軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:予想通りに予想外

今日の僕らは変装無しでピリオに転移。

なんだか素の状態で歩くのは久しぶりな気がする……そんな事ないかな? どうかな? パン屋さんで御祝儀ジャムパン買ったのは覚えてる。

なんだかんだMMOらしくクエストに精を出してたからねぇ。

降り立ったピリオノートは、やっぱり夏らしく暑かった。

とはいえゲームだから、湿気の少ない爽やかな暑さ。汗の乾かない不快な暑さじゃない。

カレーとか、あれば流行るんじゃないかな? そんな感じのカラッとした夏が演出されている。

とはいえ暑いものは暑いから、相棒はげんなりした顔。

暑さ対策の装備とかあるのかな……あればちょっと欲しいかも?

手を繋いで、のんびりと緑の多い地区へ向かう。

今日も二人きりのデートだよ!

ネビュラもお留守番。呼べばすぐ来てくれるしね。

一緒に入植記念公園の隣の図書館に到着。

……おお、涼しい。

相棒もほっと一息ついた。

図書館の中は明らかにひんやりしている。

クーラーみたいな魔道具とかがあるのかもしれないね。

まずは司書さんに、【光魔法】についての本について訊く。

「【光魔法】の本は書庫にあります。【光魔法】を習得すると【闇魔法】は習得できなくなりますが、よろしいですか?」

「大丈夫です」

うっかり知らないで読んで習得しちゃうのを防ぐために、こうやって司書さんで確認が入るんだって。

出してもらった本は、他の属性の本と同じく大判で、分厚く見えるけど羊皮紙が厚いだけの見た目だけ豪華本。

サラッと読んで、サクッと覚えた。

「さて……じゃあちょっと色々見てまわるね」

「はいよ」

ここからはめくるめく趣味タイムですよ!

では早速!

「【解析】」

「待って?」

何故か直後に相棒からストップがかかった。

「なんぞ?」

「いやなんで急に【解析】した?」

「秘密の本とか秘密の部屋とかないかなって」

だって図書館ですよ!?

ファンタジーの図書館なら隠し部屋のひとつやふたつあるもんでしょ。

そう言うと、相棒は苦笑いを浮かべた。

「そっかー……うん、好きにしなー」

「うん」

さてさて、【解析】を使った目で見ると……図書館に一箇所、すごく気になる所があった。

「……んん?」

魔力のカラフルサーモグラフィーで……やけに色が無い所。

【解析】は、生きてる人とか魔法を使ってる物が強く光る。

でも、特に魔法が無い家具や道具も、うっすらと属性の色はついて見える。

……なのに、図書館の奥にある1枚の鏡のあたりだけは、不自然なくらいなんの色もついてなかった。

僕が眉を寄せて歩き出すと、相棒も後からついてくる。

「何かあった?」

「たぶん?」

鏡の前に立つ。

……僕、鏡あんまり好きじゃないんだよね。ホラー要素を感じるというか、急に写ってる自分がニヤーって笑ったらどうしようっていう恐怖がついてまわるというか。

「なんか、鏡のあたりだけ属性の色が無くて」

「鏡?」

ちょうど司書さんからは見えない位置の鏡。

ちょうど顔が収まる位のサイズの正円の鏡が、彫刻を施された壁に埋め込まれている。

「なんだろう?」

触ってみるけど、特に何も無い。

鏡といえば……反射とか?

そう思って【光魔法】とか【闇魔法】とかを照射してみるけど、特に何も無し。

「……でもなんか、鏡が穴になってるみたいに、魔法が落ちていってるように見えたよ?」

「穴?」

僕の言葉を受けて、相棒が鏡の表面を軽く叩いた。

──コンコン

ノックみたい。

なんて思ったのも束の間。

僕らの視界は、一瞬で鏡に吸い込まれたみたいにぐわんと動いて立っている床の感覚が無くなった。

「っ!?」

「わわっ!?」

バランスを崩しかけた僕の手を、咄嗟に掴んでくれた相棒の手に支えてもらって。

──ドプッ

粘着質な音と一緒に僕らは何処かに立った。

「え、何? ここどこ?」

「まずい、どこか上がる所!」

「えっ」

床一面に広がる粘液。

そこに足をつけて立っている僕らは、HPがガリガリと削れている!

周りを見る。

周囲には、倒れて折り重なる大量の本棚。

二人で慌ててその本棚に上がる。

「危なかった……」

「回復……あ、どうせなら魔法でやってみよう。【グロウクリエイト】」

「……微々たる回復量」

「レベル上げないとダメだねぇ」

さて……ここは何なのかな?

「普通にトラップだよね。ダンジョン?」

「……かもしれない。だから図書館は個別フィールドだったのか?」

なるほど? その可能性はあるよね。

とりあえず、僕らはどうやら大正解を引いたっぽい。

本棚が積み上がる空間は暗くて、【夜目】があるから辛うじて見えるけれど見通しが悪いから細かい部分がわかりにくい。

床がこれじゃあ探索も大変だなぁ……とりあえず灯りつけたほうがいいかな?

なんて思って「魔法で灯り……」と言いかけると、警戒モードの相棒が「シッ」と人差し指を口元に当てて耳を澄ませていた。

(……【感知】に気配が引っかかってる。何かいる)

(!)

(とりあえずネビュラ呼ぶわ)

(オッケー)

……ヤバい、今更ながら怖くなってきた。

薄暗いし、鏡でどうこうとか怪談の定番だし……え、何かいるってオバケじゃないよね??

と、とりあえずインベントリから杖出しておこう。

今日はフッシーもコダマ爺ちゃんも置いてきちゃったよ……連れて来たのは、体験させてみようと思って首飾りの中に入れてたネモだけ。

……怖いのが出てきたらどうしよう。

とりあえず、ネモにデカい拳になってもらって殴ればいいかな……?

僕がひっそりとホラー怖いモードに突入していると、相棒に呼ばれたネビュラが現れた。

「ネビュラ、ここが何処だかわかるか?」

「……わずかにズレた場所ではあるが、何の意図を持つ場所かはわからぬ。だが主よ、決して床の液に触れるでないぞ」

グルル……と喉を鳴らして、ネビュラは粘液を睨みつける。

「これは『滅び』の一欠片。ここには我々の敵がいるぞ」

『滅び』……ってことは、ホラーじゃない!

最初に粘液に着地して危なかった事を、相棒から聞いたネビュラが狼狽える横で。

僕は萎れかけていた心が蘇ったので、丸まっていた背筋を伸ばした。