軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第20話 月見星乃の襲来

「……よし、あと買うものは晩御飯くらいかな」

俺は今日の晩御飯と買い足さないといけなくなった生活雑貨を買うためにショッピングモールに来ていた。

適当な惣菜を買い物かごに入れる。

できる限り自炊はしているが、今日はお泊まり会や巨大ぬいぐるみを七瀬の家まで運びに行ったりと色々と疲れて気力が残っていない。

「さて……帰るか」

それにしても、まさか月見さんと同じマンションに住んでいたとは……

月見さんにはみんなには話すなと釘を刺されたけど、そんなに俺と同じマンションに住んでいるのを知られるのが嫌なのかな……

『もしひよりに知られたら……たまったもんじゃない』とか言っていたけど。

ん? あれは……

出口に向かって歩いているとアニメショップがやっている一番くじが目に入った。

あ、このアニメ。最近見たやつだ。どれどれ……A賞は水着フィギュアか。なかなかエ……出来の良いフィギュアじゃないか。

財布の中を確認し、くじを引きに行く。

結果はバッチとアクリルスタンド。

……可もなく不可もない結果だったが、どうやら両方ラスト1個だったみたいだ。

「あ、あのっ……すッすいませんッ」

帰ろうとした瞬間、ガシッと背後から肩を掴まれた。

「はぁ、そのバッチとアクリルスタンド……はぁ、ゆ、譲っていただけないでしょうか? はぁ、はぁ」

え、なにこの人……挙動不審だし、マスクとサングラスと帽子で顔隠してるし、あと息がめちゃくちゃ荒い。

「く、くじ代はもちろん払いますので……」

「えと、は、はい……」

こういう時は大人しく従った方が良い。

「……す、すいません。あ、あちらのベンチでいいですか? さっきまで走っていたので、い、息を整えたくて」

え、めっちゃ隅っこじゃん。人気なさそうなんですけど。

周りを伺う不審者と一緒にすみっこのベンチに座り、アクリルスタンドを渡し、お金を受け取る。

無事に取引き終了。さっさと帰ろうとした瞬間

ピコン。

俺と不審者のスマホから同時に通知音が鳴った。

スマホをみるとグループメッセージで七瀬からお礼のメッセージが。みんなが返信が来ると不審者のスマホからも通知音が鳴り続ける。

俺が返信するとまた不審者のスマホから通知音が鳴った。

……返信してないのは月見さんだけだ。

「………………」

「………………」

俺は月見さんの個人チャットを開き、適当なスタンプを連打する。

ピコン

ピコン

ピコン

「……えと、なにをしているの? 月見さん」

「……そんな名前の人、知らない」

「いや、この声、月見さんだよね!?」

「ちょ、ばかっ、声が大きい」

「あ、ご、ごめん……」

月見さんはため息をつきながら、グラサンとマスクを取り外す。

髪はいつものように二つ結びではなくストレートなのでなんか普段と違った印象を受ける。

「月見さんもアニメグッズとか集めるんだ……というか、アニメ好きなの?」

「……まぁ、一人で楽しむ趣味程度だけど」

「程度っていう割には俺に譲ってもらえるように声かけるくらい沼ってるじゃん」

「そ、それは……バッチとアクリルスタンドの絵が好みだったのと、これくらいなら隠しやすいし……」

隠す? ああ、七瀬たちが家に遊びに来たときか。

「……それに、推しキャラだったから」

推し!! いいね!! うんうん。推しがいるのはいいことだ。

……そういえば、このキャラ、どことなくキャラや雰囲気が七瀬さんに似ているような。

「今、私の推しがひよりに似てるって思ったでしょ」

「えと、月見さんっておっぱいが大きくて優しくて明るい子が好きなのぐっふ!」

「言葉にすんな!!」

怒った月見さんに脇腹を思い切り突かれてしまった。

「お、俺も総集編映画を見て、このアニメ面白いなと思ったんだよ」

「は? あんた総集編映画見たの?」

「う、うん。俺、サブスクは一通り契約してて動画配信で見れるから……まだ前編だけで後編は帰ってから見ようかなって」

「……………………」

「つ、月見さん?」

「おい」

「は、はい!」

「部屋番号。教えて」

「え、なんで?」

「いいから早く教えなさいよ」

ばん!と逃げられないように月見さんに壁ドンされる。

七瀬さんとは身長差があるというのに、完全に俺が狩られる側だった。

「……401号室です」

「はい。よく言えました。ということで、今晩あんたんち行くから」

「???」

い、意味がわからない。 なんで? どういうこと?

「今晩、総集編映画見るんでしょ。私もまだ見てないから一緒に見せてよ。新規カットや新OPとかあるらしいし……」

「い、いや……いやいや」

「それじゃ、私、晩御飯とお菓子買って帰るから、先に帰って準備しておいて」

「え、ちょっと!?」

月見さんは俺の言葉を待たずにさっさと行ってしまった。

……マジ?

状況についていけずに混乱しながら家に帰る。

ご飯とお風呂……一応、映画の準備を終えるとピンポーンとインターホンが鳴った。

ほ、本当に来た。

「どーも」

ドアを開けるとそこには大きな袋を持った月見さんの姿が。

眼鏡をかけており、服はダボダボな白パーカーで髪はストレートと、ラフな格好だった。

「……なに?」

「あ、いや……めがね」

「ああ、普段コンタクトだから」

そう言いながら玄関に入り、クロックスを脱ぎ始める月見さん。

「えと、本当にここで一緒に見る気なの?」

「そだよ」

「こ、こんな時間に男子の家に上がり込むのはいかがなものかと……」

「いーでしょ。知った仲なんだし」

月見さんはドン!! と持って来た荷物を机に置いて、座った。

「なに突っ立てんの? 隣座りなよ」

「は、はい……」

促されるまま、隣に座る。

いや、近い近い近い……シャンプーのいい香りもするし、これかなりヤバイぞ……な、何かに気を逸らさなければ……

あ、そ、そういえば……月見さんは何を持って来てくれたんだろう?

袋の中を確認すると、お菓子と大量のエナジードリンクが。

「……あの、これ、もしかしてオールですか?」

「総集編映画前後編でそのあと本編13話だからねー」

え、映画前後編だけじゃなくて、本編も見るの? オール確定じゃん。

「はい」

困惑している俺に月見さんはにこっと笑顔でプルタブを開けたエナジードリンクを手渡してくる。

「わ、ワァ……」

俺は泣きながらエナジードリンクを受け取るしかなかった。