斥候クロウ隊仕込みの規律を叩きこんでやっただけよ!」

「筋トレもさせてたよネ?」

「引き締まって美味しくなるかもしれないじゃない!」

鍛えた相手が食われるのはいいのか。

「ちなみに今代のニワトリは全部コレダヨ」

「全部!?」

俺が放牧地を振り向くと、ニワトリ達はザッと整列しザッと姿勢を正し「コケェッ!」と声を揃えて鳴いた。

「……食べル?」

「食えるか!」

どうしてうちの農場は食えないモノばかり育つ?

このニワトリ達も里親行き!

なお、相棒は一糸乱れぬ行軍をするニワトリ達をキャッキャと楽しそうに手拍子しながら眺めていた。

* * *

ザッ ザッ ザッ ザッ

……なんで精鋭コケッコ達は歩くだけで綺麗に並んで行進するんだろうか。

ピリオの転移広場から露店広場に移動するだけでニワトリ達の行軍に視線が集まる。

(この辺でいいかな?)

(いいんじゃない)

相棒が広場の片隅の空きスペースで立ち止まると、精鋭コケッコは先頭の一匹が「コケーッ! ココッ!」と鳴くのに合わせてピタッと立ち止まった。

オオー! と周りから拍手が沸き起こる。

……客引きとしては完璧だったな。

店をセットしたら蜂のお姫様とコケッコの説明書をかなりの人数が読んでいた。

「……へぇ、あのデカい蜂の女王様になるのかぁ。『お婿さんの婿入りを許してくれる方』ねぇ」

「『巣を作るのにかなりの広さが必要になるかもしれません』……それはそう」

「うちは厳しいかなー、そこまで蜂にスペース割けない」

そうなんだよな。

蜂のお姫様はデカい上にコロニー作って婿を迎え入れて繁栄したいわけだから。農場系の開拓地持ちでもちょっと躊躇う案件だ。

口コミで、引き取りたいってプレイヤーに話が届けばいいんだけどな。

……まぁ、ラーメン屋みたいに占いに行列でき始めたから、話題にはなってるだろう。

* * *

しばらくそうして露店広場で過ごしていると、一人の騎士っぽい装備を着込んだ髭面でガタイの良いオッサンが一人、里親募集の説明書の前で立ち止まった。

「……ほぅ、精鋭ときたか」

うわ、すげぇ渋い声。

ゲームとか映画とかで軍の偉い人役やってるような声色だ。

精鋭コケッコ達がその鋭い眼光で一斉に騎士っぽいオッサンを睨む。

……このニワトリ達、目付きが悪いからそれだけで怯むプレイヤーが結構いたんだが……この渋い声の騎士は面白そうにニヤリと笑っただけだった。

「ハッ、チキンの癖に良い面構えしてるじゃねぇか! ……気に入った。おいニーサン、こいつら全員俺が引き取ろう!」

マジか。

コケッコ達の様子を見ると、理解してるのかなんなのか、綺麗に整列して俺達に向かって別れの敬礼みたいなのをしていた。気が早すぎる。

とりあえず、お互い納得してるなら料金は特にいらない旨を伝えると、渋い騎士は嬉しそうに一羽一羽テイムしていった。

「よーしよしよし、立派な部隊に育ててやるからな」

「コケッ!」

「とりあえず拠点に戻るとするか……おーい、ママ!!」

ママ!?

俺達を含めた周りのプレイヤーがすごい顔で驚いていると、露店が並ぶ方から……また随分と渋い雰囲気の女性が悠然と歩いてきた。

年はオッサンと同じくらいか? お揃いの騎士っぽい装備を着ているが……こっちは肩に蛇を巻いて足下に厳つい顔の強そうな犬を連れている。

……しかも弓持ちか?

俺以外の弓手は地味に初めて見たな。

「なんだいパパ!」

こっちも声が渋いというか……ハスキーというか……

「良い面構えのニワトリ共が新入りになったぞ」

「ほーう? ……おや、本当だ。これは見込みがあるねぇ」

コケッコ達はザザザッと綺麗に整列してオッサンと女性に敬礼した。

「コケッ!!」

「ハハッ、こりゃあいい。早速帰って寝床の準備をするかい」

「ああ、鍛錬が楽しみだ。ありがとよお二人さん!」

どーも。

二人は一糸乱れぬ行軍をして着いていくコケッコ達を連れて、実に嬉しそうに帰って行った。

……感嘆したような周りの噂が耳に入って来る。

「……はー、すっげぇ渋い二人だったな。何アレ?」

「『もっふる動物園』のクランリーダーだよ。夫婦で開拓やって従魔めっちゃつよつよに育ててる」

「マジかよ」

マジかよ。

俺達以外の夫婦に地味に初めて会った事よりも……クラン名の可愛らしさに俺は驚いていた。