軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ターゲット、ロックオン

俺が転生したところは魔法の力がモノを言う世界だ。

最大魔法レベルは生まれたときから決まっていて、例外はあるものの現在魔法レベルは努力次第でそこまで上げることができる。

で、俺は魔法レベルの概念とやらを視覚的に捉えられる。背中から伸びる管みたいな形で。

実のところ見えるだけじゃなく、直接手を触れることはできないが結界で覆えば動かせるのだ。

今しがたティア教授の管を一本、無理くり伸ばして地面にくっつけたところあら不思議。なんと現在魔法レベルがひとつ上がったではないか。

「いきなりレベルが上がったから何かと思えば……やるなら先に言ってよ! てかワタシを実験台にしないでよ!」

ティア教授がぷんすこ怒っていらっしゃる。

「まさか成功するとは思わなかったもので」

「あのね、成否の問題じゃないのだよ。魔法レベルなんていう、この世界に住む者の根源的な部分をいじくり回すのって只事じゃあないんだからね。実際ワタシ、今ものすごく体が熱くなってるしそのくせ寒くて震えが止まらないし頭はぐわんぐわんしてるしどうすんのこれ!?」

目もなんかぐるぐるしてますしね。

「すみません。軽率でした。でも自分にはできませんし、ギガンは全部の管が地面につながってますし、他にいなかったもので」

「反省の色が見えない!」

お怒りはごもっとも。でも反省してますよ?

「にしても、そんな副作用があるんじゃシャルたちには使えませんね」

「ふっふっふ、一度の試行で結論付けるのは早計だよ。できるとわかった以上、相当数の検証はしてみたい」

身を抱きながらぶるぶる震えつつ、顔真っ青なのにやる気満々。この人も大概だなあ。

「んじゃあ、今度は引き抜いてどうなるかを試してみましょう」

「にょほほほほぉぉおおぉおぉ!?」

今しがた地面にくっつけた管を引っ張ってみたものの、にゅるにゅる伸びるだけで終わりが見えない。

引っこ抜くのは無理っぽいな。

ちなみにティア教授は奇声を発しながら妙なダンスを踊っていた。

「だから! ワタシで試さないで!」

「ではどなたでなら?」

「そうだねぇ、魔法レベルが低いと急激な魔力量上昇に耐えられないだろうから、その意味では一般人はふさわしくないかな。現在魔法レベルが一定水準以上あって、常日頃から魔法の鍛錬を行っている者のほうが望ましい」

ふむふむ。でもなんというか、それって……。

「うん、学院の生徒がちょうどいい」

「なんで楽しそうなの?」

この人って教師だよね? 教え子を実験台にしようとかホント大丈夫?

「ま、キミの場合は仲間内で試すのは躊躇われるだろう。見ず知らずの学生に対しても負い目が生まれるかもしれない」

「そのくらいの感覚は俺にもあります」

「うん。だからね、ほら、いるじゃないか。実験台にしてもよさそうな、そこそこ以上に実力があって、多少酷い目にあわせたところで心が痛まない連中がさ」

そんな都合のいい人たちなんているぅ? と思ったのは一瞬。

「あー、いますね。自分たちの都合で世界を変革しようだなんてオモシロ……不届きな連中が」

ザ・ナンバーズ。定冠詞を付けたらいっそうオモシロ具合が増す変な人たち。

「でも、結果的に彼らの実力が上がってしまうことになりません?」

やろうとしてることは『簡単さっくりレベル上げ』なわけだし。

「それはそれでいいじゃないか。最大魔法レベルはこちらの陣容からすれば脅威となるほどじゃないし、実験で肉体的・精神的負担が軽減される術が見つかればこちらにも適用は可能だし。それに――」

ティア教授はにぃっと笑って言う。

「相手が強いほうが、あの子は〝燃える〟のだろう?」

まあ、シャルは喜びそうだな。

「でも万が一にもケガしちゃうような事態は避けたいです」

「どうにも過保護だね。ま、そこらあたりはキミが注意しておけばいいさ。これまで通りね」

そらそうなんだろうけど、油断はできないよな。

ナンバーズで一番実力があるのは『1』の人ことアレクセイ先輩だ。

魔法レベルは【30】/【37】とどちらも高い。授業で直接やりあったことはあって、そのときは俺でもどうにかなったけど、実戦では未知数だ。ライアスでも現在魔法レベルは【24】だもんな。

アレクセイ先輩は変にいじくらないほうがいい。これ以上、強くしちゃダメ。たぶん。

他の(シャルも除いた)十人は、最大魔法レベルが30前後、現在魔法レベルは20台が主でバラツキがある。一人だけ【18】とかだったのが確か……。

「ザーラなんとかいう、最上級生を知ってますか? ヤンデレ風味のドSっぽい感じの女子生徒です」

「ん~……? ああ、イェッセル侯爵のご令嬢か」

あれで伝わるとは。

「侯爵とはいっても最近は世継ぎに恵まれていなくて、力は相当弱まっているんだったかな? ワタシはそのあたり疎いのだけど、ハーフェン侯爵家とは天と地ほど発言力に差があるはずだ」

ハーフェン……ああ、貴公子パイセンの家だったな、たしか。

「ただ彼女自身は印象に残っているよ。なにせ『いい男をつかまえるために入学した』と公言している放蕩者だからね。うん、まずは彼女にしよう。けってーい」

「……嫌いなんですか?」

「いや別に。むしろ目的が明確で邁進するタイプは好きだよ。それが男漁りであってもね。ただ彼女は以前、初対面のワタシに向かって『結婚は無理そうですよねー』とか憐れみたっぷりにぬかしやがったんだチクショウ! ワタシは結婚なんてしたくないってーの!」

やっぱ嫌ってんじゃないか。

ま、とりあえずザーラ先輩にしとくか。

俺は個人的な恨みとかはまったくないので、いろいろ負担をかけないよう注意しないとな。でも結果的には魔法レベルが上がって先輩もウハウハになるんだし、いいよね?

「ふっふっふ、楽しみだねえ。まずは身ぐるみ剥がして空中に拘束し、管とやらをいじり倒してやろう。魔法の実験もできて、体中から体液を垂れ流すあの放蕩女の泣き叫ぶ様が見られるなんて一石二鳥どころじゃないぞ。やったー!」

この人を抑えるのも俺の役目らしいな。なんでこんなんが教師やってんのか、いまだに不思議な俺でした――。