軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:奈落とは何か

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今日の僕らは、異境同盟の皆と一緒に奈落制圧戦です。

「僕らヘルモード生き残れるかなぁ?」

「どうかな……?」

あんまり自信は無いけど……まぁ原因は僕らだからね、やれることをやろう。

そう思って消耗品なんかの準備をしていた時。

同盟チャットに書き込みが入った。

夾竹桃:あ、言い忘れてたけどー

夾竹桃:奈落って、長時間いるだけで精神デバフかかるからー

夾竹桃:対策できるならしてきてねー

「早く言って???」

「ウサギの出番か……」

箪笥の肥やしになりかけていたデバフ対策ウサギアクセサリーを引っ張り出して、集合場所へ。

今日の集合場所は、昨日登録したラウラさんの拠点『神域の前庭』

到着すると、既に全員集まっていて……なんだか頭を抱えていた。

「精神デバフは予想外!」

「わ、私、デバフ対策装備は持ってないです……」

「一応精神高ければなんとかなるけどー?」

「精神は切った!」

「私も精神は低いのよね……」

ありゃりゃ。

でも皆、意外と精神デバフ耐性装備って持ってないんだね?

まぁ必要にならないと調達しないか。

なんて思ってたらカステラさんが僕らのウサギ襟巻を見た。

「……今日はペアルック? でも白いモフモフはユーレイさんの黒い装備には浮いてない?」

「あ、これ精神デバフ耐性装備なんで」

「えっ!?」

【ふわふわ護りのウサギ襟巻】…精神+3

うたた寝ウサギの毛皮と尻尾で作った刻印付きの襟巻。

精神異常耐性が上昇する。

製作者:キーナ

「めちゃくちゃ蝶の山向け装備じゃん!」

「蝶の山用に作ったから」

「……素材ってすぐ手に入る?」

「在庫あったっけ?」

「ジャック達が暇つぶしに狩ったのがあるはず」

「お宅らのマップの素材かーい!」

僕は一旦拠点に戻って、ジャック達に一応許可を取ってうたた寝ウサギの毛皮と尻尾を持ってきた。

「全員分余裕で有るね。全部お揃いの襟巻でいい?」

「とりあえずいいよ」

「これで足りなければ頭装備などを作らないといかんだろうからな!」

「素材おいくら?」

「今回はいいよ。ほぼほぼ僕らが原因なんだし」

「じゃあゴチになりまーす」

「あ、ありがとうございます」

【裁縫】持ちのアルネブさんと手分けして製作。

異境同盟は、ふわっふわのウサギの襟巻集団になった。

……うん、ド根性さんだけ相棒とは別ベクトルで襟巻が浮いてるなぁ。タンクトップに毛皮の襟巻はとってもミスマッチ。

準備が出来たところで、夾竹桃さんの招待で奈落に出発だー!

* * *

「暗い暗い」

「何も見えない」

「ちょっと待ってね……はい」

星屑のランプに照らされた転移先は……テラテラと不気味に濡れ光って見える血の色をした岩壁の洞窟の中だった。

どう見てもホラゲーの背景だよ。

「ようこそ奈落の一丁目へー」

夾竹桃さん曰く、ここは現状把握してる中では、奈落で唯一の安全地帯らしい。

「なんか触ると死ぬ水がすごい高い所から落ちてきて滝になっててさー。ここはその滝の裏にある横穴なんだー」

死の海の水ですねわかります。

入植開始で最初にこの横穴に出た夾竹桃さんは、滝の水が一滴顔に跳ねただけでHPがゴリッと減って。これはダメだと思って、すぐに穴の中に戻って転移オーブを置いたらしい。

それからはピリオ周辺でのレベル上げを併用しながら、少しずつ調査を進めてきたんだとか。

「そもそも奈落って何なの?」

「知らなーい、そこのオッサンも知らなかったみたいだしー」

「オッサン?」

夾竹桃さんが指した穴の隅には、小さくまとめられた……人骨が。

「えっ、人骨!? このゲームで人骨!?」

「どちらさまだ!?」

「なんかねー、呪術を極めようとして異世界からやってきてー、帰れなくなって死んだっぽいー」

「えー? ……ってことは、王国の開拓団とは何も関係ない、のか?」

「無いっぽいよー」

よくある『遺された手記』的なアイテムを人骨から見つけて、夾竹桃さんはそれを読んだ事で呪術師になったんだって。

「……もしかして【死霊魔法】でこの方の霊を呼び出したらお話聞けたりするのかしら?」

「ええー、ホラーは怖いからやりたくないなぁ……」

「ネクロマンサー系なのに!?」

人間のオッサンが僕ナイズされたところで、可愛くなる気がしないし。そもそも知らないオッサンを使い魔的なのにしたくない。

とりあえず今はオッサンは脇に置いておく。

「……そもそもさ、奈落って何なの?」

「さぁー? 人骨のオッサンもその辺理解する前に死んでるっぽいからなー」

その疑問に反応したのは、相棒の傍らに控えているネビュラだった。

「ふむ……説明が必要か?」

「え」

「そちらの精霊さん、知ってるの?」

「無論。余は死の狼精霊ゆえ」

ネビュラは許可を取るように相棒を見上げる。

まぁ、この流れでダメって言うわけないよね。相棒はこくりと頷き返す。僕らも普通に気になるし。

「まずこの世界の生き物は、死ぬと『死の海』へ流れて来て、魂が生まれ変わるのに不要な物を洗い流す」

「不要な物?」

「生きるための体と、未練や悲嘆等の次へ向かう妨げとなる悔恨の『情念』よ。それらを死の海で溶かし、洗い流すのだが……強い情念は曖昧になっても消滅せんのでな。捨てるのだ──」

──奈落に。

「すなわち、ここは死したモノの悔恨が吹き溜まる場所。捨て場、掃き溜めと言っても良いやもしれぬな」

「埋め立て地かよー」

「焼却処理もしてないみたいだから、どっちかと言うとただのゴミ箱」

なかなか酷い場所だぁ。

そりゃホラーな雰囲気にもなるよ。

「あ、あの……洗われる魂さんは、未練とか捨てられるの、い、嫌じゃないんですか?」

「捨てたくない者はそもそも海に来ることを拒否して気が済むまで死霊として過ごす。……まぁ、異世界から来たばかりの魂には勝手がわからんだろうがな」

そうだね。

カラスちゃん達は、たぶんわけがわからないまま海で洗われてたと思う。

「ここの未練達はどうなる!?」

「どうもならぬ。ここに積み上がるだけよ」

「いっぱいになって溢れたりはしないの?」

「ここは無限に生まれ続ける『生誕』の神の世界ぞ。奈落も無限に広がり続ける故、何の問題もない」

……うん、この世界の魂にとっては、これが当たり前の事なんだろうね。

未練の部分を剥ぎ取って捨てて、その未練がどれだけ苦しんでも。

大本の魂は生まれ変わって次の幸せに向かってるからいいっていう。そういう考え方なんだと思う。

微妙に納得いかない感じの空気の中。

最初に立ち直ったのは、なんとなく渋い顔になってたカステラさんだった。

「……色々気になるけど今はいいや。もしかしたら何かのクエストがある話かもしれないけど。まずはとにかく使徒の結晶をなんとかしないと」

「……それはそうね」

奈落関係は当初の予定を完遂しないと何も始まりようがない。

一同、それはそうと気を取り直して、まずは外を確認してみる事にした。