軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

決着、そして新たな戦いへの幕開け――

妙な邪魔が入ったな、とアレクセイ・グーベルクはため息をつく。

二体の魔人の存在は、この ゲーム(・・・) が始まった直後から感じていた。

いつ、どのように介入してくるか、あるいはただの監視なのか注視していたら、一番の盛り上がりどころで割りこんでくるとは。

(そして私をも排除しようとした。ま、それも当然か)

本体にしてみれば、役に立たないどころか自由に遊び回っているように見えるだろう。

いずれシヴァと決着をつけるうえで、アレクセイから魔神の情報が漏れる危険が極小でもあるなら今のうちに消したほうがよい、と考えるのは自然なこと。

(ああ、理解はできる。魔神ルシファイラは私と性格がよく似ているからな)

せっかくの享楽を邪魔されては堪らない。

魔神の記憶と能力の一端を得た今、それは十分にわかった。しかし――。

(受け入れるかどうかは別の話だ。こちらの愉しみを奪おうとする以上、本体は アレクセイ(わたし) の敵となった)

むろん力で勝てるはずはない。

手持ちは魔神本体のわずかな知識と、その力の一端に過ぎないのだから。

シヴァが闖入者二人をどこかへ連れ去り、気の抜けた空気が漂う中。

シャルロッテが空中でぷかぷか浮いてぼけーっとしているのに目を向ける。

なんとも隙だらけな彼女に、

「シャルロッテ、我らの敗北を認めよう」

「ほえ?」

アレクセイは白旗を挙げた。

「ナンバーズは私以外が戦闘不能状態に陥っている。対する君たちはほぼ無傷。当初動けなかった最大戦力も、回復したようだ」

メジェド様スタイルのフレイは起き上がってゆらゆら揺れながらアレクセイを威嚇している。

(全力を出せば勝機がなくはないが……)

一対多は不利に見えて、その実は味方に配慮する必要がないので全力を出せる。

また相手の力量には個々で大きな差があるので弱点を突きやすく、油断や混乱を誘発するのは容易かった。

「勝てる見込みがなくなった以上、私や君たちがケガをするような行為は無意味だよ」

それでもアレクセイは敗北を宣言した。

「ではアレクセイさんは――」

シャルロッテはきりりと言う。

「悪の巨大組織の打倒と魔神復活の阻止のため、わたくしたちに協力してくださるのですね!」

「……うん、まあ、そうだね」

この子はいったいどこまで正しく認識しているのだろうか?

妄想でないならとてつもない洞察力と想像力の持ち主だ。

「他のメンバーの皆さまはいかがでしょうか?」

ひっくり返って起き上がれないナンバーズの面々が応じる。

「……リーダーが決めたのなら仕方あるまい」

「子どものお遊びに付き合うなんて……とは言えない状況よね」

「さっきのアレが魔神とやらの使徒だと言われたら、まあね……」

などなど、実際に魔人なんて強力な存在を目の当たりにした彼らも承諾した。

シャルロッテが両手を高々と上げる。

「では、どうぞ」

ん? とアレクセイたちが怪訝な表情になった直後。

「ナンバーズの諸君が敗北を認めたとして、シャルロッテチームの勝利とする!」

いつの間に戻ってきたのか、シヴァがシャルロッテの片手をつかんで叫んだ。

(も、もう倒したというのか……。魔人二体を相手に……)

彼なら勝てると踏んでいたが、それにしても手際がよすぎる。

(この男、本当に神をも超える力を持っているのか……?)

愕然とするアレクセイの耳に、

「それではナンバーズの皆さまは暫定的に〝騎士〟と認め、我らキャメロットにお迎えいたしますね。あ、でも 逢魔の庭園(パンデモニウム) には入れられませんので、そこはご了承ください」

意味不明の言葉が飛びこんできた――。

――王都、離宮の一室。

王妃ギーゼロッテの体を乗っ取った魔神ルシファイラは、かすかな声を耳にした。

『シヴァは魔人。魔神がその力の多くを移した異質な存在』

その声は切羽詰まっていたのか震えている。

(ただの調査でこれっぽっちの情報しか伝えられないだなんて、役立たずにもほどがあるわね)

大きくため息を吐き出すも、相手がそれほど強大だったと認めることにした。

「あの男が 魔神(われら) に近しい存在だとは承知しているわ。でも、そう……ふふ、ふふふ」

ムルザラからのわずかな情報で、ルシファイラは理解した。

「わたくし以外の魔神がすでに在ったとは驚きね。けれどその力の大半を移して魔人を創ったならば、感知できなくて当然だわ。となれば――」

ルシファイラはムルザラと同じ結論に達する。

「狙うのは その子(・・・) でいいわね。創造主が消えれば、創られしモノも消え去るが道理ですもの」

脆弱な人の中で突出した魔法レベルを有する少女。

魔神がその力の大半を移して人を模したところで、やはり目立つ存在にはなってしまう。

「シャルロッテ・ゼンフィス。あら? ギーゼロッテ(あなた) ってばずいぶん高揚しているわね。ええ、心地よい憎悪だわ。貴女がやり損ねた因縁の相手だものね」

裡(うち) から湧き出す負の感情を味わいながら、

「わたくしにとってもおそらくは因縁の相手。ふふふ、愉しくなってきたわね」

ルシファイラは哄笑を上げるのだった――。