軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:精霊郷

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休日二日目の昼過ぎ。

キークエストの開始から一日経って、早速リベンジ蛇戦に乗り込んでいった戦闘メイン勢からスレに情報が出てきている。

クエストの場所は『緑の蛇精霊の精霊郷』

これは精霊の隠れ家的な専用フィールドで、ダンジョンと同じようにパーティ毎に生成されるから順番待ちの心配は無い。

ボスの蛇はものすごく嬉しそうに戦ってくれる上に、倒した後も緑の蛇精霊がヘビもプレイヤーも回復してくれるので、勝敗に関わらず何度でも挑戦出来るらしい。

なのでボスとしてはレベルが高いし前よりも強くなっているが、強いプレイヤーとパーティを組み、その補助をする事でクリアする事は可能だそうだ。

ただ、安地で何もせずに見てるだけってのはクリア扱いにはならないとの事。

注意が必要なのは、前回……初めてのピリオ防衛の時に蛇に直接ダメージを与えたプレイヤーは、より難易度の高い挑戦を選ぶ事が可能らしい。

ただ選ぶ時に蛇と蛇精霊が『やるよな? 当然本気でやるよな?』みたいな圧をかけてくるそうで。実質 YES or YES。

ガルガンチュアさんのクランとナムサンさんのクランは死闘を経験してきたとか。

……それ、俺達も該当するな?

これはまずい。

特殊な要素を持っているとはいえ、与ダメトップ争いをするようなプレイヤーほど俺達のレベルは高くない。

だからって、『はよ帰ってこい』って花を渡した俺達が、参加を見送るのは違う。

なんだかんだ公式サイトに載っている討伐数は、クリアに必要な分の3分の1まではもう来ているから、3日か4日くらいでキークエストは終わるだろう。それなら、まだ人の少なそうな平日昼間の今日のうちに顔を見に行っておきたい。

でもむざむざ負けるつもりもない。

「……仕方ない、どうせ専用マップだ。久しぶりにアレ使うか」

準備をするため、俺はネビュラを呼びよせた。

* * *

準備を整えて、変装もして、俺達は真っ直ぐに最寄りの街のサウストランクへ転移する。

メンバーは俺と相棒、相棒の杖にはフッシー、それからネビュラに、ジャックとデュー。

さすがに体を得たばかりのマリーにいきなりボスはあまりにも酷だから、コダマ爺さんと一緒に留守番だ。

霊蝶をキラキラした目で見てソワソワしていたのが若干不安だが……まぁ、さすがに食べたりはしないだろ。

『緑の蛇精霊の精霊郷』は、サウストランクからさらに大森林を歩いて南の方角。

さすが話題沸騰中のキークエストの最寄りだけあってプレイヤーっぽい人がそこそこいる。

向けられる視線をスルーしつつ街から出て森を進む。

さすがにネビュラに四人乗りは無茶だから徒歩になったけど、そう遠くない所で案内役の小さな蛇が出てきた。

後に続くと、森が少しだけ開いている場所に出る。

……うん、人が多いな。

平日の昼間だっていうのに意外とそれなりの人数がそこらへんにいる。これ夜になったらもっと多いんだろうな……昼でよかった。

チラチラ見られるのも鬱陶しいからさっさと移動しよう。

広場中央には棘だらけの……蔓薔薇? が円を描くように生えている。

この円に踏み込むと……緑色の光に包まれて、俺達はイベント会場へ移動した。

「……フェアリーサークルみたい」

「まぁ、似たようなもんなんじゃない?」

「精霊郷はあのように不自然な正円が入口になっているものなのだ」

不思議そうに蔓薔薇の円を見る俺達に、ネビュラが補足をしてくれた。

「ネビュラの本体にもあるの? 自分の精霊郷」

「無論」

「俺、そこに行かなくても本体に会ったが?」

「あの時は……この世界にいないはずの人の子がいる上、死の海に近づいて来た事に驚いてな……そのまま死するのを見送るのはさすがに忍びないと思って飛び出したのだ。杞憂であったが」

そんな事もありましたね。

ここの持ち主は緑の蛇精霊。

頭に『緑の』とつく精霊は、草と木の属性の精霊だとネビュラに聞いた。

だからだろう、フィールドは鬱蒼と生い茂った深い森の中。

背の高い木々に陽の光を遮られた薄暗い空間は、地面に降り積もった落ち葉とシダがあるだけで、蔦が蛇のように巻き付く柱のような幹の他は不思議と見通しがいい。

……そんな風に周囲を観察していると、森の向こう側の緑がずるりと動いた。

一瞬茂みに見えたそれは半透明の巨大な蛇の胴体で、徐々に迫ってくる壁のような胴体に追い立てられるように移動すると、蔓薔薇の円は胴の下敷きになって触れられなくなる。

戦いが終わるまで帰れないって事だな。

全員が武器に手をかける。

蛇精霊の体に囲まれた戦場に、滑るように近付いてきた大きな姿。

「あ、久しぶりー」

──シャアアアッ!

気の抜ける相棒の声かけにも、気合充分な威嚇で返してきたのは。初回ピリオ襲撃のボスであり、俺達の拠点に骨だけになった姿で襲いかかってきた大きな蛇だ。

そしてもうひとつ。

「ハハッ、活きのいい人の子らだ。よく来たな」

木々の隙間の向こうに、大蛇よりも遥かに大きな蛇の顔。周りを囲む、蛇精霊の冷たい目がこちらを見ていた。

「お主らだな? 妾の眷属が世話になったというのは。なれば当然、眷属の真価をこちらの心尽くしとして受けとってくれるでおろう?」

──キークエストを高ランクモードで受注可能です。

──受注しますか?

「よもや断ったりせぬよなぁ?」

──シャー!

選択肢出てる時に畳み掛けてくるな。

なるほどこれがYESorYESか……蛇二匹からの視線が強い。

断ったら問答無用でたたき出されそうな雰囲気がある。

「いいよー、よろしくねー」

予定通り、相棒が緊張感の無い承諾の返事をすれば、蛇二匹は若干呆れたような空気になった。

「ふん……二度も眷属を退けたと聞いたが、どうやら運が良かっただけのようだな」

蛇精霊の目が赤く輝くと、ボスの大蛇は身を震わせて歓喜の声を上げた。

──シャアアアアアッ!

「精々無様に足掻いて楽しませてみせるがよい」

さて、それじゃあやりますか。