軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話⑥/猛虎四凶

七大魔将『破虎』ビャッコは、支配の完了した『天翼』領地、ラクタパクシャの居城にいた。

ラクタパクシャの玉座が小さいのか座れず、椅子を破壊。

部下に持ってこさせた自分用の玉座に座り、機嫌よく鼻歌を歌っている。

玉座の前には、四人の魔族が跪いていた。

「親父、上機嫌だな」

ビャッコの後継とも言われる長男、トウコツ。

ビャッコそっくりの容姿だが、まだ二十代前半ほどの若さ。人間の姿に虎耳、虎の尾を持つ青年だ。

当然、上級魔族。ビャッコの配下でも最強と名高い男だ。

「そりゃそうよ。『虎』の完全支配が近いんだもの」

トウコツの隣にいた女がニヤニヤしながら言う。

トウコツの双子の姉、コントン。こちらは長い髪をポニーテールにしている。スタイルもよく、露出の多い服を着ている。

「くひひ。親父ぃ、人間界はいつ行くんだい?」

そして、どこか陰気そうな少年……次男のトウテツが牙を見せながら言う。

長い髪で顔が隠れてしまい、その表情がうかがえない。だが、口元だけが裂けたような笑みを浮かべていた。

「おバカ。まだ準備できてないじゃん。もうちょい、もうちょい。っしょ?」

クセの付いたツインテールを揺らし、次女のキュウキがトウテツを肘で小突く。

この四人こそ、ビャッコの血を分けた子供たちであり、『破虎』の最高戦力。

その名も『猛虎四凶』……この『天翼』を壊滅にまで追い込んだ者たちである。

ビャッコは鼻歌を止め、足元に転がるビンズイを蹴る。

「まー待てマテ。この鳥が人間界への最適なルートを探ってるところだ。いくつかルートを分けて、オレら全員で乗り込む。んで、デッドエンド大平原を人間が手出しできねぇように掃除するぜ」

ビンズイは、ボロボロだった。

翼がもがれ、血濡れのまま虚ろな目をしている。

そばには、『セキレイ』が何羽か飛んでいる。現在、持てる力を全て使い、『セキレイ』にて空路を探索しているのだ。

すると、トウコツが挙手。

「親父。全員で行くのはいいが……魔界を空けていいのか? 『冥狼』と『天翼』は支配したが、他の七大魔将が攻め込んでこないとも限らんぞ」

「心配ねぇ。確信を持って言える。今の七大魔将の連中にそんな度胸はねぇ。自分の領地を守ることに精一杯のはずだ。あの『滅龍』ですら、『天翼』に攻め込んだときダンマリだったしな。それに魔王……ククッ、うまく隠しているがオレの鼻は誤魔化せねぇ。アイツはやっぱり、ルプスレクスに食いちぎられた腕が完治していねぇ。弱体化は日々進んでいる」

「ほぉ……さすが親父だな。オレの鼻はそこまで利かない」

トウコツが感心する。

ビャッコは続けた。

「まず、人間界に全力で攻め込む。オレら『虎』の戦力を半分送り込んで宣戦布告するのさ。ルプスレクスとは違う、本気の『虎』の力を見せつけて人間の心を折る……で、人間界を半分くらい占領したら、次は魔界だ。まず、『緑鹿』の腰抜けの森を占領して、『地蛇』、『海蛸』、『滅龍』、最後は魔王の首を食いちぎる……クハハッ!! 魔界を完全支配したら、次は人間界だ。人間界を占領して……オレたち、『虎』の国を作る!!」

トウコツ、キュウキ、コントン、トウコツの四人がブルリと震えた……武者震いである。

『虎』の所属は最も好戦的。戦いに飢えている。

そして、まだ見ぬ王国に胸を高ぶらせ、戦意に満ちていく。

だが───……。

「……くくくっ」

そんなビャッコを嘲笑うように、笑い声がした。

ビャッコが首を向けたのは、部屋を支える柱の一つ。

そこに、片方の翼をもぎ取られたラクタパクシャが、全身を杭で打たれ磔にされていた。

ビャッコがラクタパクシャを睨む。

「なーにがおかしいんだ? お前」

「いやなに……お前、皮算用が得意だったとは知らなかった。まだ何も手に入れていないくせに、夢ばかり見て舌なめずりする……あまりに滑稽でな」

「……」

ビャッコは杭を手にし、投げる。

杭がラクタパクシャの腕に突き刺さるが、ラクタパクシャの表情は変わらない。

「お前は知らない。いや……気付かないフリをしているのか?」

「あぁ?」

「人間は甘くない。お前が恐れていたルプスレクスを倒したのが人間ということを忘れたのか?」

「オレが、あの臆病狼を恐れていたって?」

「そうだろう? お前は、ルプスレクスには絶対に手を出さなかった。あの誇り高き狼には敵わないと、本能で理解していたからだ。覚えておけビャッコ……」

ラクタパクシャは、ビャッコを憐れむように笑みを浮かべた。

「ルプスレクスは生きている」

「…………あ?」

「そして───……ルプスレクスが認めた人間と共に、その牙を研いでいるぞ。お前が敵に回すのは、お前が恐れた誇り高き狼と、狼の牙を持つ人間だ」

「…………」

「なぜ、私とビンズイ、そして残った鳥の一族がお前に協力しているかわかるか? お前たちを人間界に送れば、人間たちがお前と『虎』たちを始末してくれるからだ。くくっ……気付かないのか? 我らが運んだ『虎』の先兵たちが悉く、人間たちに始末されているのを」

「…………」

「さぁ、ビャッコ。我々は手を貸すぞ。お前が望むことを何でもしよう……それが、お前の滅ぶ道だ」

ビャッコが足元に視線を送ると、ビンズイが小さくほほ笑んでいた。

それがイラつき、ビンズイを蹴り飛ばす。ビンズイがラクタパクシャの足元まで転がった。

「ま、いいぜ。手ぇ貸すなら貸してくれや……ラクタパクシャ、テメェは最後に殺してやる」

「それは楽しみだ。ふふっ」

磔にされたまま、ラクタパクシャは微笑んだ。