作品タイトル不明
脇役剣聖、本気の決着
ガシャン、とロシエルの神器が落ち、そのまま消滅した。
ロシエルが膝をつく。身体中に細かい切り傷が付いている……まあ、俺が付けたんだけど。
「……っ」
「最後まで残ったのお前か。お前、やっぱ強いよ。でも……まだまだだね」
ラストワンは仰向けで倒れ、アナスタシアはがっくりとしゃがみ込み、フルーレはうつ伏せで倒れ、ランスロットは神器を支えにしているが膝をついていた。
俺は、冥狼斬月を鞘に納め、『 第二の黄金時代(アイオーン・ドライブ) 』を解除。途端に、三十代半ばのオッサンに戻り、身体の節々が痛み出す。
「あいててて……これ使うと、元に戻った時に反動デケぇんだよな」
「……バケモノ」
と、ロシエルが言う。
俺は苦笑し、しゃがみ込んだままのロシエルに顔を近づけて言う。
「ふふん。秘密をばらしはしないけど、もうちょっと七大剣聖としての鍛錬を付けた方がいい。お前が望むなら、俺がこっそり稽古してやってもいいぞ」
「……変態」
え、なんで。
すると、倒れていた連中が起きだす。
「クッソが……オレもだいぶ強くなったと思うんだがな」
割れたサングラスを捨て、新しいサングラスをかけ、さらに乱れた髪を胸ポケットから出した櫛で整えるラストワン。
「ま、強くはなったな。まだまだ満足してもらっちゃ困るけどよ」
「く~、ムカつくぜ!! だっはっは!!」
ラストワンは俺に近づくと背中をバシバシ叩く。
アナスタシアは、割れたメガネをそのまま掛けなおす。
「……はあ」
「アナスタシア。お前のその『言葉』を現実にする力、お前の精神状態に影響するみたいだな。格上に対し『死ね』なんて言ったらそっくりそのままお前に跳ね返ってくる可能性あるぞ。お前は剣技だけじゃなく、精神力も鍛えないとな」
「そ。なら……また相手してくれる?」
「お、おう」
なんかエロいなこいつ。今の戦闘でちょっと服も切れたせいか、スカートのスリットとか胸元が破れてエロいことになってるし。
そしてフルーレ。
「まだ、やれる……!!」
「だな。お前はまだやれる。でも、今はもうやめとけ」
「……冗談じゃない。あなたに勝たないと、私……いつまでも序列七位のままじゃない!!」
「はは、若いな」
俺が七大剣聖を引退したら、フルーレは序列六位に繰り上がる。
神器、臨解と覚醒したフルーレなら、七大剣聖のトップに立つのも時間の問題かもしれない。
そして、平然と立ち上がり、乱れた髪を整えたランスロット。疲労を感じさせない声で言う。
「……以前、手合わせしたとき。あなたはどれだけ手を抜いていたのですか?」
「あの時は、お前の動きも荒かったし、雑念だらけの剣だったからな。でも、今はかなりよかったぞ? 正直、ヒヤリとする攻撃が何度もあった……ていうか、お前とロシエルだけだぞ、本気で俺を殺そうとしてきたの」
ランスロットは肩をすくめ、「そうでしたか?」といやらしく言う……このやろう、一発くらい斬撃じゃなくてブン殴ってやればよかった。
というわけで、五対一の模擬戦は終了。
「そーいや、合体技できなかったな」
「あなたがあわせる気なかったからでしょうが。まったく」
「フン……まあ、よく考えたら、私には合わないし。自分の氷だけでラスティスを倒してやる」
なんか反省会が始まった。
俺は団長のところへ行く。
「団長、どうでしたか?」
「…………」
団長は腕組みしたまま動かない、指先がぴくぴく動き、何かを言いたそうにしている。
すると、バーミリオンのおっさんが団長と肩を組んだ。
「がはっは!! こいつ、お前の強さに興奮して自分を押さえてんだよ。わかるわかる……血ぃ滾るよなあ? 兄貴よぉ、なんだかんだ言ってもオレらは同じ、荒くれモンの血だ。騎士なんてやめて傭兵団来いよ。歓迎するぜぇ?」
「……黙れ」
団長は、バーミリオンの腕を乱暴に外し、俺に言う。
「よき試合だった。たったの一戦……だが、今日全ての一戦は、万の戦いに匹敵する経験となった。七大剣聖、それを目指す者たちにとって、最高の刺激となっただろう」
「ですね。まあ、中でも……」
「うむ……」
ルシオ。
サティに何かを言われ、赤面して照れている。そしてイチカに背中を叩かれ、そのまま前のめりになりサティの胸に突っ込んだ……そして鼻血を吹き出してぶっ倒れた。
「恐るべき才能だ」
「ええ。ラッキースケベ体質まで兼ね備えてやがる」
「…………」
「じょ、冗談ですよ。まあ、この場にいる全員、誰も文句ないでしょ。十年以内に、あいつは間違いなく七大剣聖に名を連ねますよ」
俺の代わりに……とは言わない。
団長は頷く。
「ランスロット。お前はいいのか?」
と、いつの間にかいたランスロットが俺の隣に。
「ええ。強さだけなら、間違いなく十年以内に抜かれるでしょうね。問題は……彼が、七大剣聖を率いる器であるか、ということです」
「まあ、ルシオに団長みたいな威圧感とかカリスマとか求めるの無理だな。あいつ気弱だし」
「だーったらよ、ウチで女遊びでもさせるか? 女を知れば一皮むけるかもよ?」
と、ラストワンとアナスタシア、フルーレ、さらにロシエルも来た。
七大剣聖勢ぞろい。うーん、認めたくないが俺が一番弱そうに見えるのなんでだろうか。
すると、アナスタシアがラストワンの背中をたたく。
「カリスマはそう簡単に得られるものじゃないわ。今、私たちがあの子に抱いているのは、圧倒的な才能と将来性……七大剣聖にはなれると思うけど、あの子、たぶん序列入れ替えの戦いを申し込んだりはしないと思うわ」
「まあ、確かになあ」
完全同意の俺。
フルーレも言う。
「あの子……あなたの弟子なのよね」
「おう。これから厳しく指導するぜ」
「……そう」
フルーレは、俺をジッと見てすぐ顔をそらした。
「ふふ、うらやましいのね」
「そうかもね。強い相手に指導してもらえるなんて羨ましいわ。あなたは違うの?」
「あら、あなたも返しができるようになったのね。成長したじゃない」
アナスタシア、フルーレがバチバチにらみ合う。
ロシエルは我関せず。ここにいるのって、帰っていいか聞くためなのかもしれない。
団長が言う。
「よし。模擬戦はこれまで!! 戦闘を行った者は明日まで自由にしていい。明日、再び会議を行う……解散!!」
「え、マジ? よーし、ラスにバーミリオンのオッサン、ウチの店貸し切りにするから飲みに来いよ。ランスロット、お前もどうだ?」
「おっしゃ行く!! なあ、弟子たちもいいか?」
「おうおうおう、女はいるんだろうな?」
「……まあ、たまにはいいでしょう。ふふ、イフリータ、デボネアも一緒に」
「師匠!! ルシオくんの鼻血が止まらなくて……って、ごはんですか!! 行きます!!」
「ふが、ふがが」
「ええい、男が情けない。鼻血くらい気合で止めんか!!」
「……やかましいわね」
「フルーレ。あなたは行かないの?」
ワイワイガヤガヤと、模擬戦をした全員がラストワンの酒場へ行く。
俺たちは全員、間違いなく強くなった。
たった一戦……だが、内容は万の戦闘に匹敵するほどの内容だ。
「…………」
俺は、自分の胸を押さえる。
「…………うん」
まだ、戦える。
冥狼斬月が、ほんの少しだけ脈動したような気がした。