軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初戦、決着

唐突に俺の目の前で火花が散った。

ギギンガキンギキィ!

さらに連続して打撃音。間違いない、俺の防御結界に大鎌がぶち当たる音だ。

もしかして、俺の位置を把握して攻撃してます?

イリスは不可解な事態に、怪訝な目をこちらに向けた。

一方のピンクちゃんは『気になるけどどうしよう?』みたいにチラチラ視線を寄越しては戻すを繰り返している。

もっとも俺もメルちゃんも姿を消しているので虚空でうるさい音が鳴ってるだけにしか見えないだろうな。

うーん、どうしたものか。

俺はいちおうサポーターなので、儀式のルール上、魔法少女の攻撃は絶対に当たらない。いつもの癖で防御結界を展開してただけなのだ。べ、べつに怖がりなんかじゃないし!

さておき。なにか勘違いしてるっぽいので仕方なく、俺は恥を忍んで光学迷彩結界を解いてみた。ぬいぐるみ的クマの姿を露わにする。

「可愛いですぅ♪」

おぅふっ! ピンクちゃんには好評みたいだ。しかし 兄(おれ) と認識していない現状、手放しでは喜べない。なんだかちょっと嫉妬しちゃう!

「しめた!」

「しまったです!」

グリーンが壁から離れた。

どうやらシャルの特殊能力は対象をちゃんと見てないと有効でないらしい。

「ぬおっ!」

「ふぅ、危なかったです」

でも再び壁面にくっつけられるグリーン。脱出できたのに声なんか上げるからだ。マヌケな奴め。

「くそっ、脱出できねえ。なんだよこれ、特殊能力どころか魔法も使えなくなんのかよ……」

さすがに制限が多いからか、シャルの特殊能力はハンパない効果らしいな。

って、おや?

ぴたり。音が止んだ。

俺が小声で諭すまでもなく、メルちゃんは攻撃対象がサポーターだと認識してくれたみたいだな。よかったよかった。

いやよくないか。これでメルちゃんはシャルたちへ攻撃を再開してしまう。

ガッキィィィンッ!

案の定、と思ったけど、あれれぇ? また俺んとこを攻撃してきたぞぉ?

しかもさっきよりも苛烈な攻撃らしく、俺の防御結界にかかる〝圧〟が凄まじい。

まあそれはそれとして、グリーンは今のうちに叩いておこうよ、とイリスに念話で話しかけようとしたところ。

ぱっ、と。

目の前、というか低身長状態の俺の頭上にメルちゃんが姿を現した。

てかなんか縮んでない? 十代半ばのスレンダー美少女から、変身前のお子さま状態に髪型ともども戻っている。衣装も体型に合わせて小さくなっていた。

急にどうした? と思うも、驚いたのは彼女の表情だ。

「ぃ、ゃ、ぃゃ……」

震える小さな声の主は、目に涙を浮かべて怯えたように震えながら、必死に大鎌を振り回していた。

いや俺なにかやらかしましたぁ!? まったく心当たりがないんですけどぉ!?

『もういいから戻っておいで!』

ティア教授の声だ。メルちゃんの顔のすぐ横に半透明ウィンドウが浮かんでいる。

サポーターは念話で会話できるのだけど、おそらくそれでは応じないから特殊能力を停止させて直接の手段に出たのだろう。

「なんだかよくわからんけど、大丈夫、俺はなにもしないよ」

言葉のとおりなんもわからんのだが、俺も優しく声をかけてみた。

ふっ、とメルちゃんの緊張が解けた気がした。

「マ……、ママ……?」

か細くつぶやいてのち、きゅっと唇を結び、どこか申し訳なさそうに目を逸らしてから。

びゅおんと勢いよく空高く舞い上がり、彼方へと消え去った。

呆気に取られる俺。

イリスも、そしてシャルも何が起こったのか計りかねて放心していた。それが隙を生んだ。

ドゴォォンッ! 砂塵が舞う。

「はっ!? またもしまったです!」

シャルが再びよそ見してしまったからか、グリーンが自由になって地面を叩いたらしい。

すぐさま身構えるシャルとイリス。

「わかってるよ、さすがに二対一は分が悪い。ここは大人しく引いてやる」

ビュンと風が舞う音。

「けど次は僕が勝つ!」

負け惜しみを残し、グリーンも戦線から離脱した。

『魔法少女戦争(仮)』の初戦は痛み分け。

いや――いつの間にか上空を旋回していた鳥さんはいなくなっていたし、雪だるまもいずこかへ消え去っていたし。

互いに手の内を見せまくってしまったので、他の三陣営が得をしただけかなあ……とほほ。