作品タイトル不明
閑話⑥/退屈ドラゴン
「ヒマねー……」
クフの港町から遠く離れたマストレッド領地にて。
アルステッド領地に『飽きた』とカジャクトが言うので、賑わっていそうな町を転々として、いつの間にかマストレッド領地までやってきたカジャクト、そして滅龍四天王たち。
カジャクトはグースカ寝ているが、『赤竜』ウェルシュは読んでいた本を投げた。
「ね、グイバー、どっか行かない?」
「え~? 人間のメシうまいし、オレ動きたくない……」
「だから、もっとおいしいメシ探しに行くのよ」
「でも、カジャクトの姐さん寝てるじゃん」
「七日目よ。起きるまで十日は掛かるわ」
「で、遊びに行くの?」
「そ。姐さんのところにはラドンとジラントいるし、お土産持っていけば大丈夫だって」
「……むー」
グイバーは悩む。すると、ウェルシュが言う。
「さっき街で聞いたんだけど、ギルハドレット領地ってところで、お祭りやってるみたい。知ってる? 人間の祭りって、美味いメシいっぱい出るんだって」
「!!」
「どうどう? ちょっと行かない?」
「……し、仕方ないな。って……あれ」
「なに、どしたの?」
「……ギルハドレットって、なんか聞いたことあるような」
「そんなのどうでもいいでしょ。大事なのは、美味いメシ、お祭りよ」
ちなみに、魔界最強の竜族……頭の方はけっこう残念な者が多かった。
グイバーは「まあいいや」と言い、ウェルシュに聞く。
「そーいや、ラドンは?」
「ラドンは街で飲んで、ジラントはトショカン……だっけ。本いっぱいあるところ行ったわ」
「じゃあ、もしかしてチャンス?」
「ええ。ギルハドレットに向けて、行くわよ!!」
ウェルシュ、グイバーはハイタッチ。
背中から『翼』を出し、宿屋の窓から飛び出すのだった。
◇◇◇◇◇◇
数時間飛び、ギルハドレッドに到着した。
商人たちの会話で『なんとなく』位置を掴み、見えてきたのは大きな町。
大きいが、開拓途中なのか作りかけの家が多い。それでも、人の往来が多く、いろいろな食物の香りが上空からでも感じ取れた。
「おっほぉ~、いい匂いっ!!」
「だね……ごくり」
ウェルシュ、グイバーは顔を見合わせてヨダレを拭う。
そして、街から離れた森の着地し、翼を隠した。
「ヒトのフリしながら行くの、飽きてきたかも」
「まあまあ。もう少しの辛抱だって……オレらも魔力はほぼ回復したし、このフリももう少しで終わり。ルプスレクスの使い手探して、戦いになるまでの辛抱辛抱」
「わかってるわよ。ふふん、血が滾ってきたかも」
ウェルシュは、ギザギザの歯を見せつけ、口から軽く火を噴く。
だが今は、人間のルールの下で、街を楽しむことにした。
さっそく、ギルハドレットに入り食べ歩き開始。
「おっちゃん、その肉串百本!!」
「はいよっ!! 姉ちゃん、豪快だねぇ!!」
「ふふん、当然」
「……ウェルシュ。オレ、ケーキ食いたい」
「じゃ、喫茶店ね」
人間の街で食べ歩きをしまくったおかげで、二人は街の仕組みを理解していた。
大きな町には必ず飲食店がある。そして、飲食店にも種類がある。
ウェルシュは、肉串をガツガツ食べながら、眼に入った出店の食べ物をとにかく買いあさり、腹に入れる。
一方グイバーは、量より質なのか喫茶店や飲食店に興味を示し、甘いものを好んだ。
現在、二人は喫茶店でケーキを食べている。
「んん~おいしっ!! グイバー、もっと食べなさいよ」
「オレ、量より質なんだよ……うん、ケーキうまし」
「変な奴。あ、ケーキおかわりー!!」
二人はケーキを堪能……食休みということで、軽く会話をすることにした。
「あ~おいしいの最高。あ、お土産買わないとね」
「ん。カジャクト姐さん、酒が好きみたいだし、酒屋に行こうか」
「あいつらは? ドランとジラント」
「めんどくさいし別にいいだろ。買うならウェルシュに任せるよ」
「嫌、めんどくさい」
「じゃ、いっか」
と───何気ない河合をしている時だった。
『───……誘拐』
『領主───……ミルキィちゃん』
と、人間にしてはかなり強い男の気配を感じ、二人は会話を止めた。
ちらっと視線を送ると、細い男と、禿げた男が何やら会話している。
かなり距離があったし、周囲は喧騒に包まれていたが、ウェルシュとグイバーは聞いていた。
「聞いた?」
「ああ。誘拐するとか……しかも、ステージで歌う女と、商会の長を」
「なんか面白そうじゃん。ね、ずっと引きこもってメシのことしか考えてなかったし……ちょっとぐらい、面白い土産話があってもよくない?」
「……おいおい、まさか」
「あの男、けっこう強そうだしさ、騒ぎ起こすつもりっぽいし……それに便乗して、あたしらも遊ばない? 別に、街の一つで騒ぎ起こしたくらいで、カジャクト姐さんはキレないわよ」
「……まあいいか。というか、けっこう退屈してたし……遊ぶのもありだね」
「じゃ、決まり。ふふん、楽しみ~」
「それに、ちょい騒ぎ起こした方が、ルプスレクスの使い手にもオレらのこと伝わるかもね」
「お、そうかもね」
ウェルシュ、グイバーはニヤっとしながら、追加注文したケーキを食べるのだった。