軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第15話 私の最高の味方

「よ、よし。文くん。そろそろ行こっか」

「その言葉もう5回目なんだけど」

「……う」

4人でタルトを食べながら相談に乗ってもらった翌日。

私と文くんは校舎裏で立ち往生していた。

昨日の相談会でとりあえず天馬と花ちゃんに会って話をするということになって……

この先にある中庭のベンチでいつものように天馬と花ちゃんが二人でお弁当を食べている。

足取りとても重い。

以前、似たような状況になったことがある。だけど前とは何もかもが違う。

今は天馬と花ちゃんは付き合っている。そして私たち3人の関係も……

「……七瀬さん?」

「ちょっと待って。今、勇気を溜めてるから」

「お、おう……そっか」

だから、この前以上にたくさん勇気が必要なんだ。

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………………………勇気溜まった?」

「溜まった……けど、ほら、勇気って溜めたら練り上げないと……」

「よし、行こう」

「文くん!?」

いじいじしている私に業を煮やしたのか、文くんは私の手を掴んで歩き始めた。

そうだ。

前と変わらないものが1つだけあった。

それは君が私の手を引いてくれていること。その事実が、すごく嬉しくて……

私は文くんが握ってくれている手を握り返す。文くんに引っ張られながらも突き進むと二人の姿が目に入った。

天馬と花ちゃん。二人は幸せそうに笑っていて。

「……ッ」

そんな二人の姿を見て、思わず立ち止まってしまった。

ここから逃げ出したい。そう思ってしまってすらいた。

頑張って膨らませた勇気がしぼんでいく。身体中の熱が目へと集まってくる。頑張るって決めた癖に、すぐ立ち止まってしまう自分に嫌気がさす。

「……七瀬さん」

かけられた言葉に、びくりと過剰に反応してしまう。

……失望されただろうか。見限られてしまっただろうか。

呆然としながら見上げた彼の顔は相変わらず優しい表情で。

「俺にはもっとわがままになっていいって言ったでしょ」

文くんはそれ以上何も言わず、ただ笑った。

そういうところだ。

文くんのそういう優しさが好きで嫌い。

つい甘えてしまうから、気が緩んでしまうから。

私は文くんの手をぎゅっと力強く握り、再び歩き始める。

先ほどまでの重苦しい感覚はいつの間にか消えていた。

……あれ? さっきまで二人の姿をみるだけ辛かったのに、今はなんともない。

不思議に思って思わず隣の文くんを見る。

「ねぇ、文くんって……もしかして凄い人?」

「え、どうしたの急に」

不思議そうに首を傾げる文くんがどこか可笑しくて、思わず笑みが溢れる。私は軽くなった足取りで二人の元へ向かった。

「……二人とも久しぶり。こんなところで奇遇だね」

「ひより……」

「……ひよりちゃん?」

こちらに気が付いた天馬は驚き、花ちゃんは呆然とした表情で立ち上がる。

私は、文くんの手を放して一人、ひよりちゃんとの距離を詰めた。

「花ちゃんと天馬が良ければ……また、一緒にお昼ご飯を食べても……いい?」

「!! はいっ……はい!! 入江くんも一緒に!」

そう、天真爛漫な笑顔を見せてくれたと思ったのも束の間、花ちゃんの瞳からポロポロと涙が溢れ出した。

「は、花ちゃん!?」

「一花!?」

私たちは慌てて花ちゃんの元へ駆け寄った。天馬も慌てた様子で花ちゃんの体に手を回す。

「よかった……よかった……よかったよぉ」

「花ちゃん……」

しゃっくりを上げながら泣いている花ちゃんを優しく抱きしめる。泣き止むように背中を優しくさすりながら。

もしかしたら、私がもう来ないかもしれないと。不安だったのかもしれない。

親しい人に避けられてしまうのは、すごく辛い。そして友達が減ってしまうことも。

しばらくして落ち着いた頃、花ちゃんは目元を拭いながら顔をあげる。

「今度ね、クラスの友達が私の誕生日パーティをしてくれるんだけど、花ちゃんと天馬にも来て欲しいなーなんて……」

「行きます! 絶対に行きます! ね? 天馬くん?」

「ああ……そうだな」

今まで通りではいられない。だから、ちゃんと二人と向き合って新しい関係性を作らなっくちゃいけない。

それはすごく、辛くて苦しいものかもしれないけれど。

私は一人じゃない。

「そういえば、二人にまだ言ってないことがあるんだった」

ずっと、心の中にあったけど、言えなかった。言いたくなかった言葉。

でも、隣に文くんが居てくれるのなら……心から言える気がする。

「二人とも、おめでとう!」