軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話⑤/カルマの『神操』

ギルハドレットの街から離れた場所にあるほら穴に、二十人ほどの男女が集まっていた。

そして、どこから持ってきたのか、玉座のような椅子に座る若い男。

背中の中腹まで伸びた髪をスカーフで結び、胸元が大きく開いたシャツを着て、胸には黄金のチェーンが光っている。

黒いズボン、ブーツを履き、足を組む姿は様になっていた。

そして顔立ち……十人中十人が『美男子』と呼ぶだろう、非情に整った顔立ちの美青年だ。

そんな美青年は、指をパチンと鳴らす。

「予告状、届いたな?」

「へいボス。ギルハドレット領主の屋敷に届けました!!」

「反応は?」

「そりゃもう、驚いてましたぜ」

「よぉし!!」

美青年───……討伐レートSSに指定される危険人物こと『神操』のスレッドは、組んでいた足を解いて勢いよく立ち上がり、その場でくるっと回転、両手を広げた。

「くっくっく、ミルキィちゃん誘拐!! 裏オークションが賑わうぜ!!」

「あの~……ボス」

「あん?」

挙手をする部下その一。

スレッドは怪訝な表情で部下を指差した。この盗賊団『カルマ』のルールとして、発言する場合は手を上げ、スレッドが指名してからでない喋れないという、謎のルールがあった。

「ボス、今まで攫って売った連中はみんな、犯罪者とか裏でクソなことやってる連中ばかりだったのに、なんでミルキィちゃん攫うんスか? オレ、ミルキィちゃんがゲス野郎とは思えないんスけど」

「い~い質問だ。そう、ミルキィちゃんはゲスじゃねぇ!!」

「え……」

「ミルキィちゃんを攫うのは───……オレのためだ!!」

「え」

スレッドはクルクル回転し、部下その一に指をビシッと突きつける。

「ミルキィちゃんは───……オレら『カルマ』の新メンバーとして迎える!! そのために攫う!!」

「えぇぇ!?」

驚く部下その一。そして他の部下たちもドヨめく。

スレッドがパンパン手を叩くと、部下たちは静かになる。

「理由はいくつかある。一つ、ミルキィちゃんが可愛いから。二つ、あの歌声をナマでいつでも聞きたいから。三つ、ミルキィちゃんをオレの彼女にしたいから。四つ、オレら『カルマ』にもっと華が欲しいから」

「「「「「…………」」」」」

部下は全員沈黙した。

誰も言わないことだが……『カルマ』のボスであるスレッドは、神スキル持ちであり無類の強さを持つ。だが……少し、いやかなり抜けているところがあった。

◇◇◇◇◇◇

盗賊団『カルマ』。

専門は誘拐。だが、攫う人間は『悪』であるというポリシーがある。その『悪』を攫い、違法奴隷オークションなどで高額で売り捌き稼ぎを得ている。

違法オークションは、たとえ一国の王だろうと、条件を満たせば売り出せる。

だが……これまでスレッドたちが誘拐、売買してきた連中は全て、表では聖人君主のような扱いを受け、裏では悪鬼のごとき所業を行うクズばかりだった。

なので、『カルマ』の表の評判は最悪。

ボスのスレッドは魔獣と同じ扱いで、討伐レートが制定される。しかも等級はSS……王国騎士団が部隊を引き連れるか、七大剣聖が動くレベルである。

それでも、スレッドは笑っていた。

「まあいいじゃねぇか。拍が付くってモンよ」

現に……スレッドは、差し向けられた騎士や賞金稼ぎ、冒険者を返り討ちにした。それどころか、返り討ちにした連中を捕まえ、オークションで売り捌くほどだった。

強く、そして底抜けに明るい男。部下にも優しく、カリスマがあり、頼りになるボス。

それがスレッドという男だ。

そんな男が、今……私利私欲のために『誘拐』をする。

それがどういうことなのか。最も長い付き合いである部下その一……スキンヘッドに筋骨隆々の男、マッソンは察した。

「ボス、もしかして……ミルキィちゃんに惚れたんすか?」

「そそそそそ、そんなわけあるかい!! かか、可愛いから誘拐するんじゃい!!」

真っ赤になって両手と首をブンブン振るという、器用な真似をして否定した……もうガチだった。

ふと、マッソンは気になった。

「あれ、ボス……さっき『裏オークションが賑わう』って……ミルキィちゃんを出さないのに、なんで賑わうってわかるんですか?」

「あ、ああ。ミルキィちゃんの他に、本命がいるからな。聞いたことあんだろ? 『クレッセント商会』のボス、ミランダ・クレッセントを」

「ああ~……なるほど。そういやリストにありましたね」

クレッセント商会。

若き女主人ミランダ・クレッセントが興した商会。取り扱う商品は様々で、たった一代で大規模な商会として発展させた敏腕女主人。

「あの七大剣聖の一人、『神音』のアナスタシアが認めるほどの有名商会だ。シェリーの調査によると、この女主人……裏ではかなり悪どいことヤッてるそうだ。な、シェリー」

「うっす……」

「……なんだシェリー、むくれてんのか? なんかあったのか?」

「……ボスが『華が欲しい』とか言ったのがムカついただけっす」

「あ……いや、お前も立派な華だって!! でもな、華は一輪じゃ寂しいだろ? 彩りっていうか、その」

「……ふん」

諜報に特化したスキルを持つ『カルマ』の調査員シェリー、スレッドの言った言葉にむくれていた。

スレッドは何とかシェリーをなだめ、咳払いする。

「と、とにかく!! 狙うはクレッセント商会の女主人、そして……ミルキィちゃんだ!!」

「あーボス、ちょっといいすか。さっき入った情報っす」

「なんだシェリー?」

「あの~……ミルキィちゃんに、護衛付きました。まあ予告状出したし当然っすけど」

「護衛?」

「ええ。七大剣聖の一人、ラスティス・ギルハドレットっすね。こいつ、序列六位のくせに、王都に侵攻してきた魔族を返り討ちにしたみたいっすよ……どうするんすか?」

「決まってんだろ」

スレッドは凶悪にほほ笑み、指をパキパキ鳴らす。

「オレらの邪魔するんなら、潰すだけさ!!」

こうして、盗賊団『カルマ』が動き出した。