軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

絶対に負けられない戦いが始まる

朝も早よから遺跡にお呼ばれ。

「諸君、朝早くからよくぞ集まってくれた」

俺はシヴァモードで居並ぶ面々を労う。

俺の右手側には馴染みのみなさん。シャルちゃんは魔法少女風の衣装でやる気満々。フレイは気に入ったのかメジェド様スタイル。他はまあ、代わり映えしない。

そして左手側にはこちらも真面目に制服を着た、ナンバーズの方々だ。てか、白い覆面はどうした? お前らそれで本当に後悔しないか?

俺の心配をよそに、ナンバーズ諸兄姉もやる気は十分のようで、なぜだか対戦相手ではない俺をギラついた眼差しで見つめていた。

「貴様何者だ!?」

「突然現れて、なにを言っているんだ?」

「アレじゃない? 例の、ほら」

「黒い戦士だったか?」

なるほど納得。自己紹介もなく全身真っ黒な男が現れて偉そうにしてたら、そりゃあ警戒しますよね。

「俺はこの対戦で審判を務めるよう学院長から依頼された――」

シュバババッ! とこの日のために妹が用意してくれた決めポーズをする俺。

「陰のヒーローにして闇の正義執行人、『シュヴァルツァ・クリーガー』またの名を『シヴァ』という!」

キャーッ! と黄色い声援は残念ながらひとつだけ。メジェド様スタイルのフレイは寡黙ながら頭(というか体全体?)をぶんぶん前後に振り回している。

と、やや呆れ気味な表情で、相手チームのリーダーたるアレクセイ先輩が一歩前に出た。

「学院長、彼はゼンフィス辺境伯領で活動する謎の男だと聞いています。公平なる審判ができるとは思えないのですが?」

「貴方の危惧はもっともでしょう。ただ今回は私が独断で決めた私的なイベントのようなもの。もちろん皆さんが真剣であることは理解していますが、学院行事として教師等の人員は割けません。安全面を配慮して彼を選出しました。大丈夫です。彼は一方に不利益となる行動はしませんよ」

学院長は横に立つ俺に顔を向けた。

「そうですよね? シヴァさん」

顔は笑っているが目が怖いです。

「むろんだ。俺は正義の執行人。己が信条に賭けて誓おう!」

もちろん嘘だよ♪

じとーっと見られているが顔は見えないからへーきへーき。

学院長はみんなのほうへ向き直ると、ルールやなんかの説明をする。

「皆さんには遺跡のどこかに隠した『ミージャの水晶』を取ってきていただきます」

ほんのお遊びに割と高価なものをお宝指定したもんだね。

「偽物も多数配置していますから、確認は怠らないように」

ただの水晶玉をいくつも置いてきたらしいな。けっこう意地悪だったり?

そして残念ながら、配置したのは学院長 御(おん) 自(みずか) らである。俺に頼んでくれればとても助かったのになあ。

でもご安心。

すでに遺跡内には無数の監視用結界を飛ばしまくっていた。

ぱっと見だと本物か偽物かわからんけど、結界から手をにゅっと伸ばして魔力を注げばすぐにわかるのさ。

……割れちゃったりしないかな?

前に一度、なんでか知らんが魔力を注いだだけで割っちゃったことがあるんだよな。

私的イベントで用いるなら、不良品とはいかなくても粗悪なものである可能性は高い。

壊れちゃってもいいかな的な。

この辺りは慎重にすべきかもしれんな。

「それでは地上宮殿内の最初の分岐で、各チームは別の道を進んでください。後は自由です」

そっから先は言わせないよ?

「では諸君、健闘を祈る! スタートゥ!」

俺がシュババッとポーズを決めるも、反応はシャルとフレイのみ。哀しみ。

「てかキャッキャしてんじゃねえよ!」

「遅れてしまった」

一斉に駆け出したナンバーズども。

遅れてシャルたちが追いかける展開だ。

俺は悠然と彼らの背を見送った。がんばれよ、みんな。

「……シヴァさん? 貴方は行かないのですか?」

審判なので近くで何かしなきゃいけないらしいが、んなもんは面倒くさい。

「これで十分だ」

眼前に巨大スクリーンを出現させる。いくつもに分割された画面には、シャルたちやナンバーズどもの姿が映し出されていた。

「こ、これはいったい……」

なんか驚いているが俺はお構いなしで、謎時空から長机と椅子を取り出し、それからあんまり意味はないけどマイク的なおもちゃを結界で作って長机に置いた。

「……なにを、しているのですか?」

「まあまあ、学院長はこちらに」

三つある席の真ん中に座らせ、俺は隣に陣取った。で、

「さあ、いよいよ始まったねえ。学生同士とはいえ、みなが実技で成績上位のエリートたちだ。果たして勝利はどちらのチームが手にするのか!?」

「ルセイヤンネル教授!? いつの間に? いいえそれより、貴女は何を――」

「実況です」

「は?」

「そして学院長と俺は解説者なので、ティア教授に話を振られたら適宜応じてください」

ちょっと素が出てしまったので俺は気を引き締める。

いかんな。俺としたことが、わずかばかり高揚しているらしい。

「いえですから! 貴方がたはいったい何をしようとしているのですか!?」

珍しく語気を強める学院長に、俺はしれっと言い放つ。

「学院内にこの対決を中継――ええっと、要するに学生たちにリアルタイムで見てもらおうかと」

目を見開き、わなわな震える学院長。

「ほらね、内緒にしておいてよかっただろう? 事前に話せば絶対に反対されていたよ」

ティア教授がにししと笑う。

ま、こんなオモシロおかしいイベントを、俺らだけで楽しむのはもったいない。

なにより今回の大きな目的は、ナンバーズどもを心身ともにけちょんけちょんにすることだ。

さらに言えば、我が妹の優秀さを盛りに盛って伝え、いずれ女王となるあいつの株を上げまくってやるのさ。

「今さら中継を止めても無駄だよ。今の今で、すでに多くの学生が見ていたからね。普段から勉学や実技に勤しんでいる彼らに、ちょっとした娯楽は提供してもいいだろう?」

ティア教授がとどめを刺しにかかる。

「シヴァさん、貴方の異常な魔法力もまた、知らしめることになりますよ?」

ぁ………………。

「おっとそうこうするうちに解説のシヴァ君、両チームとも魔物に遭遇したみたいだよ?」

べつにいいや! ハルト(おれ) じゃなくてシヴァの力だしね。

「うむ、ミイラっぽい何かだな」

「フレイム・マミーです。マミーの上位種で、本来は火に弱いマミーが逆に耐性を持って炎を操り攻撃してきます。地上階に出てよい魔物ではありませんね」

あ、そうなの? やべ、魔物の制御が適当すぎたかも。

ともあれ、シャルたちの戦いは始まったのだ!(打ち切りエンドじゃないよ?)