作品タイトル不明
久しぶりに行きますか
「さて、こんなモンか」
俺は自室で旅の支度を終えた。
頑張りまくって仕事をある程度終わらせ、明日から一か月ほどアルムート王国だ。
行くのは俺、サティ、エミネムの三人。ギルガが気を利かせ、馬車を手配してくれた。
準備も終わったし、あとは寝るだけ……と思っていたら、カジャクトがドアをノックもせずに開けた。
「うわびっくりした!! おま……ドアくらいノック、って!?」
カジャクトは血塗れだった。
そして、ゲッソリしてるドバト、ビンズイ、そしてクセッ毛ロングヘアの少女……誰だ、この子?
カジャクトはニヤリと笑う。
「いい場所紹介してくれたわ。ラス、ありがとね」
「お、おま……なんで血塗れ?」
「チョウワっ……だ、ダンジョンだ」
「ええ、ダンジョンです……」
「ダンジョン……」
ドバト、ビンズイ、少女が俺を幽霊みたいな目で見る……まさか。
「おいカジャクト。お前まさか、最高難易度ダンジョンに行ってきたのか?」
「ええ」
「ええ、って……その話したの昨日だろ!? もう行ってきたのか!?」
「そうよ。そこ、思った以上に面白いところだったわ。最深部にいた魔獣もなかなか強かった。あれ、『核』を壊さなきゃ何度も復活するんでしょ? あいつ、殺さないでおく。あいつも成長するみたいだし……退屈しないで済みそう」
ちょっとドバト、ビンズイに詳しく聞く。
カジャクトは最高難易度ダンジョンの話を聞くなり、ドバトとビンズイを連れて向かったらしい。そのダンジョンの最下層まで戦いまくり、ダンジョンの最奥にいたSSSレートの魔獣……ダンジョンボスと戦い、再び戦いまくりながら戻り、真っすぐ俺の元へ来たそうだ……そう、一睡もせずに。
馬鹿かこいつ……と思ったが言わない。というかそろそろ。
「ところで、この子は?」
「案内人よ。こいつがダンジョン見つけたんでしょ? フローネから借りたのよ」
「ああ、セリスか。デカくなったなあ」
「……ラスティス様。死にそうです」
セリス。まだ十六歳の女の子で、スキル『神隠』の力を持ってる。フローネの斥候技術、暗殺技術を受け継いだ後継者なんだが……なんか、悪いことしたな。
「おいカジャクト。セリスを連れまわすのはやめとけよ」
「そう? この子、見どころあるわ。せっかくだし、ドバトとビンズイと合わせて、私が鍛えてあげる」
「「「ひっ」」」
三人はビクッと震えた。
「とりあえず、村の警護関係はお前に任せる。いいか?」
「ええ」
「それと、ギルガの言うこと聞けよ。あとセリスに無茶させるなよ」
「うっさいわね。わかったから……さて、風呂に行こう。ドバト、ビンズイ、セリス、背中流しなさい!!」
「うええ……ラクタパクシャ様、帰りたいですぅ」
「あ、あの……あたしとビンズイはともかく、ドバトさんは」
「チョウワッ!! セリスよ、我はヒトの肌などで興奮はせんぞ。お前は鳥族の美しい翼の付け根を見て興奮するのか?」
「そ、そういう問題じゃ……」
四人は楽しそうに部屋を出て行った……なんかあの四人、仲良くやれそうだ。
さて、俺は軽く飲んでから寝るとしますかね。
◇◇◇◇◇◇
「あ、師匠ー!!」
村の入口にて。
馬車の前に立つサティが手をブンブン振っている。
そばにはエミネムが立ち、控えめにお辞儀した。
サティは楽しそうに言う。
「早く早く、行きましょう!!」
「落ち着け。なんだなんだ、気合い入ってるな……?」
「えへへ。早くアルムート王国に行って、イフリータと戦いたいんです!! 今の私と、今のイフリータ……どっちが強いのか!!」
「やれやれ……」
どうも興奮している。
まあ、神器も臨解にも目覚めて絶好調だしな……カジャクトとの修行で剣の腕も上がったし。
エミネムも、どこかソワソワしていた。
「サティと、ラスティス様と三人旅……あ、御者の方もいました。でもでも、うう……緊張します」
「エミネム。お前も大丈夫か?」
「あ、はい!! よ、よろしくお願いします!!」
「お、おう」
こっちはこっちで緊張しているのか、声がいつもよりデカい。
御者を務めるのは、ギルガの元部下エスナだ。今は村で畑を耕して一人暮らししてるはずだけど。
「エスナ。なんでお前が御者を?」
「そりゃギルガ副隊長……じゃなくて、ギルガ領主代理に頼まれたからですよ。ラスティス隊長……じゃなくて、領主様の護衛よろしくってね」
二十代後半くらいで、ホッジの弟子でもあったエスナ。剣の腕前もかなり高かったっけ。
「それに。王都の種籾屋で野菜の種も仕入れたいし、いろいろ買い物もしたいのよねー」
「そっちが目的だろ……まあいいが」
「エスナさん、御者はよろしくお願いします!!」
「よろしくお願いします、エスナさん」
「はいよ。お姉さんに任せなさい!!」
ドンと胸を叩くエスナ。うむ、なかなかデカいな。
サティたちはエスナとおしゃべりしている。その間に、俺はギルガの元へ。
「わりーな。村のことは任せるぜ」
「ああ。土産、忘れるな」
「おう」
拳を合わせ、馬車に乗り込み……王都に向かって走り出した。
さて、これから二週間ほど馬車の旅だ。目的は王都での摸擬戦だが……少しは気を抜いて、のんびり馬車の旅を楽しもうじゃないか。