軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脇役剣聖、詰める

サティと別れ、アルムート王城へ。

城に到着し、そのまま昨日の大会議室へ向かうと、やはり全員揃っていた。

俺、フル-レが一番最後。おかしいな、時間通りのはずだけど。

「遅いわよ、ラス」

「悪い悪い。ちょっと野暮用でな」

アナスタシアに叱られ、周りに「悪い悪い」と言いつつ座った。おい、俺が謝ってんのに、なんでフル-レは何も言わずに座るんだよ……まぁ、別にいいけど。

俺たちが座るなり、団長がずっしりと重たい声で言う。

「では、昨日の続きだ。『闘技大会』についてだが……」

「団長、ここからは私が」

お、ランスロットだ。

団長は話を遮られてキレると思ったが、特に何も言わない。

「昨日、『闘技大会』の件を殿下と共に陛下へ報告したところ、開催の許可を頂きました。その際、私の方で開催要項を作成し、陛下に提出……特に問題なしということでしたので、このまま通すことに」

「待て……開催要項だと? 初耳だが」

「ええ、今言いましたので」

うわぁ……団長の額に青筋、んで眉がピクピク動いてる。

ランスロットは涼しい顔してるし、いい根性してるな。

すると、ラストワンが言う。

「ハッ、ラスの発案なのに、全ての手柄はお前のモンか。相変わらず、卑怯な野郎だぜ」

「フフ。ラスティスは事務仕事が苦手なのでね。彼に任せていたら、闘技大会の開催は何年先になることやら……ねえ、ラスティス」

「ラストワン……すまん、何も言い返せん」

「おいこら、ふざけんなお前!!」

だって、書類仕事苦手だし。

とりあえず、ランスロットには言っておくか。

「ランスロット。俺は別に、誰がやったとか誰の手柄とかは興味ない。でも……周りがそれを良しとしない場合もある。一応、俺が発案ってことは間違ってないから、一言くれ」

「……ええ、わかりました」

「じゃ、お前の考えたルール、説明してくれ」

ランスロットは頷き、なんと自分の手で用意した資料を配布した。

まあ、この会議室に使用人とかメイドとかいないし、仕方ないけどな。

要項を開くと、まあ思った通りだった。

「アロンダイト騎士団と、アルムート王国騎士団の代表を七人選出。総当たり戦での勝負か」

「ええ。数が多すぎても、少なすぎてもよろしくない。七人というのは妥当なところでしょう」

他にも、細かいルールが書いてある。

武器の使用、スキルの使用、勝利条件……まぁ、変なところはなさそうだ。

団長たちも、ルールを確認している。ただ、ロシエルだけは読まずに、どこから出したのか本を読んでいた……いや、何してんの?

すると、団長が要項を置く。

「…………これだけか?」

「ええ、これだけです」

「…………」

何か不満なようだ。

まあ、俺も思った。総当たり戦で勝ったら、それで終わりだ。

何か商品だとか、賞金だとはあると思ったが、何もない。

ただ、勝って終わり……だが、俺はそう思わない。

この闘技大会には、陛下や殿下が見に来る。酒場で『王国騎士団の解散』の話を聞いたし、アルムート王国騎士団が負けたら解散もあるだろうな。

間違いない……アロンダイト騎士団には七人いる。ランスロットが自信をもって送り出せる七人が。

「ルール的には、問題ないわね」

「気に食わないが、オレも同じだ」

「……よくできたルールね」

アナスタシア、ラストワン、フル-レも同意見。

ロシエルは我関せず。団長も眉間にしわを寄せるが、特に意見はなさそうだ。

だってそうだろ……このルール、全く問題がない。

だからこそ、俺は提案した。

「一つだけ、変更したい」

「……なんでしょうか」

「総当たり戦ってなってるけど、勝ち抜き戦にする。一回戦で戦い勝利した選手は、そのまま次の試合を戦える。もちろん、辞退もできる」

「……」

ランスロットの眉が動いた。

俺は、団長に意見を求める。

「どうでしょうか、団長」

「……ふむ。些細な変更だな。ワシとしては問題ない」

「オレもいいぜ」

「私も問題ないわ」

「私も」

「…………」

ロシエル以外、全員が変更を認めた。

「じゃ、総当たり戦じゃなく、勝ち抜き戦で。あとは、ランスロットの決めたルールでいいな。開催は……そうだな、準備もあるし、選手の選抜もあるし……二十日後くらいか。団長、どうです?」

「……いいだろう」

「じゃ、二十日で。場所は……一番広い第一訓練場にするか。異存は?」

異存なし。

こうして、闘技大会が二十日後に開催されることになった。

いつの間にか俺が仕切っていたが、特に問題ないようで安心したぜ。

◇◇◇◇◇◇

会議が終わり、帰ろうとした時だった。

「ラスティス、少し付き合え」

「え」

団長に誘われ、今度は団長行きつけのバーへ。

団長の家であるグレムギルツ公爵家は、『貴族街』という貴族の屋敷が並ぶ区画にあるが、その区画内にある高級バーだった。しかも、団長が入るなり超ヴィップ対応……バーの経営者が出てきて、ペコペコ頭を下げている。

個室に案内され、超高級そうな古い木箱入りのワインを目の前で開け、これまた高そうなグラスに注いでくれた……いや、俺場違いにもほどがある。

まあいい。こんな高級ワイン、今度はいつ飲めるか……いただきます。

「なぜ、勝ち抜き戦にした」

「っと……あー」

今飲もうとしたのに、話しかけられたから止まってしまった。

俺はグラスを置く。

「まぁ、何もかもランスロットの決めたままで進むのが嫌ってのもありますけど……団長なら、気付いてるんじゃないですか?」

「……騎士団が、不安なのだな」

「ええ。ぶっちゃけると、今の騎士団は、個人よりも軍としての強さだと思います。なので、ランスロットの仕込んだアロンダイト騎士団の精鋭には、一対一じゃ敵わないかと」

「…………」

「勝ち抜き戦にしたのは、一人だけ、可能性があるからです」

「……エミネム、か」

団長も気付いたようだ。

俺は頷き、ようやくワインを飲む……う、うっまぁ。

「エミネムは、アルムート王国騎士団の中で唯一の『神スキル』持ちです。それに、エミネムは上級魔族の『 理想領域(ユートピア) 』を経験している。彼女を徹底的に鍛えて、七人勝ち抜きするのが最善かと」

「さすがに、それは厳しいぞ」

「ええ。なので……その、禁じ手を使いたいんですけど」

「貴様、闇討ちでもするつもりか?」

「…………」

「ふ、冗談だ」

だ、団長が冗談を言うとは……なんか、変わったなこの人も。

「……今、俺の弟子にサティって子がいるんですけど。その子は少なからず、アロンダイト騎士団と因縁があります。あの子が成長するには、やっぱりアロンダイト騎士団との因縁にケリを付けるべきだと思います。なので……一時的でいいんで、サティを騎士団に入れて、闘技大会に出したいと考えています」

「……本気か?」

「ええ。サティも『神スキル』持ちです。しかも、上級魔族にタンカ切るだけの根性もある」

「ほう」

「団長、エミネムを俺に預けてください。サティと合わせて、俺が鍛えます」

「貴様に、娘を預けろと? エミネムは次期公爵夫人となる大事な娘。今はまだおらんが、立派な婚約者をあてがい、グレムギルツ公爵家の」

「あの、そういうのいいんで。団長、エミネムを預けてください」

ずっと、考えていた。

アロンダイト騎士団とアルムート王国騎士団が戦ったら、恐らく王国騎士団は負ける。

勝つためには、勝ち抜き戦にして、サティとエミネムで七人倒すしかない。

あー……なんで俺、こんなに頭使ってるんだろ。

まぁ、理由はある。

「この闘技大会で負けたら、王国騎士団は解散。アロンダイト騎士団が王国軍の全権を握ることになる。ランスロットの狙いはわからんですけど……それがあいつの増長だとしたら、俺に責任がある」

「…………」

「お願いします。エミネムを俺に預けてください。本気で、鍛えます」

「……いいだろう。ただし!! 不埒な真似をしてみろ、ワシが直々に殺す!!」

「わ、わかりました……」

だ、団長……親バカだったのか。

青筋浮かびまくりで怖い。とりあえず、言質は得た。

「あと、可能性は低いですけど……俺も、考えたことがあるんです」

「何?」

「……まあ、可能性は低いですけど、こんなふうになるかと思います」

俺は、闘技大会の結果次第で、俺がやるべきことを団長に説明した。