軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

逆に肩の荷が下りました

俺はこの世に頭の上がらない人が二人いる。

シャルちゃんはまあ『激推し』なのでそれとは違う分類だが、要するに俺の育ての親たるゼンフィス辺境伯夫妻である。

やべえよ、かーちゃんに呼び出し食らったお。お、お、お。

よくよく考えたらこれ、初めてじゃないか? それゆえ俺の動揺もひとしおだ。

辺境伯の執務室にあるソファーに座る俺。

対面には父さん、ゴルド・ゼンフィス辺境伯がどっしり腰を下ろしている。

で、その隣では、ナタリア・ゼンフィス母さんが腕組みして待ち構えていた。

「お母さんは怒っています」

うん、まあ雰囲気的にそうだろうなと思いました。でも理由はさっぱりなので、

「俺、なんかやっちまいましたでしょうか?」

素直に聞いてみた。

口を開いたのは父さんの方だ。

「帝国軍が、こちらへ向かっているそうだな」

おっとバレとるやーん。

「それをハルト、貴方とジョニーたちだけで追い払おうとしているですって?」

母さんは口調や態度は怒っているものの、哀しい目をしていた。

「貴方はいつも、そうやって無茶をして……」

あかん。泣くのをぐっとこらえているけど目に涙があふれてくる様は俺に効く。

「いやその、別にそんな無茶じゃないっていうか、戦争するわけじゃないから安心してほしいというか」

「軍隊を相手にするのが無茶でないはずがありません!」

ついに涙を頬に伝わせ、それでも拭わず一喝する母さん。

「ナタリア、すこし落ち着きなさい。感情的に話しては説得もままならんよ」

父さんに優しく諭され、母さんはきゅっと唇を引き結んだ。

ふおぉぉ……、転生してから十六年弱、一番居た堪れない……。

「ハルト、お前の実力は儂もよく知っているつもりだ。いや、計り知れん、というのが正確なところか。魔法の実力だけではない。先を見据えた大局的な物の捉え方も含めてな。だから今までは、あえて儂らは口を出すまいと努めていた」

その上で、と父さんは真摯に問う。

「今回はさすがに規模が違う。お前は、この難局に国家に頼らずどう対処するつもりだ?」

つーかコレ、いろいろバレとるな。

なにせここまで『シヴァ』の名が一回も出てきてない。いや薄々気づいてはいたけどさ。

もはや隠し立てする意味がない。そもそも今まで俺がシヴァだと隠してたのも『話すタイミングがなかった』だけだし。

「たんに俺は、王国と帝国が戦争をしたって事実を作りたくないんだ」

俺が何をするつもりか、マリアンヌ王女やティア教授たちと話した背景事情を含めてこんこんと説明する。

まだジョニーたちにも伏せている、当日の作戦も細かに伝えた。

今回ばかりは嘘やごまかしはなしだ。正直に丁寧に話せば、きっとわかってくれるはず。

二人は黙って聞き入ってくれていた。

ただその表情が、険しいものからなんというか、困ったような複雑なものに変わっているような?

「――って感じ、かな。これなら戦争とは呼べない。俺は黒い戦士シヴァとして動くから、王国が直接関与しているとは向こうも強く言えないはずだ。フレイたちの負担もあまりかからないよう注意するし、結果的に帝国はしばらく何もできなくなると思う」

話し終えると、父さんは母さんをチラリと見た。母さんも父さんに顔を向けて目を合わせたのち、

「いやいやいや! ハルトお前、本気で言っているのか!?」

「無茶とかどうとか以前に実現可能なのそれは!?」

ぇ、思ってた反応と違う。とりま、できるかできないかで言えば。

「難しくはない、かな。戦争するよりはずっと楽だよ」

軍隊の指揮とかさっぱりわからんからな。戦略シミュレーション系のゲームってあんま得意じゃないのよ。

あれ? 二人ともぽかーんとしてますね。変なこと言っちゃったかな。

ドキドキしながら待っていると、二人は再び顔を見合わせて、ふっと笑ったよ?

「戦争より楽、か。そう言ってのけるお前なら、事もなげにやり遂げてしまうのだろうな」

「そうね。心配してばかりが母親ではないもの。貴方を信じるわ」

どうやら納得していただけたご様子。

「とはいえ儂らもただ見ているだけではない。何か協力できることがあったら遠慮なく言ってくれ」

「ありがとう、父さん、母さん」

でも準備はほぼ終わってるからなあ。ぶっちゃけ帝国軍が国境近くまで来るのを待ってる段階だ。他になんかあったっけ?

俺が頭を捻っていると察したのか、父さんが言い出す。

「すくなくともお前が事にあたっている間、その不在を偽装するくらいは必要だろう?」

そんな時間はかけないつもりなのよね。ぶっちゃけ半日で片を付ける気でいる。

そもそも――。

俺はすぐ横に『どこまでもドア』を作ると、ガチャリと開けた。向こうはティア教授の研究棟にある俺の自室だ。

ベッドの上でうたた寝していた男が驚いて起き上がる。

「んあ? なんだよ本体、ついにバラしたのかよ――ぷぇ」

すかさず近寄って鼻をポチッ。美少女フィギュアに戻ったハルトCを持って父さんと母さんのところに戻ってくる。

「とまあ、俺の影武者は用意してるから大丈――「「なんだそれーっ!?」」」

お二方、なんか口調がおかしくなってますよ?

ともあれ、これで俺の肩の荷も下りたってもんよ。

決戦に向けて俺自身の士気も高まっちゃったなー。