軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

同級生は妹でした?

俺は自由だ。

なんやかやあって授業への参加免除を獲得し、おそらくは二年ほどで卒業資格を得られるだろう。

学籍はまだあるので学内で活動しなければならないが、大きな自由を手に入れたことには間違いない。

だから朝の遅くまで惰眠を貪ってもまったく問題ない。すでに目覚めているけどお布団の中でゴロゴロしても許されるのだ。

ちなみにティア教授の研究棟にある俺の部屋にはコピーアンドロイドのハルトC(自称)を置いている。いちおう学内にいることになってるからね、俺。

そんなわけで、辺境伯領にある引きこもりハウスの寝室で俺自身はゴロゴロしていたところ。

「兄上さま! おはようございます!」

バーンとドアが開かれて、元気いっぱいの声が脳天にキーンと響いた。

「おはよう、シャルロッテ。朝っぱらからやる気に満ち溢れてるじゃないか」

皮肉ではない。可愛い妹にそんなこと言わない。

「はい! わたくしは本日、闘志に燃えています!」

よっこらせと上体を起こし、シャルを見る。

小躯からは『すごいやる気』なオーラが立ち昇っているかのようだ。

「ん? てかその格好……」

どこかで見たような制服を着ている。背中には以前、おねだりされて作ったランドセルを負っていた。

なんかのコスプレかな?

シャルの背後からひょっこり顔を出したのは青髪の女の子。

「ハルト様、おはよう。今日は学校に行かなくていいの?」

リザは学院で俺の従者として付き従うお仕事があった。しかし授業免除となった今ではそれもなくなっている。

俺に代わってシャルが答えた。

「兄上さまは古代魔法の研究で忙しいですからね。あとでティア教授のところに行きますよ。ね? 兄上さま」

「おう?」

はっきり言ってしまえば、あんなところにはもはや用などない。だから疑問形で返したのだが、シャルは「ほらね」と満足げ。ので、否定しないでおいた。

「それでは兄上さま、わたくしは遅れてしまいますので出発しますね。また後ほどお会いしましょう。行ってきます!」

シャルは元気いっぱいに挨拶して踵を返した。

「あ、シャルロッテ様、待って。一人で行っちゃダメだよ」

リザが慌てて後を追う。

シャルのやつ、どこへ行くんだろう? あの子は城内で英才教育を受けているのだが……ああ、それか。

このところ架空組織の捜査ごっことか遺跡探索とかでサボりがちだったから、母さんに怒られたのかもしれない。不甲斐ない兄ですまぬ。

心の中で謝りながら、俺は再び布団にくるまった。オフトゥン最高ー。

「やあやあ、来たよ。ワタシがね!」

「お帰りくださいすやぁ……」

「寝言で追っ払うなんて器用な男だね、キミは」

面倒臭いがむくりと起きる。ちっちゃい眼鏡をかけたちっちゃい人がいた。

こんな幼げな見た目ではあるが、ティアリエッタ・ルセイヤンネルとかいう長い名前の、俺が学院で所属している研究室の教授だ。

「どうやって貴女がここに?」

学院との往復が可能な『どこまでもドア』は研究棟の俺の部屋だけにしたはずだが? コピーは何をやってんのよ!

「ハルトC君にキミの所在を尋ねたら、通してくれたのさ」

あの野郎、裏切ったのか! いや、面倒を俺に押しつけたのか。まあ、俺でもそうする。この人にはいろいろ俺の秘密を話してるから問題ないっちゃないんだが。

「で、何か用っすか?」

「もちろんキミを誘いにさ。授業が免除されても、それなりの実績は作らなければならない。つまりは古代魔法の研究に勤しむのがキミのやるべきことだろう?」

にやにや顔にイラっとする。俺が引きこもりたいのを知ってるくせに。

「二年もあるんですから、今からがんばらなくてもいいでしょ」

俺は夏休みの宿題は最後までやらず、重要そうなものだけを最終日に仕上げて他はスルーするタイプなのだ。

「ワタシ、かなーりがんばったんだけどなー。今回のことで、キミにはたくさん貸しを作った気がするなー。それをなかったことにするのかなー?」

「していいなら」

「ダメに決まってるよ!」

だったら押しつけがましく訊かないでよ。

「つっても、研究って何やるんです?」

「いろいろさ。キミが操る多種多様で不可思議な結界魔法はもちろん、捕まえた魔人の調査もワタシだけじゃもう限界だし、中でも一番は魔法レベルの概念に関することだね。はっきり言って二年じゃ足りない」

魔法レベルの概念って……背中から出てる細い土管みたいなやつか。魔人のこともすっかり忘れてたな。

「ま、キミの希望も尊重はするさ。場所はここでもいいんだけど……」

ティア教授は言いながら寝室を出ていく。あの研究棟みたいに散らかされては困るので、仕方なく後を追った。

リビングへ移動。

「研究するのによい場所とは言えないなあ。資料も資材も何もないじゃないか」

「引きこもるには十分です」

「その執念を研究に向けてほしいところだけど――おや?」

ティア教授は窓にべったり張りついた。

「なんかいる!? あれってナイト・スケルトン? あっちにはギガント・ゴーレムか。他にも魔物がたくさん闊歩してるけど、ここっていったいどこなのかな!?」

「説明は面倒なので端折りますが、フレイが連れてきた魔物とかが暮らしてます」

「端折らないでもらえるかな?」

面倒だが仕方がない。以前、召喚魔法で出てきた連中の話をした。

「召喚魔法陣に干渉したの? それで使役権を奪ったのか。キミ、昔から無茶苦茶だね」

またひとつ彼女の研究材料が増えてしまった。俺も手伝わないといけない流れなのかな?

「あからさまに嫌な顔をしなーい。古代魔法の研究は、キミにとっても有益だよ?」

「どのへんが?」

「自身が操る魔法を知ることは、可能性を広げることにつながる。優雅な引きこもり生活を望むなら、やって損はないはずだよ」

それに、とティア教授はにたりと笑う。

「シャル君を放っておくのは可哀そうだろう?」

「あいつは家で勉強しなきゃいけないですからね。変に付き合わさないでくださいよ」

やれやれと肩を竦めた俺に対し、ティア教授は妙なことを言う。

「なんだ、まだ聞いてなかったのかい?」

「何をですか?」

今度はティア教授がやれやれと肩を竦め、またも妙なことを言った。

「彼女、学院へ編入したんだよ。もちろん研究室はワタシのところに決めてくれた」

はて、この女は何を言っているのだろう? 俺は訝った――。