軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:強そうなイチゴ

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うーん、うちの拠点は適温で実に良いね。

ある意味、避暑地? もし冬も寒くならないならある意味楽園かもしれない。工夫しないと作物がおかしくなるけど。

そう、作物です。

僕はずーっと欲しかった作物があるのです。

「今日はイチゴを探しに行きたいと思います」

「お、ついに?」

そう、ついに。

……っていうのも、思い立った時には春の後半だったからさ。

イチゴって、秋に植えて春に収穫する作物らしいから。ちょっと思い立つのが遅かったかなーって後々の楽しみにしておこうと思ったんだよね。

でもこの拠点は四季が無さそうだから。

だったらいつ植えても関係ないかなって。

「ピリオの農業用品店に種あるかなぁ?」

「どうかな」

「相棒はどうする?」

「俺は久しぶりに森歩きでもしてこようかな」

「はーい」

最近色々あって御無沙汰だったもんね。

* * *

そんなわけで、僕は単身ピリオノートの農業用品店へ。

変装してない魔女スタイルのままピリオで買い物するのも久しぶりな気がするねぇ。

さてさて、種と苗のコーナーをチェック。

イチゴイチゴ~……あれ? ないぞ!?

なんで???

あ、もしかしてシーズンじゃないから表に出てないとか?

こういう時は店員さんに訊いてみるに限る。

「すいません。イチゴの種か苗ってありませんか?」

「あー、今はねーシーズンじゃないから置いてないのよねー」

ですよねー。

「在庫がゼロって感じですか?」

「普通のイチゴはゼロだわねぇ」

普通の?

「普通じゃないイチゴがあるんですか?」

「ええ。知っての通り、本国で祀っている豊穣神様はイチゴがお好きでしょう?」

初耳。

でも設定的には僕らもそこの出身なんだろうから、RPとして頷いておく。

「本国の春祭では毎年豊穣神様から新種のイチゴが授けられるんだけど。今年は『環境に立ち向かう逞しいイチゴ』だったそうなの」

「『環境に立ち向かう逞しいイチゴ』」

強そう。

「きっとこちらの開拓を応援して下さってるんだって事でね、種は来ているのよ。でも植えるにはちょっと遅いから、来年用ってことで表には出していなかったの」

へぇ~、なるほどね。

「『ストロングベリー』っていうんだけど、買う?」

強そう。

そして面白そう。

「買いまーす」

面白い変な物は大好きです。

プランターサイズの鉢と土も一緒にお買い上げ。

なお、たまたま店にいたアラビアンな雰囲気のお兄さんが僕らのやりとりを聞いていたらしくて、僕の次にお買い上げしていた。

ニッと輝く白い歯の笑顔でサムズアップされたから、僕もサムズアップ返しておいた。

お兄さんも面白い物が好きかい? お互い楽しみだねぇ!

* * *

「……というわけで『ストロングベリー』を買ってきました」

「強そう」

帰宅した僕の報告を受けて、相棒は苦笑い。

「ちょっと目を離したら変な物買う……」

「買って来た土で食用に育てるのと、ここの土で育てるのと両方やろうと思います」

「環境に立ち向かわせる気だ!」

だってせっかく『環境に立ち向かう逞しいイチゴ』って仕様なんだから、立ち向かってみてもらいたいじゃん。

「……ちなみにどうなると思ってる?」

「守り切ったら普通のイチゴ。勝ったらいつかのコケッコちゃんみたいに覚醒するイチゴ」

「……負けたら?」

「睡眠系のイチゴかなぁ?」

言うて負けないと思うけどね。

本国の豊穣神様にもプライドがあるだろうし。

異世界開拓の応援仕様で『環境に立ち向かう逞しいイチゴ』なんて明言しちゃってるんだから、土を変える程度でなんとかなる環境なんて軽いもんでしょ。

そんな感じの事を言ったら、相棒は苦笑いしたまま「んんん~」と曖昧な呻き声を上げた。

「フラグにしか聞こえないんだよなぁ」

「そぉ?」

「さすがの豊穣神もこんな異次元で農業する事は想定してないと思う」

……それはそうかもしれない。

じゃあちょっと応援しておこう。

僕はプランターに植えたイチゴちゃん達に向けて声をかけた。

「頑張れストロングベリー隊。豊穣神様の威光は君達にかかっている!」

「ひっでぇプレッシャー」

肥料とお水を充分あげて、戦う準備は万全だぁ!

「ちなみに、本国の豊穣神様はこちらです」

僕はお店の人にイチゴと一緒にもらった豊穣神様の絵姿を見せた。

「……ガチムチマッチョかよ!」

「そうだよ?」

「女神じゃないのか……」

「イチゴにチューしてる半裸の筋肉男神ですねぇ」

これは勝つるって思うじゃん?

僕は逆に相棒に訊いてみた。

「ちなみに相棒はどうなると思う?」

「えぇ……勝つんじゃない?」

うん、この絵を見るとね、負けるビジョンが浮かばないよね。