軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

その告白、聞いてもダイジョブそ?

部屋を変えたよ。

さすがにお貴族様の屋敷だ。

大小いろいろな部屋がたくさんある。そのうちのひとつ、客間みたいなとこに学院長とシヴァモードの俺は入った。

「さて、他者に聞かせられない話とはなにかな?」

この人には隙を見せてはならないので、俺は余裕綽々を装って尋ねた。

ピキーン、と。

実際に音は鳴っていないが雰囲気的にそんな感じで部屋を覆うように結界が張られた。

俺ではない。

目の前の女性がやったらしい。

「念のため部屋を魔法で隔離させていただきました。誰が聞き耳を立てているかわかりませんので」

防音だけじゃなく、ここでの会話が漏れないように魔法的な干渉がなされてるな、これ。今まで見てきた中で一番きれいな結界だ。俺ほどじゃないけど。

「ちなみに確認だが、仮に盗み聞きする輩がいたとして、そいつはどうなるのかな?」

「口封じをさせていただきます。とても不本意ではありますけれどね。方法は聞かないでください」

魔法少女パープルのときもそうだったけど、学院長って譲れない一線では容赦なさそう。本人的には最後の手段でやりたくはない、って感じだから印象が変わるほどではないけど。

ただなあ。

『いやこれワタシ、命が危なくない?』

この程度の結界なら気づかれずに隙間を通せるのよね。

「とりあえずバレないようにするんで大丈夫ですよ」

アドバイザーにだけ聞こえるように伝えてみる。

『ホントのホントに大丈夫だよね? でも学院長が何を言うのかものすごく気になるから『聞かない』って選択肢はもはやなくなっているし!』

不安は拭えないみたいだけど、相変わらず好奇心には勝てないっぽい。難儀な性格だなあ。

「どうかしましたか?」

「いや、なんでもない。で、話というのは?」

ひとまず疑われないよう会話に集中するか、と気を引き締めた矢先。

「私はヴィーイと同じく神代における三主神がひと柱。かつての名は捨てましたが、神代を終わらせた〝神殺し〟と呼ばれていました」

唐突な告白に固まる俺。

まいったな、この人って意外にも厨二病罹患者だったのか。

『なんて考えてそうだけど、これ本気で言ってるからね。にしても、なるほど。ワタシの推測は当たっていたようだ』

〝神殺し〟なんて痛々しい二つ名をすでに予見していたと?

『そっちじゃないよ。学院長がいわゆる神的な存在かもって話さ。神代の支配階層なのは驚きではあるけどね』

なんでこの人って俺の心を読んだかのように話すんだろうな。

でもかなりセンシティブな話だったのに、思いのほか冷静だな。

『ででででもどうしよう!? これマジの本気で『盗み聞きした奴は消す』案件じゃないか! ヤダまだ死にたくないよう!』

めっちゃ動揺しとる。

『だがしかぁし! 神代の魔法を直接知る貴重な人材だ。今この瞬間だけでも万を超える質問が浮かんだから訊いてみたい教えてほしぃ! でも訊いた時点で消されるどうしよう!?』

でもティア教授はやっぱりティア教授だった。

「ともかく、バレないようにするんで安心してください」

実際にバレちゃったときにどう対処するかはそのとき考えればいいのだ。

『めちゃくちゃ不安だけど今はキミに委ねるしかないか。本当に不安しかないけど』

今すぐバラしちゃおうかしら?

「続きを話しても?」

不審がられたので「どうぞ」と促す。

「私は人として生きるため、かつて自身の 権能(ちから) を超々高密度魔力体に移しました。それがオリンピウス遺跡の地下深くに隠していたモノです」

あー、なるほど。

だから例のブツを格納した〝聖なる器〟が自分のだと主張してたのか。

「証拠と呼べるものがない以上、信じていただくしかないのですが、アレは私の切り札です。ぜひとも返していただけないでしょうか」

まあ話自体はつながるから信じられなくはない。

『いいんじゃない? あんなのなくたってキミなら儀式を続けられるでしょ』

それはそう。

『勝手に持ち出したものをただ返すだけで恩が売れるわけだし、こちらとしてみれば得しかないよ』

それもそう。まあ、ゲスな考えとの自覚はあるが。

「わかった。帝国皇帝……ではないか、その体を乗っ取った魔神ヴィーイとやらから〝聖なる器〟の中身を回収したら、貴女に渡そう」

なぜだかきょとんとする学院長。

「お願いした立場でこう言うのも変ですが、信じていただけたのですか?」

「貴女の学生に対する真摯な姿勢を見ていれば、な」

それっぽいことを言うと、学院長は「ありがとうございます」と笑みを浮かべた。が、すぐに表情を引き締めると、

「もうひとつ。確認をさせていただいてもよろしいでしょうか」

なんだか苦しそうな、それでいて覚悟を決めたように、強張りながら告げる。

「シヴァ、貴方は〝神〟なのですか?」

唐突、な感じがしない不思議。

とはいえ『お前は神か』と問われたら、返す言葉は決まっている。

『冗談でも『はいそうです』なんて言わないでね? 学院長には特に』

危ない。思わず『YES』と元気よく言いそうになった。

「違うが?」

「……若干の間があったのが気になりますが、信じることにします」

学院長のジト目なんてレアなもん見れたな。

「ちなみに俺が神だった場合、どうなっていた?」

「私は〝神殺し〟。〝神〟であるなら例外なく、この世界から排除しなくてはなりません。私自身も含めて」

よくわかんないけど難儀な話だ。

学院長はどこかすっきりした微笑みを浮かべ、ピキーンと(実際に音はしてないが雰囲気的に)結界を解除した。

その絶妙なるタイミングで、けたたましいアラートが鳴った。

俺にしか聞こえないものだから、直後に無数の監視用結界を展開したことに学院長がぎょっとする。

何か言いたげだった学院長が、そのうちのひとつを見て表情を険しくした。

場所は王宮――というか離宮だ。

ちょうどシャルが急行したところ。

今まさにそこで、異様な事態が進行していた――。