軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:この本達はなんぞや?

お嬢様に使徒をお願いできた僕達は、さくっと拠点に戻って来た。

なんと言っても、今の僕らにはやる事があるからね!

救出した本の確認という大役がね!

わーい、ファンタジーの本だー!

「早速作業に入っていいですか!?」

「好きにしなー」

お許しが出たので好きにすることにする。

まず、何はともあれ仕分けがしたい。

救助する時に軽く見て気付いたんだけど。回収してきた本達は、読めない言語で書かれた物がすごく多い。

……僕が日本語しか読めないとかいう問題じゃないよ? いや僕は日本語しか読めないんだけど! リアル外国語技能が死んでるんだけど! ネモの名前のラテン語とかは、厨二病がハッスルして調べた内容がたまたま頭に残ってただけなんだけど!

……例えばこの本は、文字が全部マッチ棒人間で書かれています。有名推理小説かな?

そしてこっちの本は、丸と三角を組み合わせた見た事の無い文字で書かれています。

さらにこっちの本は、楽譜みたいに横線の上に色んな記号がピコピコと高さを変えて書き込まれています。

「……僕らの所属してる設定の国は、西洋風ファンタジーのくせに日本語じゃんすか」

「だね」

「だから、この辺の本はさらに違う異世界の本って設定なんじゃないかなって」

例えば……これは完全に僕の想像だけど。

あのぼんやりした使徒ちゃんが、本を……ようは知識とか文化を滅ぼす担当の子だとして。本人の意思とは関係なく、この世界で唯一の図書館の裏側に配置された。

で、他の使徒はこの世界をメインターゲットにはしつつも、ちょっと出張した適当な世界で本を見つけたら、全部ゴミ箱に捨てるみたいにして使徒ちゃんの所に放り込んでたんじゃないかなって思ったのだ。

本棚とか、雑に積まれてたからね。

「それをまるっと持ってきたら、まぁ知らん言語の本もあるよねっていう」

「なるほど。じゃあまずはそれを分ける感じ?」

「そう」

暇を持て余した相棒にも手伝ってもらって、二人で軽くパラパラと中をチェックして、本を言語別で大まかに分類する。

「……相棒、これアルファベットなんだけど、英語かな?」

「どれ……たぶんドイツ語じゃない?」

「ひぃん……」

見よ、これがリアル外国語技能が死んでいる人間の実力っ!

学校の授業はどうしていたんだって? 何年前の話だと思っているのかね。学生時代が終了したと同時に全ての外国語技能がキレイさっぱり抜け落ちたとも!

スマホを! スマホをください! カメラ翻訳機能が欲しい!

……なんやかんや時間をかけて、本はとりあえず『日本語の本』『外国語っぽい本』『わからん文字の本』の三つの山に分けられた。

「で、ここからさらに『文字が消えかけて読むのが困難な本』と『くっきり読める本』の二つにわけます」

「はい」

つまり全部で六つの山に本は分けられた。

一番多いのは『わからん文字』で『文字消えかけ』の本。これが四割近くを占めている。

次が『わからん文字』で『くっきり読める本』。これは三割くらい。

残り三割の内、二割は『外国語っぽい本』で、日本語の本は一割。

そこからさらに『くっきり読める本』をピックアップすると……なんという事でしょう。たったの五冊ではございませんか!

「少なっ」

「悲しいね……」

それでもね、焚書を免れただけ御の字ってものよ。

「その五冊は何の本?」

「えっとね……」

まずは一冊目……『高貴なる宮廷昆虫料理』

「……マニア向けの料理本かな?」

「または、昆虫食が好きな民族が異世界にはいるのかもしれない」

ああー、ありそう。

続いて二冊目……『戦場の踊り手~華麗なるステップは無限の力となる~』

んん? タイトルじゃわからん。

パラパラと軽く流し見る……図解入りの踊り指南書? いやでもこれ、踊りのステップしつつ戦闘してるっぽいね?

「……もしかして、ダンサー系スキルとか職業とかの指南書?」

「へぇー」

そういえば演奏系職業はいるけど、ダンサー系は聞いた事無かった。

これは喜ぶ人がいるかもしれないね。

次、三冊目……『浮遊大陸の伝説』

「ん~……たぶん昔の冒険家が書いた冒険記かな? 挿絵入りで普通に面白そう」

「読み物枠か」

そして四冊目……『花の栽培と品種改良』

「……これは論文系かな? 魔法を使った品種改良の事が書いてあるっぽい」

「農家向けだね」

農業に力を入れてる開拓勢は喜びそう。

最後の五冊目……『神の傑作たるヤーンボールシープ』っ!?

「出版が『ヤーンボールシープ愛好会』だ!?」

「ちょ、よもやの!?」

「待って? これが『滅び』に焚書される寸前だったの面白すぎるんだけど!」

「『ヤーンボールシープ愛好会』の過激派は人知れず『滅び』と戦っていた……?」

「そんな馬鹿な!」

思わぬ伏兵に二人で盛大に噴き出して笑った。

ひとしきり笑い転げて……ある可能性に思い至り、スンッと真顔に戻る。

「ねぇ……この本寄贈したらさ、ピリオノートのNPCにヤーンボールシープ愛好会の過激派が誕生したりすると思う?」

「……しない、とは言い切れない」

なんて扱いに困る本を手に入れてしまったんだ!

「だからって、誰かの趣味を全否定するのはよくない」

「まぁね……でも過激派はよくない」

「それはそう」

散々悩んで、とりあえず中身をきちんと読んでから判断する事にした。

「僕が過激派になりそうだったら止めてね……」

「なる可能性があるんだ?」

羊は可愛いからさ……可能性がゼロとは言い切れないよ。