軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第7話 私の失恋と新しい恋

朝、寝ぼけながらも起きる。

学校行かなきゃ……と思いながら起き上がる。

「ひより〜ご飯ー」

「ふぁ〜い」

お母さんの言葉に返事をしながら洗面器に向かう。

朝ごはんを食べて制服に着替え身なりを整えて鞄を持って、学校へ。

私が失恋して1ヶ月が過ぎた。

振られてから少しずつだけど、立ち直れていると思う。

時の流れで失恋の傷は癒えるとよく言うけれど、きっと私の場合は文くんの存在が大きい。

「文くん、おはよー」

「七瀬さん、おはよ」

教室について早々、一人ぼっちの文くんに話しかける。

「昨日のお昼休みはありがとね。花ちゃんもすごく喜んでたよ」

「いや……まぁ……うん」

最近、文くんは女装をして私と花ちゃんと天馬の4人でお昼休みを過ごしている。

「そう言えば、花ちゃんって大分文くんに懐いてるよね」

「え、そうかな……」

「そうだよ。だっていつも『文香ちゃんっ文香ちゃんっ』て楽しそうに話かけてるもん。お昼の回数増やしてあげたら?」

「それは勘弁してください」

花ちゃんは一度心を開いたらその人にとことん懐く傾向がある。

多分、花ちゃんにとって文くんは私と同じくらいの存在になっているんじゃないかな。

なんて、ちょっと自惚れた基準だけど……

チャイムが鳴って、HRの開始に備えるため自分の席に座る。

いつもと同じの一日が始まった。

昼休み。

教室でご飯を食べ終わったあと、何か飲み物が欲しかったので教室を出た。

自動販売機に天馬の背中が映る。

……前まではきっと踏み出せなかったけど、今なら大丈夫。

「天馬〜」

「おおう……ひよりか」

背中をポンと叩きながら、天馬に声をかける。

うん。大丈夫……天馬の顔を見ても辛くない。

「私、ミルクティーね」

「奢りませんけど」

「えーあと10円足らないから買って欲しいのに〜」

「どうして自動販売機に……?」

「ここ来るまでは水を買おうと思ってたんだよ。ついさっきミルクティーの気分になったの」

「なんだよそれ」

けらけらと笑う天馬。

よしよし、前みたいに話せてる。仲が良い友達に少しずつだけど戻ってきた。

私のいつも通りが……戻ってきた。

「じゃあこうしよう。ミルクティーと引き換えに親友である私が花ちゃんとの映画デートアドバイスを……」

「ひより」

「ん? なに?」

「実は……俺、一花と付き合うことになったんだ」

「……え」

その一言は、私が頑張って積み上げてきたいつも通りをあっけなく、一瞬で崩した。

「あ、え、そっ…………か。あ、あはは。そ、そうなんだ……」

あれ、頭が真っ白だ。苦しい。上手く息が出来ない。

「え、と……わ、私、ちょっとトイレ! ついてこないでよ!」

天馬の返事を聞くこともなく、顔を見ることなく、一気に駆け出した。

とりあえず、一刻も早くこの場から去りたかった。

「はぁ……はぁっ」

走った末に辿り着いたのは体育館裏だった。ここにきたのはきっと、この前見た恋愛映画を思い出しただろう。

ついた瞬間、昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴る。

「……もういいや。サボちゃおう」

正直、教室に戻りたくないし。戻る気力もない。もし先生や生徒にバレたらその時はその時だ。

ぽつんと一人で座る。

……天馬。花ちゃんに告白したんだ。

知らなかった。いつの間に……

「…………っ」

じわりと涙が出てくる。

負けるな。七瀬ひよりっ……頑張れ、頑張れ。

乗り越えなくちゃ、前に進まなくちゃ、思い出にしなくちゃ。

それに、わかってた。わかってたでしょ。

振られた時、こうなることはわかってたし……覚悟もしてた。

だけど。

「……うっ、ぐっ」

苦しいものは苦しい。

「七瀬さん、大丈夫?」

「……え?」

顔を上げるとそこには息を切らした文くんがいた。

「え、な、なんで……?」

「だって七瀬さん……5分前になっても教室に戻って来ないから、何かあったのかなって」

文くんは一息つくように私の隣に座る。

「じゅ、授業は?」

「バックれた」

「え、あ……せ、先生に見つかったら、怒られちゃうよ?」

「その時は一緒に怒られるよ」

そう笑いながら私の好きなミルクティーを渡してくれる。

……ほんと、そういうところだ。

それから、文くんはなにも言うことはなく、ただ、黙って隣に居てくれた。たったそれだけなのに、涙が出てこなくなった。

本当に、不思議な人。

「……天馬と花ちゃん。付き合ったんだって」

「……そっか」

「吹っ切れたつもりだったけど、いざ二人が付き合ったら苦しいし、痛いし、辛いし……最悪だよ」

「……わかる。それで、素直に祝福できない自分がなんか醜い存在に思えてくるんだよ」

「そう……!! さすが10連敗以上の歴戦の猛者。わかってるね」

「うるせえ」

文くんは拗ねるようにそっぽを向いた。

きっと、文くんも私と同じように人を好きになって、報われなくて、苦しい思いをしてきたのだろう。

だからかな……君にはつい、言うつもりのなかった気持ちまで吐き出してしまう。

「ね。なんだか、今の状況この前見た映画と同じじゃない?」

「まぁ、シュチュレーションだけだけど」

「えーそんなことないよ? 文くんは間違いなく、私の救いになってるもん」

今はまだ……ちょっと時間がかかるだろうけど。もし、天馬との気持ちにちゃんと折り合いをつけて。新しい恋の準備ができたら、その時は……

「……もしかしたら、私の新しい恋はすぐ近くにあるのかもね」

「……ふぅん?」

よく分かっていないような顔をして首を傾げる。そんな文くんに笑いながらミルクティーを飲む。

体育館裏、二人きりで授業をサボる。

特に会話もなくて、聞こえるのは小鳥のさえずりだけ。

でもなぜか、気まずさとかな感じなくて。なんとなく居心地が良い。むしろすぎる時間を名残おしいとすら思ってしまう。

私の中で何かが芽生え始めている。

それが何かは今はわからないけど、きっとこれから育つのだろう。