軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脇役剣聖、大喜び

上級魔族の襲来から一か月が経過……村はほぼ復興し、今では普通の生活に戻りつつある。

そんなある日……俺は、朝からウキウキしていた。

「師匠、嬉しそうですねー」

「ふっふっふ……まぁな」

建て直した俺の屋敷は、前よりも広くなった。

前は空き部屋だったサティも、今は自分好みにしてもらった間取りの部屋で暮らしている。

俺はまぁ、寝れればどうでもいい。執務室がちょいと広くなったくらいかな。

俺が興奮している理由は別にある。

「はぁ~……いよいよ今日だな」

「お風呂、完成ですね!!」

「ああ……ふ、ふふ、ふふふ」

「……師匠、ちょっとキモイです」

窓を開けて屋敷の隣を見ると、屋敷より小さいが立派な建物があった。

そう……ここは風呂!! 風呂だけの建物だ!! 屋敷と渡り廊下でつながった、まさに俺理想の風呂である!! 風呂!! 何度でも言う、風呂だ!!

顔がにやけてしまう。すると、屋敷のドアをノックし、ケインくんが入ってきた。

「おはようございます。ラスさん、風呂が完成したみたいです」

「よっし!!」

「……師匠」

おいサティ、そんな目で見るな。

さっそく、俺とサティとケインくんの三人で、渡り廊下を通って風呂場へ。

「……あれ?」

ふと気づいた。

風呂場の入り口に、『男湯』と『女湯』の暖簾があった。

「男湯、女湯? 男女別にしたのか?」

「ええ、あれ? 図面は渡したはずですけど」

「要望書だけ出して見なかった。今日、ここで見る楽しみのために」

「そ、そうですか」

「師匠……」

だから、そんな目で見るなっつーの。

まぁいい。とりあえず、三人で男湯へ。

「脱衣所……けっこう、狭いですね」

サティが言う。

そりゃそうだろ。ここ、俺の屋敷だし……俺以外使わんしな!!

それでも、脱衣カゴは三つあるし、王都にしかない、水を自動でくみ上げる『蛇口』もある。

「これ、蛇口ですよね。『魔道具』の……高級だったんじゃないですか?」

「そうですね。でも、うちの商会で扱ってる商品の一つなんで、遠慮しないでください」

サティの質問に、ケインくんは笑顔で答えた……いい人だ。

さっそく浴場へ。ドアを開くと……そこは、新世界でした。

「おおおおおおおおおおおおお……」

「ラスさんの要望通り、内風呂は広く、ヒッバの木で作り上げました。床は深海石を削りだした特注で、シャワーはもちろんお湯が出ます。こちらも魔道具です。お湯は地下水をくみ上げ、魔道具で熱して蛇口から出ます。温度はこのツマミを捻って調整できますので。排水は、地下に敷いたパイプを通って、近くの川に流れます。排水の過程で、お湯はパイプ内で浄化されますので、河川が汚れることはないのでご安心ください」

「あれ、こっちにもドアが……」

「ああ、そちらは───」

ケインくんがドアを開けると、そこは『露天風呂』だ。

天井吹き抜けで、夜になると星空が良く見える、素晴らしい環境だ。

「岩風呂です。床と同じ深海石を使っています。内風呂よりは狭いですけど……」

「う、うぅ、うっ……」

「あ、あの……」

「し、師匠……泣いてるんですか?」

そりゃ泣くだろ……こんな素敵な風呂を作ってくれるなんて!!

俺はケインくんの腕を掴む。

「うわっ!?」

「ケインくん!! ありがとうな……本当に、ありがとう!!」

「い、いえ」

「ああ、お礼しないと。ちょっと待ってて」

俺は、地下倉庫へ向かい、隠していた『お宝箱』を開ける。

この宝箱は、俺の宝物が入っている。特別製で、俺が持つ鍵でしか開かない。

俺は、小さな包みを持ってケインくんの元へ。

リビングに移動したケインくんに、包みを渡した。

「お礼だ。受け取ってくれ」

「えっと……これは?」

ケインくんが包みを開くと、手で包めるくらいの大きさの、『銀色の塊』があった。

「それは、『冥狼ルプスレクス』の骨だ」

「え」

「昔、首はランスロットが狩ったんだが……身体は全部、俺がもらったんだ。ランスロットが所有権を放棄したからな。こいつは、その時の骨の一部だ」

「え、ちょ、ま、マジですか?」

「ああ。それだけの量でも、粉末にして金属と混ぜて武具を作れば、たぶんオリハルコン以上の硬度になると思う」

「……わぉ」

「す、すごいです。ルプスレクスの、骨……あたし、初めて見ました」

ケインくんは青くなっていた。

そして、骨を大事に包み、震える手でポケットへ。

「あ、あの……こんな値段が付かないような物、本当にいいんですか?」

「構わない。それくらい、俺にとって最高の風呂だからな!!」

「は、はあ……これだけのお宝見せられたら、この風呂でも足りない気がしてきました……あはは」

こうして、我が家に最高最強の『風呂』が完成した!!

あ、ちなみに……俺の屋敷だけだと不公平らしいので、ケインくんは村の真ん中に新しい『公衆浴場』を建設し始めた。なんでも『ルプスレクスの骨なんて貴重品、ラスさんの風呂だけじゃ全然足りないので』とか……まぁ、村人たちの癒しになれば、それでいい。

というわけで、風呂が完成した!!

◇◇◇◇◇◇

さて、風呂を試す前に……ここ最近の日課だ。

俺とサティは、屋敷を建てるついでに整備した裏庭へ。そこで、サティは目を閉じて集中。

集中し、右手で剣を抜刀。一瞬だけ剣が輝くと、薄紫色の球体が切っ先から飛び出した。

「『 雷磁界(マグネガ) 』!!」

球体が、磁力を含んだ岩石を吸い寄せてくっつける。薄紫色の球体は、サティの右手に持つ剣と細いラインでつながった状態で、サティはそのまま剣を持ち上げ、岩石を上空へ。

「はい、そのまま左の剣」

「はいっ!!」

サティは左手で剣を抜き、紫電を一気に溜めて───剣を振る。

すると、剣から紫電の光線が放たれる。

「『 雷滅砲(ジガ・トール) 』!!」

放たれた光線は、宙に浮かぶ岩石を粉々に砕いた。

パラパラ落ちてくる破片……そして、サティは肩で息をする。

「ど、どう……です、か」

「威力は申し分ない。でも、力のタメが長いのと、磁力と雷の切り替えがお粗末すぎる。そのせいで余計に疲労してる感じがあるな」

「うぐぅ……あの師匠、この切り替え、難しいですぅ」

「うーん……こういう繊細なことを教えるの、俺向きじゃねぇからな。アナスタシアなら得意なんだが」

「アナスタシア……序列五位の七大剣聖ですね」

「ああ。あいつ、ああ見えてクソ忙しいからな……まぁ、弟子も多いし、ちょっと指導できそうなヤツ、探してもらうか?」

「えー、でもあたし、師匠から習いたいですー」

とは言ってもなぁ。

自然系の『神スキル』の指導自体、俺向きじゃないんだよな。

「とりあえず、今日はここまで」

「うー……はぁい」

「よし風呂だ!! メシの前に風呂!!」

「……師匠、本当にお風呂好きなんですね」

そりゃそうだ。風呂は命の洗濯って言われるくらいだしな。意味はわからんけど。

◇◇◇◇◇◇

そして───……ついに俺は、風呂へ来た。

風呂へ向かう渡り廊下のドアを開け、ゆっくりと進む。

『ふいー!! めちゃ気持ちいいですー!!』

サティはすでに風呂を満喫している。

ふふふ……俺が遅くなった理由は、大工さんにお願いした最高級の『風呂桶』と『風呂椅子』を、そして村で最も手芸が得意なマーサ婆さんから新しい『手拭い』をもらいに行ってたからだ!!

「ふふふ。風呂風呂~っと……ふふふ~ん」

鼻歌を口ずさみながら渡り廊下を歩き、『男湯』とか書かれた暖簾を眺める。

「素晴らしい……ふふ、ふふふ、ついに我が家に立派な風呂が」

さて、いざ……楽園へ!!」

「お、いたいた。おいラス、アルムート王家から手紙が届いてるぞ」

と……いざ暖簾を潜ろうとした時、ギルガが現れ俺に手紙を差し出した。

「……後で」

「重要と書かれている。ただちに開封しろ」

「…………」

アルムート王国……くだらない内容だったら、マジで許さんからな!!