軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:あっちこっちからお手紙

なんだかんだゲーム内で朝からお昼過ぎまで訓練を堪能したジャックとデュー。

僕はそれを眺めながら刺繍したり、相棒も眺めながらスレ見てたりと、のんびりした時間を過ごしてた。

でも、そろそろ解散のお時間です。

「また遊びに来いよー」

「ウン! またネー!」

「本日は有意義な時間をありがとうございマシタ!」

すっかりお友達になったみたいだから、今度はイベントとかも一緒に参加しようね。たぶんあの人たちは前線に行けば会えると思うし。

ガルガンチュアさん達は闘技場ロビーに出た所で怖い顔した人に捕まってた。

ロンドンがどうこう考察がどうこう聞こえた気がしたけど……なんだろね?

「せっかくだから、少し街見ていく?」

「見たイ!」

「是非ニ」

不死鳥の間の時みたいな出待ちは無かったから、そのまま歩いて闘技場を出る。

まだ夕方って程の時間じゃないから、ログアウトまではもう少し大丈夫。

パン屋さんとかジャック連れて行っても大丈夫かなー、なんて考えながら防壁の扉に向かうと……

……扉の傍に、天使がいた。

比喩じゃない。

背中には灰色の翼。頭の上には光の輪。

亜麻色のロングヘアをサラリと風に流しているその女性は、どこからどう見ても天使だった。

こんな不思議な存在、それこそジャックみたいに注目の的になりそうなものなのに。

奇妙な事に、道行く人達は誰も天使に気付かないみたいに視線を向けもしないで歩いて行く。

……危ない、うっかり足を止めそうになったよ。

ジロジロ見られたらイヤだよね。

行こう行こう。

でも、そのままスルーして通過しようと思ったら、天使の方が僕らに向かって歩いて来た。

「あの……すみません」

「エッ」

そして声をかけてくるとは思わなかった!

「えっと……何でしょう?」

「あの、その……これ、良ければ読んで下さい」

深々とお辞儀をした天使ちゃんは、僕らに手紙を一通ずつ、それぞれ渡してきた。

……あの、封筒は洋風な飾りが描かれてて可愛いのに、達筆な筆文字でデカデカと『招待状』って書いてあるのはどうして?

果たし状とラブレターを足して2で割ったようなお手紙とか初めて見たよ?

「では、お時間とってすみませんでした」

「ええっと? いえいえ?」

天使ちゃんはペコペコしながら去っていく。

あー、そんな振り返りながらペコペコするから……あ、壁にぶつかった。なんで壁にペコペコしてるの? ……あ、飛んでいった。

「……すごい腰の低い天使」

「それな」

* * *

ジャックとデューを連れて軽く街を見物してから、僕らは拠点に戻って来た。

「カァ!」

「あれ、カラスちゃんいらっしゃい。お手紙?」

「カァ!」

休憩所でのんびりしてた郵便カラスちゃんからお手紙を受け取ると、一声鳴いてバサバサと帰っていく。

「またお手紙だよ。今日は何? モテ期?」

「よし、皆殺そう」

「殺意が高ぁい」

軽口を叩き合いながら、ここからさらに森で遊んで来るって言うジャックとデューと分かれて拠点に入る。

「お手紙どっちから読む?」

「カラスのでいいんじゃない? 急ぎのクエストかもしれないし」

「オッケー」

書簡を開けて、中を確認する。

差出人はやっぱりと言うか、他なわけないんだけど魔術師団長さんだった。

“『死の導き手』殿へ指名依頼”

“現時点では機密のため詳細を書くことは出来ないが”

“近々契約している精霊を伴ってこちらへ来てもらいたい。”

“魔術師団長 サフィーラ・ロズ”

「モテ期相棒だったわ。皆殺そうか」

「殺意殺意」

手紙を渡すと、眉間にシワを寄せて受けとった。

「何も分からないけどクエストが出た、『精霊との対話』だって」

「まぁ、近い内にお仕事頼むかもーとは言ってたし……受ける?」

「まぁ受ける。気になるし」

それはそう。

じゃあ気になるついでにもうひとつのお手紙も読んじゃいますか。

僕らは謎の天使ちゃんに貰った、ラブレターと果たし状の中間みたいな招待状を開けて読んだ。

“拝啓”

“ゲーム内だと言うのに日差しは徐々に強くなり、例えデジタルの世界であろうとも酷暑から逃れる事はできないのかと日々絶望を覚える今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。”

“皆々様におかれましては、ピリオノートとは若干常識の異なる土地における開拓業務であろうとも、強く逞しく美しく、ゲームマスターAIも驚き慌てふためくほどにご活躍のことと拝察いたしております。”

“さて、本日お手紙を差し上げましたのは、御相談と交流を兼ねたささやかなお茶会を開催し、皆様をご招待させていただきたく筆をとらせていただいた次第です。”

“この招待状は、協力者様のお力により、開拓において次元が少々ズレた場所に入植した方にのみお渡ししております。”

“同じような境遇の方々で集まって、お話をいたしませんか?”

“お名前、外見、入植地等の公開は任意とし、お互いに強制はしないこと。強引な勧誘を行わないこと。これをルールとしたく思います。”

“つきましては、過去に開催されたユーザーイベントの仮面フリーマーケットにて使用された覆面装備が適当かと思いますので、そちらをご着用ください。もしもお持ちでない場合には、全身が隠れる装備をお召しになっていただければと思います。”

“開催は次の土曜日。リアル時間で夜9時頃にピリオノートの転移広場にて集合し、そこから会場へご案内する流れを予定しております。”

“ドレスコード厳守の上、必ずこの招待状をお持ちください。”

“現実世界の暑さも厳しき折柄、VR中の気温管理に不具合がでない事を祈りつつ、皆様の御参加を心よりお待ちしております。”

“敬具”

「……長い!!」

「なんだこの……何?」

NPCの依頼状より本格的な『お手紙』が来ちゃったよ。

一瞬ここがゲームだって忘れそうになったわ。

「つまり……『今度の土曜日夜に、変な所に入植した人同士、ショッ○ースタイルで集まってお茶しようぜ』って事でいいんだよね?」

「いいと思う」

それだけの事にすごい遠回りをした気分。

まぁでも……手紙の形式はともかく、問題はこの御招待をどうするか。

「どうする? 行く?」

「まぁ、変な事は書いてないし、行ってみてもいいんじゃない」

まぁね。渡してきた天使ちゃんも気になるしね。

よく僕らのこと見つけたなぁ〜って思ったけど、ジャックを連れて歩いて目立ってたから、それを聞きつけて闘技場前で待ってたのかな?

……いつから待ってたんだろ? それに僕らが風切羽で直接帰還してたら待ちぼうけだったのかな?

腰の低い天使ちゃんを思い出すと、なんだかやるせない気持ちになった。

「じゃあ行ってみることにしようか……テーブルマナーとか要求されないといいけど」

「さすがにそれは……いやでもドレスコードとか書いてあるな……」

テーブルマナーにうるさいショッ○ーとか想像するとちょっと面白いけどね。