軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

〝白〟をボコすんですかそうですか

「なんなの?」と俺は疑問をぶつける。

「だーかーらー、ホワイトをなんとかしましょうって言っているのよ、わたしは」

「言ってる意味はわかってるよ。ただこの状況はどういうこと?って意味で『なんなの?』と俺は返したわけだ」

静かな湖畔のログハウス。

帝国からの留学生ユリヤさんが、みんなが集まるリビングではなく俺の自室に突入してきたのはまあ許そう。

でもね、俺の惰眠を邪魔したばかりかベッドに飛び乗って馬乗り状態になるってさすがに失礼じゃございませんこと? でもって『先にホワイト 殺(や) んない?』みたいな話を唐突に切り出したから俺は困惑しているわけでしてね。

「べつにハルトは作法とかマナーとか気にしないでしょう? そもそも何度もノックしたのに反応がなかったじゃない。無視しているんだろうなあって感じたからこっちも何も気にしないことにしたの」

屈託ない笑みに怒りも行き場を失くしかけるが、俺は構わずどっこらしょと体を起こした。

「わっ、きゃっ、あははは♪」

ベッドの上で転がるユリヤ。ころころと楽しそうなのはなぜなのか。

「てかなんで俺に『ホワイトを先に倒そう』って話を持ちかけてくるんだよ」

「ハルトはブルーのサポーターだから」

「違うが?」

「もうこのやり取りって意味ないと思うわよ?」

それはそう。けど悔しいじゃないか。

「で? なんでホワイトが嫌なんだよ。べつに魔法少女を侮辱しちゃいないだろ」

見た目的にはね。ライアスだって侮辱までは行ってない気もするが横に置く。

「まあ、あいつを否定するとこっちに返ってくるからそこは見過ごすしかないのよ」

意味わかんないことを言いつつ、ユリヤはベッドの端に腰かける。

「ただこの儀式にとっては致命的に悪いことが起こると断言できるわ。これは答えなくても構わないのだけど、グリーンを退場させたのはホワイトよね?」

公平性の観点で言えば、目撃したのはシヴァモードだったのでひとつの陣営だけに情報提供はできない。まあ中身クマさん状態だったから参加者目線でもピンク以外の陣営に教えたくないんだけどね。

「……ま、そうよね。ごめんなさい、無理を言って。ともかくホワイトは早々に儀式から退場させて、しばらく監禁してちょっかい出せないようにしておかないとダメよ」

「いや監禁て」

「だって新しく『魔法少女は脱落しても儀式が続く限り身の安全が保障される』なんてルールが追加されてしまったじゃない」

「そりゃお前……てか、新ルールがなかったらホワイトを倒したあと殺すとでも言うのか?」

そんな危ない思想を持った子をシャルに近づけさせたくないのだが?

「逆よ」

ところがユリヤは呆れたように言う。

「この儀式にはホワイトを殺したい誰かがいるの。もし新ルールがなかったら、儀式から退場したあいつはその誰かに確実に殺されてしまうわ」

待ってまた登場人物が増えたんだが?

「さすがにその瞬間に立ち会える保証はないから仕方ないと諦めていたのだけど、新ルールが追加されたから猶予が生まれてしまった。そして新ルールはあくまで儀式が終わるまで。その瞬間どうなるかは想像つくでしょう?」

「こんがらがってきたなあ。けっきょくお前、監禁と言いつつ保護する、ってことか?」

「業腹だけどね。すくなくともわたしは魔法少女でいる間は魔法少女で在りたいの」

怒りではなく、どこか寂しそうにユリヤは言う。

「ホワイトを殺したがっている誰かは儀式そのものには無害よ。悪影響はないと思うわ。だから今、考えなくちゃいけないのは、ホワイト。あいつを儀式から排除すべきなの」

どうにも情報開示が足りなくてもやもやする。

ただホワイトが危険人物だってのは理解できる。あいつはグリーン――ライアスを同盟組んだ直後に騙して退場させたからな。しかも倒したあとも口八丁で騙し討ちの件をライアスに口封じさせるのに成功してたんだよな。

まあ悪者には違いない。

「それで? どうやってホワイトを退場させるんだ?」

「わたしと共闘しない? 今回限りの一時的なものだけれどね」

あー、そういう流れね。

「わたしはとにかく儀式を楽しみたいの。壊される危険があるなら早々に排除したいわ」

こいつの考えは一貫してんな。

「ひとまずイリスに話してみるか。たぶん拒みはせんだろう。んで、同盟関係にあるシャルとも一緒ってことで」

シャルもユリヤ相手なら共闘を拒む理由がないだろう。

「ええ、よろしくね♪」

ユリヤはベッドからぴょんと降りて、ドアに向けて歩いていく。

ドアを開け、出て行こうとしたところで立ち止まって振り向いた。

「そうだ、伝え忘れていたわ。わたしは今夜、パープル陣営とも話をするつもりよ。学院の闘技場であちらを挑発してね」

「寄ってたかってホワイトをつぶすのかよ」

「本当はそんなことしたくないのだけど、仕方ないわ」

「……ま、勝手にやってくれ。こっちはこっちでうまくやる」

「なんだかやる気がないなあ。ま、ハルトはなんだかんだで動いてくれると信じているわ。それじゃあね」

ユリヤはウインクをひとつ飛ばし、にこやかに部屋を出て行った。

見送り、再び惰眠を貪るべくふとんに潜りこむ。

なんか一方的に約束させられた感じだけどまあいいか。ユリヤは俺を信じて提案し、最後まで俺が味方だと疑っていなかった。

んじゃ、俺も動きますかね――。