軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖剣の秘めたる力

王妃ギーゼロッテの姿をしたルシファイラは荒野の大岩の上に立った。腰には七聖武具のひとつ『光刃の聖剣』を帯びている。

いったい何がどうなっているのか?

遠く王都の城壁を望み、困惑と怒りで体を震わせた。

(アレは、なんなの? 金属質の、人型? いくつもの飛行物体が合体して? いったいなんの冗談よ!)

巨大合成魔獣は堅牢な王都城壁を突破できるほど強化に成功した。体当たりで壁を破壊し、市中に入ってしまえば暴れ放題。

むろん、シャルロッテたちがそれを阻止しようとするのは織り込み済みだ。ただ想定外にも程があった。

(どうしてシヴァではなく、シャルロッテが直接対処しにきたのよ!)

シャルロッテは〝神殺し〟の目をごまかすためその力をほとんどシヴァに譲り渡している、とルシファイラは睨んでいた。

実際、シャルロッテ自身の力は人を逸脱するものではない。

だから合成魔獣はシヴァにしか対処できない脅威だと、あちらは認識するとの確信があった。

そしてシヴァが合成魔獣に対応する間に本体たるシャルロッテを強襲して亡き者にする。そうすればシヴァも消失し、すべてがうまくいくはずだったのに。

(あのふざけた人型の何か……あの中にシャルロッテやその仲間たちがいるのは間違いない。シヴァが戦っている間にシャルロッテを密閉型魔法具で護るのは想定していたけれど……)

魔法具での防御だけなら対処のしようはあった。それこそ神話時代から伝わるこの『光刃の聖剣』ならば。

(でも、攻撃力も極めて高いなんて……)

まったく隙がない。

こんな芸当ができる者は他の誰でもなく――。

「貴方の仕業ね、シヴァアアァアッ!!」

視線を上に。射殺すほど睨みつけた先。

「ああ、そうだ。そして決着は俺自らの手で行う。覚悟はいいか? ギーゼロッテ――いや、魔神ルシファイラ」

パチンと指を鳴らすと、景色が一変した。

白い、空間だ。

足元に格子状の線が描かれているだけで、それが遥か彼方まで続いている。

(転移……ではないわね。あらかじめ用意していた結界に色を付けただけか。よくもまあ、これだけ大規模な結界を隠していたものね)

激情にかられつつあったルシファイラはしかし、冷静さを瞬時に取り戻した。

(相当な準備をしてきたってことよね。やっぱりこの男、侮れないわ)

だからといって、こちらが不利とは限らない。

「ま、決着と言ってもすぐに着く。その首輪、外したかったんだよな?」

顔は見えずとも、薄笑いをしているのが伝わってきた。

かつてギーゼロッテにかけられた首輪。

それは切断した首を繋ぎ合わせるものであり、逆にその効果を無効にしてしまえば頭と体は切り離される。

シヴァが念じるだけで、なるほど勝敗は決するだろう。

「ふ、ふふふふ……」

当然、ルシファイラも承知している。だが――。

「〝我〟がなんの対策もしていないと思ったかっ!」

腰の聖剣を引き抜くや、鞘を投げ捨てた。そのまま白銀に光る刃を首輪に押しつけて。

「貴様が操る古代魔法など!」

すぅっと、音もなく。

無骨な首輪が二つに分つ。カランと乾いた音を弾けさせ、地面に落ちた。

「なん、だと……?」

ルシファイラの首は繋がっている。

(これこそ『光刃の聖剣』の真の力。この剣で断ち切れぬ魔法術式は存在しないのよ)

なにせルシファイラこそ、この聖剣の元の使用者なのだ。その機能と解放条件はすべて把握している。

驚いた様子のシヴァに、わざわざ教えてやることはない。

「いろいろ準備していたみたいだけど、出鼻を挫かれた気分はいかが?」

そして諸々準備をしていたのはシヴァだけではない。

(わたくしにはまだ、切り札が残っているわ。 いくつも(・・・・) ね)

仕込みはすでに終わっている。

ならば今、シヴァと一対一という状況にこそ勝機を見出すのだ!

バキンッ!

体の裡を縛る、鎖を断ち切る。

バキバキッバキバキンッ!

ひとつやふたつでは足りない。この仮初めの肉体は数分保てばよい。だからすべての鎖を裁断した。

「はああぁぁあああぁああああぁっっ!!」

溢れる魔力が世界を歪める。

一般人程度であれば近寄るだけで卒倒するほどの〝濃さ〟だ。

神話の時代、魔法レベル三桁の化け物たちが覇を争った。三主神とも渡り合ってきたその力のすべてとはいかないまでも、八割近い出力は維持できる。

「いいわ、決着をつけようじゃないの!」

渾身の魔力を拳にのせて、足元へ強烈な一発を放った――。