軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

敵は作るもの、という共通認識

シャルちゃんたち魔法少女のみんなは力を合わせてついに魔神を倒し、悪の王妃をも葬ったのが前回のあらすじ。

いや実際に葬ったのは俺だし、なんならギーゼロッテは死んでないんだけど、社会的に葬られたしやらかしたことがアレなので死刑はほぼ確。まあだいたい合ってる、ということで。

ともかく魔法少女たちの活躍により平穏は取り戻せた。

ただ、彼女らの活躍を知る者は少ない。

なぜなら正体を明かすわけにはいかないからだ。

でもお兄ちゃん的にはシャルの活躍が闇に埋もれてしまうのは我慢ならないので、家族用に録画していたもろもろの映像を編集し、小型の魔法具に保存して大量にコピーすることに成功した俺は売り捌いた。

かなり売れた。ほくほくである。

それはそれとして。

俺にはひとつ、懸念事項があった。心配事、と言ってもいい。

ボスを倒してしまった以上、次なる目標が定まるまで魔法少女活動はお休みだ。

せっかく魔法少女友だちができたのに、シャルちゃんが魔法少女ロスで燃え尽きたりしていないだろうか!?

お兄ちゃんは心配です。

ので、直接本人に聞いてみた。

『次のクールに向けての充電期間、および修業期間と捉えれば問題ありません』

なるほど確かに。

別のアニメを見たり、気持ちを入れ替えてゲームに没頭するのもいいよね。

この猶予期間でシャルちゃんたちのために次なる敵を用意すればいい。

が、ここでも問題が。

なにせ魔神なんて〝神〟的な何かをラスボスにしちゃったからなあ。

これ以上の相手となれば宇宙の法則を乱さなきゃいけなくなる。

シリーズ物の強さインフレは永遠の課題だなあ。

なんてことを二度寝しながら考えていた俺は、さすがに腹が減ったので引きこもりハウスのリビングへと入った。

フレイになんか作ってもらおう。

「ん?」

「あら?」

なんで君がいるのん?

広いリビングには一人、ソファーでアニメを視聴するお子さまがいた。いや、もう一人いるんだけど、壁際で置物みたいに突っ立っているので数には入れないでおこう。

「もしかして寝ていたの? お昼を過ぎている今まで?」

「俺は夜中まで研究で忙しかったからな。(嘘です)お前こそ今は授業中だろ?(華麗なる話題逸らし)」

「わたしは学業を最優先事項にはしていないもの。単位が足りる程度の授業に出れば問題ないわ。それより、なんの研究をしているの? 古代魔法?」

ものすごく自然に話題を俺に戻されたな。

てかこの子、わりと不真面目な生徒だったんだな。大丈夫かな? こんな不良とお友だちでシャルに悪い影響ないかな?

待って授業出たくないってモロ俺やんけ俺そんな悪影響与えてる? いや与えてない、はず。ゆえにこいつがお友だちでも無問題、にしておきたい。

「まあな。それよりお前――って、ああ!」

俺は自分の話を他人とするのがとても嫌なので、強引にでも別の話題にしてやる。

「それ、『もうちょっと大人になってから』タグが付いてるやつだろ」

それは俺名義の定額動画サイトにおいて、お気に入りの分類のひとつである。

シャルが好むものであればあまり制限をかけたくはないものの、やはりエログロはあまりに過激だとシャルの年齢的に心配だ。

そもそもシャルはとくにグロ系を苦手としている。見るとしてもほのぼのゾンビモノくらいだった。

うっかり血しぶき飛び散るむごたらしいシーンを見てしまわないよう、いずれ成長して耐性が付くまでは我慢しよう、と俺と話し合って決め、俺が独自にタグ付けして分類しておいたのだ。

テレビ画面では、今まさに魔法少女が袈裟斬りされてぶしゃーって血が飛んでた。

このアニメは魔法少女同士が殺し合いをするデスゲーム的なアレなので、とくにシャルの精神を蝕みそうだから隠しておきたかったのに。

「わたしはあまり気にならないわ。お話自体はとても面白いしね」

ただ、とユリヤは珍しく笑みを消してため息を吐き出した。

「魔法少女同士が戦うのって、実際にやると楽しくはなさそうなのよね。すくなくともシャルがやりたいのは正義と悪の対決だろうし、わたしもそっちのが好みかな」

わかるマン。

俺もこのアニメ自体は好きなのだが、やはりシャルの嗜好を考えると視聴候補から除外せざるを得ない。

俺はつかつかと歩み寄り、右手を差し出した。

「お前がシャルの友だちになってくれてよかった」

「よくわからないけれど、光栄だわ」

がしっと握手する。

ようわからん弟とか、もんにょりすることもあるにはあるが、シャルちゃんファーストという点においてこいつは俺と同じらしい。

ん? あれ……?

「どうかしたの?」

にこにこと、屈託のない笑みなのに金色の瞳は笑っていないような……。

「いや、なんでもない」

手を離す。

なんというかこいつ、誰かと雰囲気が似ているような……誰だっけ? 一瞬、ピンクでほんわかな学院長が思い浮かんだけど……気のせい、だよな?

思考を質問で邪魔される。

「ねえハルト、魔法少女の敵って、どんなのがいいと思う?」

「基本はやっぱり組織的な何かじゃないか? 闇の組織とかシャルは大好物だぞ」

「ルシファイラ教団みたいな?」

「そういや、あそこってどうなったんだ?」

そもそも直接何かやりあった記憶がない。

魔神が直接指揮をしていた感じもしないし、魔神復活のために組織されたものだと認識している構成員はごくごく一部なんじゃなかろうか。

「使い回しって、そう楽でもないのよね。やっぱり一から作ったほうがいいかしら?」

なんの話してます?

「うん、もうすこし勉強してみるわね。ありがとう、ハルト。参考になったわ」

よくわからんが役に立ったらしい。

なんとなく気になることもなくはないが、さすがに空腹が限界なので飯を調達に行こう。

俺は二人を置いて、キッチンへと向かうのだった――。

「あ、わたしも何か食べたい。作ってくれる?」

……まあ、べつにいいですけども。