作品タイトル不明
脇役剣聖、やっと帰ってきた
「やっと帰ってきた~~~!!」
アルムート王国を出て二週間……かなり急いで、ギルハドレット領地に帰って来た。
相変わらず、村は何の変化もなさそうだ。門兵のルアドが大欠伸してる。
俺たちが近づくと、眠たそうな眼で言った。
「なんだ、ラスか……ふぁぁ、やっと帰って来たのか」
「お前な、門兵なんだからもっとやる気出せよ……給料下げるぞ」
「はっはっは。お前以外じゃまともにやってるっつーの」
「俺でもまともにやれっての。せっかく土産買ってきたけど、ギルガに渡すか」
「なぬ。おいおい、そりゃないぜ。今夜一杯付き合えよ、奢ってやるからさ」
「はいはい」
俺はルアドに酒瓶を渡し、村の中へ。
村に入って驚いた。
「あれ? なんか……見慣れない建物ありますね」
「それに、人も多いですね」
サティ、エミネムがキョロキョロしながら言う。
フルーレは特に関心がないのか、適当に言う。
「そんなことより、早く休みましょう。ずっと馬に乗ってたせいで、お尻が痛いわ」
「そんなことって……とりあえず、村を見ながら行くか」
村には、いくつか見慣れない店があった。
金物屋、鍛冶屋、武器防具屋、新しい住居、パン屋……って、おいおいあれ。
「あ、ラスティス様!!」
「あれ、きみは……」
パン屋にいたのは、エプロンを着た青年と、若い女性。
エミネムが驚いていた。
「あなたは、ヴォーズ騎士!?」
「はい!! 元騎士です、部隊長!!」
そうそう、『収納』系のスキルを持つヴォーズくんだ。坊主頭のヴォーズくん……なんかエプロン着て、頭にタオル巻いている。
「実は結婚して、嫁とパン屋を始めまして……以前言いましたよね?」
「そ、そういえば……ってか、門兵やるんじゃなかったのか?」
「はい。実は、村が平和でして……門兵はルアドさんだけでいいってことで、せっかくなので嫁のパン屋を手伝おうかと!!」
「そ、そうか……なんかキミ、すっごくまぶしいよ」
「ありがとうございます!! あ、こちらが嫁のメイリイです。彼女の焼くパンは絶品なので、ぜひともよろしくお願いします!!」
「領主様、メイリイと申します。これからよろしくお願いします」
「あ、ああ。どうも」
「わぁ~、すっごくいい匂いします!! ヴォーズさん、メイリイさん、あとで買いに来ますね!!」
サティは早くもパンの香りに誘惑されていた。
フルーレも「まあ、私も買うから」とパン屋をチラチラ見ている。
「……ヴォーズ騎士、いえ、ヴォーズさん。第二の人生、頑張ってくださいね」
「部隊長……」
「こんな言い方をしていいのかわかりませんけど……あなたは騎士に向いていないと思っていました。でも、鍛えた身体、剣技はきっと、役に立つと思います。奥さんのこと、しっかり守ってくださいね」
「……はい!! 部隊長、今までありがとうございました!!」
ヴォーズくんは涙を流し、エミネムに頭を下げた。
そして、エミネムは俺をチラッと見て、ポツリと言う。
「……結婚かあ」
お土産に、焼きたてパンをいっぱいもらい、俺たちは領主の家に向かうのだった。
◇◇◇◇◇◇
領主の館に到着。
近くの木を見ると……やっぱりいた。
「チョウワッ!! ようやく帰ってきたか、ラスティスよ!!」
「ドバト。すっかり傷はよくなったみたいだな」
「うむ!! 我もビンズイも完璧だ。お前には感謝しているぞ!!」
相変わらず声がデカい。
でも、元気そうでよかった。
「いろいろ話したいこともあるが、まずは身体を休めよ」
「いいのか? 聞きたいこと、あるんだろ?」
「顔を見ればわかる。ここにいるということはビャッコを倒した、そしてラクタパクシャ様は無事なのだろう? それがわかれば今はいい」
「……わかった。じゃあ、また後でな」
ドバトの気遣いに感謝。すると、ドバトはなぜか飛び去った……あいつ、空飛ぶの優先したかっただけかもしれない。
屋敷に入り、会議室に行く。
ドアを開けると……ああ、懐かしくもむさくるしい連中がいた。
「……帰ったか、ラスティス」
「やあ、おかえり」
「遅かったわね。ったく」
「おかえりなさい、みんな」
ギルガ、ホッジ、フローネ、ミレイユ。俺の元部下たちにして、今はギルハドレット領地の文官たち……ああ、こいつら見てると思う。
「はぁ……お前ら見ると、帰って来たって実感するぜ」
「なんだそれは。全く、仕事が山積みだぞ」
「そーよ。ほらラスティス、こっち来なさい。報告が山積み」
「はっはっは、大変だねラスティス」
「……やっぱあと一か月くらい王都にいればよかったわ」
ギルガに睨まれ、フローネに背を押され、ホッジが書類を積む。
「さぁみんな。疲れたでしょう? まずはお風呂に入ってらっしゃい。その後は冷たいデザートを用意するからね」
「やったあ!! フルーレさん、エミネムさん、行きましょう!!」
「う、うん。その、ありがとうございます」
「遠慮なくいただくわ。お風呂……嬉しいわね」
「おいミレイユ……なんか扱い違わないか?」
「女の子だからね。ふふ」
ミレイユは出て行った。
そして、ギルガが暑苦しい顔を近づけて言う。
「お前がいない間、アナスタシアの代理と、グレムギルツ公爵代理が開拓を進めていた。それと同時に、村にもいくつか新しい施設ができた。その報告書からだ」
「……なあ、マジで俺、帰ってきたばかりなんだが……聞いてないか? 俺、七大魔将倒したんだぞ?」
「それはそれ、これはこれ、でしょ」
「ははは、そういうことさ」
…………こいつら、マジで鬼だ。
◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇
風呂場にて。
サティたちは、ゆっくりと湯に浸かっていた。
サティは蕩けた顔で、口元まで湯に浸かる。
「ふぁぁ~……ごぼごぼ」
「ほら、寝ちゃ駄目よ」
「ふぁぁい……気持ちよくって」
「全く、湯舟にいると寝るなら、座ってなさい」
「はぁ~い」
サティは湯舟から上がり、岩を削って作った横長の椅子に座る。
胸を張り、大きく息を吸う……その様子をフルーレが見て、ポツリと言う。
「……大きいわね」
自分の胸元を見て、少しだけムッとする。
「あの、フルーレ様……質問をしてよろしいですか?」
エミネムが言う。
フルーレはエミネムの胸元を見る……サラシを巻いていたのか、サティよりも大きい。
サティは十六、エミネムは十七。二人とも自分より年下だが、立派だった。
「……何」
やや不機嫌な声になってしまった。フルーレはコホンと咳払い。
「なに? 答えられることならいいわよ」
「はい。その……『臨解』のことです。フルーレ様は、すでに『臨解』を経験していらっしゃるんですよね? その時は、どうなりました?」
「……ごめんなさい。よく覚えていないの。私の場合、おじいちゃんが同じ『神氷』のスキルを持っていたのよ。それで、限界まで私のスキルを刺激して……気付いた時には、疲労困憊で倒れていたわ」
「そう、なんですか……」
「ええ。『神スキル』の枷が外れると、スキルに宿る『神』が顕現するらしい……半信半疑だったけど、サティの『臨解』を見て確信したわ。それが真実だと」
「そういえば、雷が古い騎士みたいな形になりましたね……」
「ええ。私も、ああなったのかしら」
「……私も、『枷』を外すと、ああなりますか?」
「恐らくね。暴走することに変わりないわ」
「……」
「……怖い?」
「いえ。ラスティス様がいますから……」
「……あなた、ラスティスのこと好きなの?」
「ブッ!?」
エミネムは、思わず湯舟に顔面を突っ込んでしまった。
その反応だけで、フルーレは察した。
「ああ……ごめんなさい、何も知らないことにするわ」
「あ、あの……えっと」
「さ、上がりましょ。サティ、上がる……って、寝てるわね」
サティはいつの間にか、裸で横になり熟睡していた。