軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

自身の存在をしめすモノ

王都中央広場から西に位置する共同墓地。

魔法少女グリーンことライアスは、ホワイトに連れられるままやってきた。

魔族との戦いで亡くなった兵士たちの慰霊碑の陰で、ホワイトが正対する。

「ここならすこしは落ち着けそうですね。改めまして、自分は〝白〟の魔法少女、ホワイトと呼んでください」

「僕はグリーンだ。こっちこそ改めて礼を言わせてくれ。マジで助かったよ、ありがとう」

「いえ、貴方はあんなところで倒れてはいけない人だ。当然のことをしたまでです」

「けど、いちおう僕らは敵同士だろ? 最終的には一人になるまで戦うんだから」

「ええ、哀しいことですが、そうですね。しかしならばこそ、自分は貴方とともに勝ち残り、正々堂々と勝負がしたい」

まっすぐな金の瞳に魅入られそうになる。

「貴方の正義は本物だ。自分の理想なのです。だからお願いします。最後に自分たち二人が残るまで、ともに手を取り合って戦いませんか?」

差し出された小さな手を見て、ライアスは感極まる。

これまで正義を張り続けてきたのは間違いではなかったのだ。

「ああ、よろしく頼むぜ」

がっちりと握手して、ここに〝緑〟と〝白〟の同盟が締結された。

「では早速ですがグリーン、まだ余力は残っていますか?」

「ん? ああ、特殊能力はもうちょい時間が必要だけど、疲れちゃいねえぜ」

「さすがは正義の体現者。しかし特殊能力が使えないとなれば、二人がかりでも少々厄介かもしれませんね」

なんの話だ? と首をかしげると、ホワイトは上空を指差した。

見る。蒼天をぐるぐると、一羽の鳥が旋回していた。

「来ます」

「ぬおっ!?」

ヒュヒュンッ!

腕をつかまれ引っ張られた。

さっきまでいたところに矢が突き刺さるや、爆発音とともに地面に大穴が開く。

「パープルか、しつこいヤロウだぜ!」

ライアスは聖剣を異空間から抜き取って構えた。

パープルは大弓を手にしたまま突っこんでくる。

直視するには露出が多すぎて視線を逸らしそうになるも、根性で敵を見据えた。

「くそっ、破廉恥な格好しやがって……」

「私だって好きでこんな格好はしていません!」

激しい衝突音。

大弓の上部分は刃となっていて、聖剣と重なっても折れないほど頑丈だ。

「ぐ、ぬおっ!」

弾かれた。特殊能力を発動していないとはいえ、魔法力の大部分を身体強化に回してなお押し負けるほどとは。

「強えな」

パープルが追ってくる。崩れた体勢では追撃を防ぎきれない。

「援護します」

白い魔法弾の雨がパープルの行く手を阻んだ。

しかし大弓を器用に振るい、ひとつひとつを確実に叩き落す。

(なんだ……? ホワイトの魔法弾って白いのに、これ、闇属性か?)

ライアスは訝りながらも態勢を整え、パープルに斬りかかった。

ぞわり。総毛立つ怖気に、足が止まりそうになる。

「うおおおっ!」

それを根性で振り払い、聖剣を振り上げた。

「その勇気、賞賛に値します。けれど――」

ふざけた仮面越しに、パープルの瞳が金に弾ける。

「ここまでです」

消えた、とライアスは錯覚した。それほど一瞬で間合いを詰められ、聖剣を振り下ろす動作を始めたその瞬間には懐に入られていた。

「かはっ……」

みぞおちに肘。

パープルは倒れてくるライアスを軽く受け止めてから、するりと彼の背後に回り、〝白〟の魔法少女へ狙いを切り替えた。

(武器を使う必要もないってか……)

力の差は歴然。薄れゆく意識の中で、流れてきたのはかつての屈辱。幼少期にプライドをずたずたにされた、辺境での一戦だ。

(ああ、なんだ……)

パープルは強い。こちらが特殊能力を発動しても届かない域だと感じた。けれど――。

( あいつ(・・・) に比べりゃ、ぜんっぜん大したことねえ!)

怒りで意識を引き戻す。落ちかけた聖剣をぐっと握り直し、

「僕は、ハルト以外に負けたくねえんだよ!」

振り向きざまに振り抜いた。

「ッ!?」

ガキィィン、と大弓で受け止め、さらに力をこめて聖剣を弾き返す。

すでにインターバルタイムは経過した。今は特殊能力を発動している。ステータスが軒並み上昇しているのだ。

だが、まだ足りない。

体をもっていかれそうになるのを、鍛え上げた筋肉に全魔力を注ぎこんで踏ん張る。さらに魔力をかき集めようとして、背中に熱を感じた。

(そうだ、まだ僕にはこれがある)

自身の存在を 証明(しめ) すモノ。しかしこれからの自分には不要と切り捨てた、魔法術式。

胸の中で常に渦巻く葛藤により、これまでは無意識に使うことを躊躇っていたらしい。

ここに至りようやく、完全に吹っ切れた。

背の王紋に魔力を通すと、それより多くの魔力が逆に還ってきた。

すべてを身体強化に注ぎこみ、全身の力を聖剣に押しつける。

「そんな……、今の私が純粋な力で押し負けるなんて」

驚きつつもどこか嬉しそうなのはなぜなのか? 不思議に思うも今は些末と切り捨てる。

パープルが大弓をわずかに引いた。相手の力を利用して態勢を崩そうと――。

「うおおおおおおおっ!」

それを強引に軌道修正し、

「きゃっ!?」

聖剣を横に振り抜き吹っ飛ばした。

「くっ、なんて力……」

パープルは空中で半回転。大木を蹴って上空へと逃れる。

「……わかっています。今の私では、続けて アレ(・・) は使えません」

苦々しく吐き出すと、〝白〟の魔法少女を一瞥してから彼方へ飛び去った――。