軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:扱いに困った

本の救出完了ー!

……頑張った。僕らは頑張ったよ。メインで頑張ってくれたのはもちろん相棒だけどね。居間の片隅に本の山ができた。

さて、謎の鏡の向こう側で消えかけてた本を回収したら、いよいよ使徒とやらの対応をしないといけないね。

僕だって何も考えずに本の受け取り作業だけしてたわけじゃない。

使徒がいるって聞いてたから、何をすべきなのか考えながら作業をしていたよ。

とりあえず、またピリオに転移して、図書館へ。

鏡をノックして向こう側へ移動したら、急いで本棚の上に避難する。

(戻ったよ、お疲れー)

(お疲れ。使徒も動きは無いよ)

そう、僕らが本を回収している結構な時間の間、使徒はずっと微動だにしなかったらしい。

(使徒について、考えた事があります!)

(はい、どうぞ)

(こんな近くで動かないなら、どうすべきかは何種類かパターンがあるかなって)

(ふむ)

まず大前提として、【滅びの使徒】はこの世界を滅ぼそうとしているって事。これは忘れちゃいけない。

(まず、今は寝てるだけで、ちょっかいかけたら爆発するタイプ)

(爆発しちゃうかぁ)

比喩ね! 爆発は!

(次は、力を蓄えていて、時が来たら爆発するけど、今の内にタコ殴りにすれば楽勝なタイプ)

(なるほど)

時限爆弾的な。ギミックとしてはよくあるよね。

本を髪から吸収とかしているんだとしたら、この可能性は高いかもしれない。

(……で、最後は……僕の願望が大いに入ったメタ読みになるんだけど……何か事情があって使徒をやってて、説得が出来るタイプ)

ボスポジションの数が多いとたまにいる。辛い過去があって世界の敵になってて、説得に成功とか、こっちが何か願いを叶えたりすれば、こっちの味方になってくれるやつ。

(ふむ、なるほどね)

相棒は僕の考えを聞いて、口元に手を当てて少し考えた。

(……まず、爆発した場合を考えよう。その場合、たぶんピリオノートがただでは済まない)

(だねぇ)

(そんな大きなイベントなら、俺達二人だけで進行できるようなモノじゃないと思う)

(確かに!)

レイドボス規模になるだろうしね。

ここの運営は割と有情な印象だから、取り返しのつかない選択の前にはちゃんと警告が出ると思うし。

(最悪、進行したとしても、レイドバトルの参加者が集まる猶予は貰えると思う。だから……話が出来るのかどうか、確かめてみても良いとは思うよ)

(おおー、じゃあ……行ってみようかな)

(ただ、どうやって近くに行く?)

(大丈夫、ちゃんと考えて来た)

籠のペンダントに入れたネモに呼びかける。

「おいでネモ、足場になって」

ケタケタ、ケタケタ

幽かな笑い声を響かせながら、コウモリの群が粘液の少し上に道を作った。

(なるほど)

(じゃあ行ってくるね)

ネモの足場は、踏むとなんだかふわふわする。重力が半分になったみたいな感覚。オバケになると、もしかしてこんな感じなのかな。

現実味のない歩みでふわふわと本棚の間を抜けると、真ん中の粘液の中にペタンと座り込んでいる使徒の姿。

……本当に動かない。

名前とかレベルは……?

??? Lv??

……ダメだね。

たぶん、女の子かな?

俯いた顔は見えないけど、水晶片が刺さってる胸元は膨らみがある。

……話しかけて、いきなり襲いかかってきたりしませんように。

「……もしもーし?」

……動かない。

呼吸、してないように見えるんだよね。

まさか死んでたり、する?

ゼラチン質の長い長い髪が体をほとんど覆ってるから、触れる所が正面しか無いんだけど……髪の間にそっと手を差し入れて、頬をピタピタと叩いてみた。

あ、ピクッと反応した。

……ゆっくりと、顔が上がる。

目が、いつかの使徒と同じ。

ガラス玉みたいな、瞳のない目。紫色の眼球。

「……大丈夫?」

……つい、安否を訊いてしまった。

だって、前にピリオに来た使徒とテンションが違いすぎるんだもん。

使徒はぼうっとこっちを見ているだけ。

瞳が無いから、焦点があってるかどうかもわからない。

「……えっと、あなたは誰?」

「……………………だ……れ……?」

お、喋った。

「あなたは、なんて名前なの?」

「………………」

……意味がわからないみたいな雰囲気で沈黙してしまった。

困ったなぁ……僕は本棚の上でボウガンを手に成り行きを見ていた相棒へ振り向く。

(どうしよう? これはまさかの心が壊れかけてるタイプかな?)

(あー……自分の心ごと滅ぼしてるみたいなやつ?)

(そうそれ)

こういうタイプは、じっくり時間をかけて心を癒すのが定石だよね。

ただ……

(僕は長期カウンセリングとか向いてないであります!)

(俺もちょっと……そういうのはなぁ)

マイペースと人嫌いには不向きなクエストですねぇ!

でもこのまま放っておくのは良心が咎める……

(……こんな時こそ、同盟に相談してみるか)

(それだー!)

ナイス相棒!

困った時の集合知だ!

七人しかいないけど!

とりあえずリアルが晩御飯の時間だから。

一回落ちて、色々済ませてからチャットしようね。