軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:出頭命令

出頭命令って単語の響きに一瞬色んな覚悟を決めかけたが、どうやら犯罪者として即捕縛されるわけじゃないらしい。

なんでか俺達より取り乱したお嬢様がβ勲章見せながら騎兵を問いただした所によれば、『とりあえず重要参考人』として『話が聞きたい』って事らしかった。

(カラスちゃんの事くらいしか心当たり無いんだよね)

(それな)

不死鳥でさえ呼び出しなんか無かったくらいだ。拠点のある特殊マップの事とか夢の牢獄坑道の事なら、もっと早く出頭命令が出たと思う。

このタイミングなら……さっき兵士のカラスとも会ったから、カラスの話だろう。

鍋を囲むプレイヤー達がなんだなんだと視線を向けてくるのに背を向けて、俺達はネビュラに乗って騎兵に同行しピリオに向かった。

……ちょっと鍋食いたかったんだけどな。

ピリオノートの城は、王族がいそうなメルヘンな雰囲気は薄い。

頑丈さを重視した石造りの、文字通り城塞だ。

兵士の案内で、正面の大扉じゃなく脇の通用口みたいなところから中へ入る。

(すごい、お城の内装めっちゃファンタジー!)

(……相棒、結構余裕か?)

(まさか。観光目線で現実逃避してるだけ)

ですよねー。

本当、観光で来たかったな。

案内されたのはかなり奥まった所にある部屋。

見張りの兵士が中に伺いを立ててから開いた扉をくぐると、窓の無い部屋に簡素なテーブルと椅子があって、そこに見た事のある人物が座っていた。

「来たか。案内御苦労、私が指示を出すまでは外で待機しているように」

散々イベントで見たから間違いようも無い。

魔術師団長サフィーラ・ロズ

俺達に出頭命令を出した偉い人、その張本人が待ち構えていた。

* * *

兵士を全員外に出して、部屋の中には俺と相棒とネビュラ、そして険しい表情の魔術師団長の4人だけ。

不用心だなと思わなくも無いが、開拓のトップを担う魔術師団長なんて肩書持ちなら、今の俺達なんて精霊がいようとも片手間で制圧できるんだろう。

「さて、今日来てもらったのは他でもない……君達が持っている、その呪いの大本の件だ」

そう言って、魔術師団長は相棒の胸元を指さした。

「まず、重要参考人として出頭してもらった事からもわかるように、場合によってはこちらの機密情報が関わる恐れが有る」

魔術師団長は「ふぅ」とひとつ溜息を吐いた。

「各所より上がっている報告から、君達がパレードの時に木の葉まみれで不死鳥を連れてきた人物であることは把握している。あの時は重要な情報を持ってきた功績もあり目溢ししたが……今回はそうはいかない。──顔を見せて、名前を名乗れ」

……さすがにこれは断れない。

たぶん、あっちもその辺を考慮して窓の無い部屋を選んでくれたんだろう。

セット装備とはいえ、一応仮面だのなんだのは自分で外せないわけじゃない。

俺達は仮面を取って、フードを後に降ろした。

「キーナです」

「……ユーレイです」

魔術師団長は頷くと、書類のような物をバサバサと取り出して確認を始めた。地位の高いNPCともなるとプレイヤーみたいに【アイテムボックス】のスキルは持っているのかもしれない。

「『キーナ』『ユーレイ』……開拓志望の冒険者。受付時に結婚手続きをした同一拠点入植者。入植先は……『特殊次元』ときたか」

ああ、やっぱりそういうのって偉いNPCはわかるようになってるんだな。

「……いいだろう。ひとまず反意は無さそうだ」

そう言いながらも魔術師団長の顔から険しさは消えない。

「では本題に入る。君達が持つ呪いのアクセサリー……その根源となっているのが何という生き物か知っているか?」

「……ホライゾンクロウ、ですよね?」

「そうだ。そしてホライゾンクロウは、こちらの世界では我々王国所属の兵士だけが繁殖・調教から運用まで全てを担っている。まだ冒険者達には、扱う許可を出していない」

魔術師団長の鋭い目が、俺達二人を射抜く。

「……どこでホライゾンクロウを手に入れた?」

その鋭さに、俺達は息を飲んだ。

「霊魂のみ呼び出したのならばいいが、もしも斥候任務についていた従魔を捕らえて危害を加えたのならばただでは済まさんぞ。まして──呪われるほどの事をしたのであれば」

……そうか、それでそんなに険しい顔をしてるのか。

そうだよな。

可愛がってる大事な生き物が酷い目にあったかもしれないってなれば、それはキレるよな。よくわかる。

もちろん機密が危なかったかもしれないっていう危惧もあるだろうけど。

「違うわ!」

重い空気を打ち破ったのは、その呪われた鳥籠から出てきたカラスだった。

「アタシ酷い事なんてされてない! この人達は色んなこと忘れちゃってるアタシの帰る場所を探してくれてたのよ!」

掠れた姿で籠から出てきてカァカァと訴える。

そんなカラスを見た魔術師団長は、痛ましげに目を細めると、険しさを変えないまま相棒に向き直った。

「その籠を見せてもらおう」

……とはいえ呪われているから装備を外せない。

テーブルを回り込んでやってきた魔術師団長に、相棒は首飾りを持ち上げて見せる。

「……『尊重』と『保護』に……『癒し』?」

中の刻印を確認したらしい魔術師団長は、表も裏もじっくり眺めて……気が抜けたように苦笑いした。

「死霊魔法は『捕縛』と『隷属』が定番だと思っていたが、欠片も無しか……なんだ、ずいぶん独特な使い方をしているな」

向かい側に戻った魔術師団長は、さっきまでの険しさが嘘のように霧散していた。

……ああそうか、魔術師団長視点だと、俺達は『仕事をしている他人の従魔を捕まえて、呪われるほどの虐待を加えた上で殺して、死霊を籠に捕縛して隷属させていた極悪人』の可能性があったのか。

それは確かに出頭命令なんて話にもなる。

もしも隷属させられているなら、カラスの証言だってあてにならないから、さっさと籠を確認したんだろう。

「どうやらこちらの早合点だったらしい。すまなかった。……では、改めて聞かせてもらおうか。一体何がどうなって、そんな状態になっているのか」

穏やかな空気に切り替わった面接室で、俺達とカラスは順を追って話し始めた。